始まりのその前
1555年春
スペインのTordesillasにあるサンタ・クララ修道院の一角の部屋で娘にも侍女にも見える中年の女性に看取られながら生涯を終えようとしている老婆がいた。
室内の家具は机と椅子とベッドのみ。
窓も埃を被った小窓しかない。
老婆と中年の女性は修道女のような装いから共に未亡人である事が窺える。
「Felipe el hermoso」
ベッドの老婆は掠れた声でこう発すると、今までの楽しかった事を思い出しているとも、これから楽しみが待ち受けているとも取れるような歓びの表情を浮かべて眠るように息を引き取った。
一体誰がこの老婆の死を初代スペイン女王フアナの最期だと思うだろうか、誰がこの老婆の中に大航海時代の荒波を乗り越えて成立したばかりの同君連合の若い王国に君臨した若き女王フアナの姿を見出しただろうか。
そして本当にその老婆が大航海時代の若い王国に君臨した初代スペイン女王フアナだとするならば、彼女はあの殺風景な小部屋で迎えた最期の瞬間に何を思ったのだろうか。
その答えに辿り着くには彼女が誕生した時から遡る必要がある。
どうも、
ところがどっこい
です。
とうとう始まりました!serie Juana!
今回は元ネタの映画のネタバレしか見ていない状態での書き出しです。またまた異例ですが死ぬシーンから始まり、回想する中で物語が進むという形で書いています。
シリーズ・フアナを是非とも宜しくお願い致します。