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第4話 どっちが勝つ?

 窓辺をつつくのは、こんな朝から働き者の一羽の烏。

 お行儀の良いノックに、室内から振り向いた彼は翳した手の魔力で窓を開く。

 すると招き入れた漆黒の一羽は、彼の枕元にブツを渡すと、彼の袖内から金貨を一枚、器用に嘴に咥えた。そして、早朝の白い空へとまた飛び去っていった。


 一羽の配達員により運ばれてきた世界新聞のインクの匂いは、相変わらずきな臭い。


「トランプメン、またも騎士団員を殺害。現場には一輪の青い花──」


 新聞を広げたアキトはその不穏な紙面を見下ろし、欠伸の後に薄い笑みを浮かべた。


(勝手に増えていく彼の罪、歪に膨らむ邪なペルソナ。世間はよほどあの不気味な道化師に、ほつれた穴に臭い物を埋めるような、都合の良い役割を求めているらしい。──いいよ、今は休業中だ。名前とその手作りの仮面くらい好きに使うといい…………と言ってももうジブン個人の処理できる範疇を超えてきている……。はぁ、どうにかして名前の使用料だけでも取れないものか? それとも彼のテーマソングでも考えておくべきだったか? なぁーんてね、アハは)


 近頃すっかりフリー素材と化した仮面模様違いのトランプメンより今は、タイキたちのいるise会シロツメ支部の事に彼は夢中だ。


 目を瞑っておこう。そう思い彼が興味の失せた新聞を閉じようとしたその時──隣でシルクのシーツが擦れる音がした。


 艶やかな黒髪をこぼし、裸身を晒したまま這い出してきたのは、クラン員のフミ・ソメイだ。


 チャームポイントの太眉の眉間に皺を寄せたソメイは、静かに唸り声の寝言を呟きながら、やがてその目を開ける。


 新聞の擦れる音と、横から射し込む朝日が眩しかったのか。ベッドの上で今目覚めた彼女。乱れた髪のまま、眠たそうなその目を呑気にこすっている。


 まだ頭の冴えない彼女はぼーっと天を見上げた後、突然パッと何かを思い出したように上体を素速く起こした。そして、いきなり隣の彼の膝上にあった新聞紙を奪った。


「おいおいどうしたんだい? そのようなことを。こらこらお尻まで向けて? 天啓でも得たのかい?」


 彼女は彼と言葉を交わすより先に、ベッドから降り近場にあった筆を執った。粗悪な紙質の新聞紙の上に、構わず塗りつぶす墨が躍る。


「アキトっ!」


「なるほど? フフ、そう来たか」


 【夜狩】【騒乱】──ソメイが今両手で広げて持った新聞に、力強く書かれた二つの言葉に、アキトは微笑った。


 さらに顎をさすっていたその手を前方へと流し、アキトは、墨で白肌を汚したそんな天真爛漫な彼女に、こう問うた。


「その天啓……どっちが勝つか──視えたかい?」


「うむ、もちろんだ! ん〜……ンーーっ……強い方だ!」


 強く念じるように思い出した末に、そう、ソメイは力強く言い放った。彼女の顎先に、長い彼の指先が届き触れる。


「……いいね♪──面白いっ」


 アキトは頷き笑うソメイの裸体を隠していた新聞を放り捨てた。真っ白なシーツの上に、引き戻された豊かな黒髪が乱れる。墨に鼻をよごした白肌の彼女が、こそばゆそうに笑った。

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