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血統ー蹄の記憶ー  作者: あいまいもこ
初めて怪物の異名を冠された馬

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18/31

17_再戦

弥生賞のあと、陣営の空気は重かった。


6連鎖中で絶好調と見られていた

**タケシバオー**が敗れたのである。


しかも、あの逃げ争い。

調教師の**三井末太郎**にとっては、到底納得のいく内容ではなかった。


結論は早かった。


鞍上の**中野渡清一**は降ろされる。


そして、新しく手綱を任されたのが

**森安弘昭**である。


若く、思い切りのよい騎手だった。


タケシバオーの次の舞台は、同じ**中山競馬場**のオープン戦。


弥生賞の敗戦から、どれほど立て直せているのか。

観客も、記者も、その一点を見ていた。


レースが始まる。


タケシバオーは、やはり前へ出た。


だが弥生賞とは違う。

無理に競らない。


森安は、馬のリズムを守った。


道中、軽快な脚取り。

直線に向くと、後続を寄せ付けない。


危なげのない競馬だった。


タケシバオー、快勝。


弥生賞の敗戦は、ほんの小さな綻びにすぎない。

そう思わせる勝ち方だった。


一方——


弥生賞を制した

**アサカオー**と、

西の実力馬

**マーチス**は、別の舞台で再び顔を合わせる。


舞台は

日本短波賞。


若駒たちがクラシックへ向かう、もうひとつの試金石である。


レースは接戦だった。


直線、アサカオーが先に抜け出す。

しかしマーチスも食い下がる。


二頭は並ぶ。


伸びる。


どちらも譲らない。


ゴール板の前——


わずかに、

ほんのわずかに前に出たのはアサカオーだった。


ハナ差。


一着アサカオー。

二着マーチス。


観客は息を呑んだ。


この世代には、強い馬がいる。

しかも一頭ではない。


東の怪物

タケシバオー。


底力のアサカオー。


そして鋭い末脚のマーチス。


三頭はまだ、本当の決着をつけていない。


春の大舞台——

その先で、再び刃を交えることになるのである。


ーーーー


春の中山は、まだ風が冷たい。


だが競馬場の空気は、すでに熱を帯びていた。


皐月賞へ向かう最後の関門——

スプリングステークス。


再び、あの三頭が顔を揃えた。


怪物と呼ばれた

タケシバオー。


弥生賞を制した

アサカオー。


そして、西の実力馬

マーチス。


弥生賞では、タケシバオーが敗れた。

だが人々はまだ思っていた。


あれは例外である、と。


あまりにも速い逃げ争い。

あれは事故のようなものだ。


本当の力は、こんなものではない——。


しかし競馬というものは、そう簡単なものではない。


マーチスは違っていた。


関西から東へ遠征した疲れ。

その影響が弥生賞には残っていたと言われる。


だが、このときには違った。


馬体が締まり、気配が鋭い。

本来の力が戻っていた。


レースが始まる。


タケシバオーは、いつものように前へ出た。

森安弘昭は、無理はしない。


あくまで馬のリズムで行かせる。


アサカオーは中団。

マーチスは後方で脚を溜めている。


三コーナー。


隊列が動く。


マーチスが外へ出た。


四コーナー。


直線。


先頭に立ったタケシバオーを、後ろから影が追う。


マーチスである。


大きく伸びる。


一完歩ごとに差が詰まる。


そして——


並ぶ。


さらに半馬身。


前に出た。


ゴール。


一着

マーチス。


二着

タケシバオー。


三着

アサカオー。


中山のスタンドがざわめいた。


タケシバオーは、また負けた。


弥生賞に続く、二敗目である。


三井末太郎の怪物は、絶対ではなかった。


人々の心に、疑問が生まれる。


本当に強いのは、誰なのか。


アサカオーか。

マーチスか。

それとも——

まだタケシバオーなのか。


三頭は、それぞれ違う強さを持っていた。


逃げて押し切るタケシバオー。

底力で競り勝つアサカオー。

末脚鋭いマーチス。


優劣は、まだ決まっていない。


春のクラシック。

皐月賞。


その舞台で、すべてが決まる。


中山の芝は、静かに彼らを待っていた。

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