レイヤー8
ベニーの腰、手の甲、そして脚の後部にある円形の装置が回転し始めた。
「はぁ……親父にバレたら絶対怒られるな。図書館を壊されるなんて。」
ベニーは肩をすくめて笑う。
「ほんと、お前は史上最悪の厄介な客だよ。今までにも迷惑な侵入者は山ほどいたけど……間違いなく、お前が一番だ。」
「人間、地球クラン。」
その存在は低く響く声で言った。
「貴様らは、この宇宙に存在する数多の星系の中でも、最も劣等な生命体だ。」
そいつがローブを脱ぐ。
現れたのは――トカゲのような頭部。
腕はタコの触手の集合体。
そして下半身は、蛇のように長くうねっていた。
全身は未知の機能を備えたアーマーで覆われている。
「うわ……すげぇな。」
ベニーは目を輝かせた。
「お前の装備、俺のより進んでるかもしれない。」
「なぜ私が来ると分かった?」
かすれた声が響く。
「……待て。貴様、私の言葉が分かるはずがないだろう?」
ベニーは一瞬、言葉を失った。
――なぜ理解できる?
「……おかしいな。なんで分かるんだ?」
だが、すぐに考えるのをやめる。
「第一!」
ベニーは自分の疑問を無視した。
「俺の友達が“狙われてる”って聞いた時点でな、敵が単独じゃない可能性は高い。」
「待て……貴様、私の言葉が理解できているのか? 地球の下等生物が?」
「第二!」
ベニーは相手の問いにも答えない。
「異世界から来たなら、情報が必要になる。
で、一番自然で目立たない場所はどこだと思う?」
ベニーは腕を広げる。
「図書館だ。しかもここは世界最大級。」
「誰でも入れる場所じゃない。知識を求め、価値のある者だけが入れる。」
「……なのに、お前は不法侵入した。」
円形の装置が、さらに高速回転を始める。
「仲間が、俺の大切な二人を傷つけやがった。」
「その礼、きっちりさせてもらう。」
ベニーは前に踏み出した。
次の瞬間――
装置から青い雷光が噴き出し、全身を包み込む。
ドォン!
重く、激しい一撃。
電撃を伴った拳が叩き込まれた。
「……それだけか?」
冷たい声。
煙がゆっくりと晴れる。
ベニーの目が見開かれた。
――当たっていない。
殴った感触は、まるで硬い空気。
敵は元の場所から、一歩も動いていなかった。
「……は?」
「俺、空気殴ったのか? なんだよあの硬さ……」
「地球クランは、やはり愚かだ。」
その存在は指を鳴らした。
次の瞬間――
ベニーの体が吹き飛ばされ、立っていた本棚に激突する。
「くそっ……!」
「貴様は、このクランの中では優秀な部類だろう。」
「その兵器を作るのも容易ではなかったはずだ。」
怪物は嗤った。
「だが無駄だ。
私の“透明障壁”には通じない。」
――透明な、バリア……?
だから攻撃が当たらなかったのか。
「本物の技術というものを、見せてやろう。」
そいつは腕時計のボタンを押した。
数秒後――
立方体型のドローンが、次々と空間に現れる。
「……ますます面白くなってきたな。」
ベニーは口角を上げ、目を輝かせる。
「まだ俺が知らない技術だ。」
「最高だよ。」
ベニーは構えた。
「持ってる技術、全部出せ。」
「どっちの発明が最強か――ここで決めようぜ。」
彼は、不敵に笑った。




