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究極のカオスリング   作者: I.A. Janovit
7/25

レイヤー6

百平方メートルはあろうかという広い部屋。その中を占めているのは、山のように積み上げられた最先端の機器の数々。

こんな部屋のコンセプトを思いつくのは――ベニーしかいない。

彼は作業机のそばに置かれた椅子に気楽に座り、

『暴君の世界 ――ある国家の実話を基に』

という本を読んでいた。

「はあ……土砂災害が起きてるってのに、木を植えて涼しくしようとか思わないで、燃料用の植物を育てるとか……マジでどうかしてるな。」

ベニーはそう呟き、ページをめくった。

チン!

俺が作った扉が、ベニーの机からそう離れていない場所に現れた。

だが、天才的頭脳を持ち、ファンタジーやSF小説をこよなく愛するその少年は、背後で起きた異変など一切気にも留めない。

扉が開く。

俺とアルヴィナは、そのまま床に倒れ込んだ。

服はボロボロで、特にアルヴィナは膝や肩のあたりが裂け、痛々しい状態だった。

「ベン……助けてくれ……」

息を切らしながらそう言ったが、呼びかけに返事はない。

「やっべぇ! マジ最高だろここ! 評議会の暴君どもの会議室が爆発して、しかも幹部ごと吹き飛ぶとか最高すぎる!」

ベニーは大はしゃぎで飛び跳ね、その勢いで――俺の背中を踏んだ。

「うぐっ――!」

「って、なんだこれ!? なんなんだよクソッ!」

驚いたベニーは再び跳び退いた。

「バカかお前! 親友二人が助けを求めてんのに、無視してんじゃねぇ!」

俺は痛みに顔を歪めながら叫んだ。

さっきまで気を失いかけていたが、どうにか踏みとどまった。

「なんでお前がここにいるんだよ、カエリン!?」

ベニーは目を見開いた。くつろぎの時間を邪魔されたのが明らかだ。

「どうせお前の“どこでもドア”だろ? 俺の邪魔するために使いやがって。」

鋭い視線が突き刺さる。

俺はゆっくり立ち上がり、ベニーの肩を叩いた。

「バーカ!」

――そして思い切り平手打ちした。

友情のビンタだ。

「ほら見ろ、アルヴィナ気絶してんだぞ!」

「えっ、アルヴィナ!?」

ベニーの表情が一瞬で変わる。

読んでいた本を机に放り投げ、すぐに駆け寄った。

「だから言っただろ、アルヴィナは気絶してるって。」

俺は、さっきまでベニーが座っていた椅子に腰を下ろした。

ベニーは素早くアルヴィナを抱え上げ、部屋の奥にある自分のベッドへ寝かせた。

「で、何があったんだよカエリン。

まさかアルヴィナをバイクの後ろに乗せて飛ばして、事故ったとかじゃないよな? もしそうなら覚悟しろよ。」

ベニーは俺を指差す。

「違ぇわ、アホ。」

即座に言い返した。

「信じるかどうかは分からないけど……言葉にすると、ほんの一言だ。」

「俺は、誰かに狙われてる。」

「は? どういうことだ?」

ベニーは水のボトルを俺に投げてよこした。

まるで、俺が喉が渇いているのを分かっていたかのように。

「お前さ、闇金でも借りて返せなくなったんじゃねぇの? で、取り立てに追われてるとか。

だから言っただろ、金が必要なら俺に言えって。千万円でも貸すって。」

俺は水を飲み干してから、睨みつける。

「そのうち本気で殴るぞ。」

「で、何なんだよ。」

「だから黙って聞けっての!」

俺はボトルを軽く放り投げ、くるりと回して受け取った。

「お前、覚えてるか?

“この世界には、ほんのわずかな確率で、別の世界から来た何かが存在するかもしれない”っていう、あの理論。」

「……ああ。」

「それが、正しいかもしれない。」

俺は静かに言った。

「俺を狙ってる奴は……この世界の存在じゃない。

最初は信じなかった。でも、あいつの力を見て確信した。人間の領域を超えてる。」

ベニーは姿勢を正した。

「詳しく説明しろ。」

「分かってるのはこれだけだ。」

「俺を狙ってるのは、“月の姫”を名乗るルン。

武器は、月のような形をした二枚刃の円盤。髪は白い。」

俺は一息つく。

「それに、俺とアルヴィナが彼女の言葉を理解できた理由も分かった気がする。

最初にカフェで会ったとき、店員はあいつの言葉を全く理解できてなかった。

それなのに、あいつは“地球のクラン”とか、“人間”とか、そういう言葉を口にしたんだ。」

広い部屋に、しばし沈黙が落ちた。

ベニーは椅子をくるくると回す。

「……話は一つの答えに繋がりそうだな。」

「だが、その前に確認が必要だ。」

「確認?」

「まずは、うちの家の図書室に行こう。」

ベニーの表情は、これまでになく真剣だった。

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