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究極のカオスリング   作者: I.A. Janovit
6/23

レイヤー5

「全員出ろ!早く外へ!」

選手やスタッフたちは一斉に逃げ出した。つまずく者、泣き叫ぶ者、誰一人として振り返ろうとはしない。

「幽霊だ!どうしてここが幽霊に取り憑かれてるんだ!?」

走りながら、ある選手が叫んだ。

「よし……全員いなくなったな。」

俺は安堵の息を吐いた。

一方で、アルヴィナは肩で息をしていた。額には汗が滲み、呼吸は荒い。それでも彼女の瞳は、鋭くルンを捉え続けている。

衝突音が食堂中に響き渡る。床が震え、照明が激しく揺れ、あちこちから悲鳴が上がった。

「強いな……」アルヴィナが呟く。

「だが、倒せないわけじゃない。」

ルンは不敵に笑った。

「もう弱ってきてるな。」

ルンは円盤を高速回転させる。アルヴィナは横に跳び、床を転がった。月刃が肩を掠める寸前だった。円盤が突き刺さった床は、真っ二つに裂ける。

アルヴィナは諦めない。守る時と攻める時を知っている。相手は並の存在ではない。身体能力は、アルヴィナの倍以上だった。

「くそ……これは相当きつい!」

アルヴィナは脚力を頼りに、再び速攻を仕掛ける。

「もう分かってるだろ?俺たちの力の差を。」

ルンは月の刃を弄ぶ。その攻撃は速く、致命的だった。

俺の脳裏には、先ほど読んだ“月の刃”に刻まれた言葉がよぎる――虚無はすべてを呑み込む。

「カエリン!」

アルヴィナが叫ぶ。「早く!」

俺は歯を食いしばった。震える手で、頭の中にイメージを描く――扉。

集中しろ……散るな……

――だが、ヒュンッ!

ルンの円盤の一つが俺に向かって飛んできた。

「カエリン、避けて!」

幸いにも、それは硬質の防壁に弾かれたが、頭が強く揺さぶられ、耳鳴りがした。視界が歪み、集中が崩れかける。

「くそ……」

俺はよろめいた。「今じゃない……」

円盤はまるで俺の思考を読んでいるかのように、何度弾かれても回転し続け、執拗に俺を狙ってくる。

「本当に、厄介だ……!」

汗が噴き出す。

ルンは前に跳び出し、連続攻撃でアルヴィナを追い詰める。

一撃、二撃、三撃――

アルヴィナは防ぎ、下がり、耐えるしかなかった。足取りは次第に重くなり、壁際へと追い込まれる。

「終わりだ!」

ルンが叫んだ。

その瞬間――

ルンの動きが止まった。目が見開かれる。

アルヴィナは、息を切らしながらも不敵に笑った。

「――捕まえた。」

アルヴィナは低く滑り込み、残された力でルンの足を薙ぎ払った。

ルンは床に叩きつけられ、激しい音を立てる。

初めて、ルンは完全に沈黙した。

――そして。

漆黒のオーラが、彼の身体から噴き出した。

「もう、いい。」

ルンはゆっくりと立ち上がる。銀色の髪が荒れ狂うように舞い、瞳が眩く光る。

二つの円盤が彼の周囲を絶え間なく回転し、机、椅子、壁を次々と粉砕した。

「地球のクランの人間に、これ以上侮辱されてたまるか!」

攻撃は狂暴さを増し、無差別に放たれる。

アルヴィナは残った力で跳び退くが、一閃が腕を掠めかけた。

「アルヴィナ!」

俺は目を閉じ、無理やり力を引き出す。

扉を一つ……ただ一つ。

頭の内側を握り潰されるような痛み。鼻から温かい血が流れ落ちる。

同時に、暴走する円盤の軌道を抑えなければならない。

「……頼む。」

「今だ……!」

パァンッ!

揺らめきながら、光の扉が空中に現れた。不安定に震えている。

「入れ!」

俺は叫んだ。

アルヴィナは一切迷わず駆け出し、背後を裂く寸前の円盤をかわして跳び込んだ。

俺もすぐ後に続く。

「カエリン――!」

怒りに満ちたルンの叫びが響く。

扉は閉じた。

円盤は虚空を切り裂き、食堂の建物は一部崩壊する。

粉塵が立ち込める中、ルンは瓦礫の中心に立ち尽くし、荒い息を吐きながら、俺たちが消えた場所を睨みつけていた。

「……まだ終わっていない。」

冷たい声で、そう呟いた。


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