自然 27
「――ハハハ! 終わりだ! 全てが闇に沈むがいいッ!!」
ルドの狂った哄笑が、割れた大地から噴き出す黒い濁流と共に響き渡る。それは物理的な闇ではなく、クランそのものの命を腐らせる「絶望」の質量だった。
セレスティア様が残した緑の結界が、乾いた音を立てて砕け散る。
「ソラ、アルヴィナ……あの子(闇)を止められるのは、貴方たちだけ……」
彼女の姿は、光の粒子となって消え去った。後に残されたのは、震えるアルヴィナと、瞳に決意を宿したソラだけだった。
「やり方は俺が教える」ソラが、アルヴィナの困惑を遮るようにその顔を包み込んだ。「いいか、戦おうとするな。ただ、心を空にして、このクランの鼓動を感じろ。俺がお前を連れていく」
ソラの瞳が翡翠色に燃え上がると同時に、二人の魂はクラン・アラムの果てまで駆け巡った。草原の風、森の息吹、川のせせらぎ。それらがアルヴィナの血管を流れる「血」と共鳴を始める。
「おい、俺の出番はねえのかよ!?」
背後でベニーがルラを庇いながら叫ぶ。
「技術も装甲もないお前に何ができる! 余計なことは言うなッ!」
私はイマジネーションで創り出した剣を振るい、無限に増殖する寄生根を切り刻みながら叫び返した。
「――同調、開始!」
ソラの胸から『自然の指輪』が実体化し、二人の間で激しく脈動する。
「カエリン、俺に任せろ!」ベニーが不敵に笑った。「あいつらのエネルギーを増幅させる『伝導体』を作れ!」
私は頷き、全神経を集中させた。
地面から結晶化したイマジネーションの塔が突き立ち、ソラとアルヴィナの光を吸い上げる。
「完璧だ! 行けえッ!!」
塔の頂点から放たれた白銀と翡翠の光柱が、天を衝き、闇を切り裂いた。
その光の中で、ソラの肉体が透き通り、一つの純粋なエネルギー体へと姿を変えていく。
「ソラ……!?」
「怖がるな、アルヴィナ! 俺がお前の『力』になる。……受け入れろ!」
二つの魂が一つに溶け合う。
眩い光が収束したとき、そこには一人の少女が立っていた。
短い髪にはエメラルドのハイライトが走り、その瞳にはソラの不敵さとアルヴィナの意志が同居している。彼女の額には、古の守護者の紋章が刻まれていた。
彼女の手には、生ける木と光の弦で作られた神々しい大弓。
そして、その指には――クラン・アラムの真なる王権、『自然の指輪』が輝いていた。
『……我らは一つ』
重なり合う二つの声が、戦場を震わせる。
『新たなる自然の守護者、ここに。』
「あり得ん……人間ごときが指輪と完全に同化したというのかッ!?」
ルドが後退りし、背後の闇が脅威を感じて咆哮する。
アルヴィナ(ソラ)は静かに弓を引き絞った。光の矢が番えられ、周囲の大気がその一撃を祝福するように渦を巻く。
『カエリン、ルン、ベニー。ルラを連れて下がって。……ここからは、浄化の時間よ。』
彼女が狙いを定めたのは、ルド。そしてその背後に控える太古の絶望。
『ルド。貴様の腐った時間は、ここで終わりだ。』
ステータス:究極進化




