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究極のカオスリング   作者: I.A. Janovit
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自然 22

石畳の道は、かつて王国の栄華を象徴する「光輝石」で彩られていた。しかし今、そこを歩く私たちの足音を吸い込むのは、不気味なまでの静寂だった。

並び立つ家々、威厳ある公会堂。すべてはそこにある。だが、生命の脈動だけが欠落していた。

「……何てこと。まるで時間が凍りついたみたい」

ルンが、蔦に覆われた窓を指先でなぞる。そこには略奪の痕跡すらない。ただ、人々が「目に見えぬ死」から逃れるために、着の身着のままで去った後の虚無だけが残されていた。

「ねえ、なんで私だけずっと戦わせてもらえないの? 私だってこの月輪の円盤チャクラムを試したいのに」

不意にルンが不満を漏らした。張り詰めた空気を和らげるための、彼女なりの気遣いかもしれない。

「諦めろ、ルン。お前は今、この『最優先護衛対象』に好かれすぎてる」

私は、隣でルンの手を握りしめ、独特なステップで歩くルラを見た。短い髪を揺らし、無邪気な笑顔を向ける妹。

「……っ。反則よ、この可愛さは。……分かったわよ、負けだわ」

ルンは口元を押さえ、悶絶しながらもルラの頭を優しく撫でた。

「……王国が捨てられたんじゃない。住人たちが、あの病を恐れてここを『捨てざるを得なかった』んだ」

周囲を観察していたソラが低く呟いた。

「ソラ……いや、『自然の指輪』」

「……ソラでいい。ナリはこれでも、中身はあんたらと旅したあの男だ。感情もあれば、腹も減る。今まで通りに呼べ」

彼は両手を頭の後ろで組み、いつもの軽薄な足取りで歩く。

「分かったよ、ソラ。……一つ聞いてもいいか? お前はかつての主、セレスティア姫の最後を知っているのか? それに、お前は僕の指輪のように、誰かと『同化』して力を貸すこともできるのか?」

ソラは足を止め、私の指輪を興味深そうに眺めた。

「……同化か。理論上は可能だろうな。だが、誰でもいいわけじゃない。純血のクランの者か、あるいは――お前のように、馬鹿げたほど真っ直ぐな意志を持つ者でなけりゃ、俺という『自然の質量』には耐えられねえだろうよ」

私たちはさらに歩を進め、王国の中心部にある広場に辿り着いた。

巨大な女神像から流れ落ちる水は腐敗して濁り、かつての賑わいは破れたテントと空の陳列棚に取って代わられていた。

「……ここは、セレスティア様が大好きだった場所だ。よく変装して、民に混じって笑っていたっけな」

ソラの視線が、遠い過去を追うように細められた。

「私たちは、すべてを取り戻すわ。必ず」

ルンが彼の肩に手を置く。その言葉は、絶望的な廃都の中で唯一の灯火のように響いた。

「……へっ、楽観的なこった」

「そうじゃなきゃ、やってられないわよ」

私たちは広場の隅で、束の間の休息を取った。

ルンのバッグから取り出された硬いパンとチーズ。ソラは石段に座り、チーズをかじりながら分析を始める。「ふむ、これは東の山の二歳牛だな。伝統的な塩漬けの技法が――」

「いいから食べなさいよ! 酪農レポートはいらないわ!」

ルンのツッコミに、ルラがケラケラと笑う。

その安らぎも、城門に近づくにつれて霧散していった。

石の隙間から異常なほど成長した毒々しい花々。壁を侵食する発光キノコ。自然が「再生」しようとしているのではない。病によって「狂い」始めているのだ。

そして、半開きの王宮の門から、一人の老騎士が姿を現した。

錆びついた鎧を軋ませ、折れた槍を杖に立ち尽くす。

「逃げ……ろ……。女王が……耐えておられるが……奥には……禍が……」

ソラが躊躇なく歩み寄った。その瞳には、かつての守護者としての威厳が宿る。

老騎士はソラの胸元――そこに秘められた神聖な気配を感じ取り、驚愕に目を見開いた。

「おお……その温もり……。あなたは……」

「道を開けろ。私たちが終わらせに来た」

老騎士の震える手で門が完全に開かれる。

「女王は……謁見の間に……。だが、決して近づきすぎるな……」

彼はそう言い残し、力尽きたように倒れ込んだ。ソラは彼を介抱し、静かに頷いた。「死んではいない。ただ、絶望に疲れ果てただけだ」

城内は暗く、天井に群生するクリスタルの微かな輝きだけが足元を照らしていた。

色褪せた赤絨毯を進んだその先に、根の玉座が鎮座していた。

座っていたのは、セレスティアではなかった。

若く、しかし重責に押し潰されそうなほどに蒼白な少女。

「何者……ですか。この死の城に、まだ生き残りがいたと……?」

ソラが玉座の前で、ゆっくりと跪いた。

「……女王陛下。ただいま戻りました」

少女――現女王は、ソラの存在を信じられぬように見つめ、その震える唇を動かした。

「……その輝き。ああ、セレスティア姉様が仰っていた通り……魂を持って、再び現れるという予言は、真実だったのですね」

彼女の目から、一筋の涙がこぼれ落ちた。

「ですが、遅すぎました。ルドの病は、すでに城の心臓部にまで達し……。私の親愛なる協力者たちも、その毒に侵されて……」

私は一歩前に出た。「女王、ベニーとアルヴィナという名の二人はここにいますか!?」

女王は苦しげに目を伏せ、玉座の後ろに続く漆黒の扉を指差した。

「……彼らは、ルドが残した『最悪の番人』として、地下の聖域に幽閉されています。……どうか、助けてあげて。彼らはまだ、自分自身と戦っているから……」

私たちは互いに頷き合った。

かつての親友が、今は敵として立ちはだかる。

だが、今の私たちには「希望」という名の指輪と、決して折れない意志がある。

「行こう、みんな」

私は盾を構えた。

親友を救い、この枯れ果てた王国に緑を取り戻すための、真の最終決戦が始まろうとしていた。

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