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究極のカオスリング   作者: I.A. Janovit
38/52

自然14

大地は、未だ鳴動を止めていなかった。

最後の一匹の巨蠍が、頭部を断ち切られて沈黙したというのに。地響きは収まるどころか、より激しく、より深く――まるで地の底に潜む巨大な心臓が、怒りに狂って脈動しているかのようだった。 tebing-tebing mulai rontok, menjatuhkan kerikil ke dalam jurang yang seolah tak berdasar.

「はぁ……はぁ……」

膝が震え、肺が焼けるように熱い。頭部の『刻印』が、無理な酷使を咎めるように鈍く疼き続けていた。

「カエリン」

ソラが軽い調子で呼びかけてきたが, その瞳はかつてないほど鋭く前方を射抜いていた。

「……お前も感じてるだろ? この嫌な予感」

「ああ……」私は掠れた声で答えた。「まだ、終わってない」

先ほど仕留めたはずの巨蠍たちの死骸が、突如として激しく痙攣し始めた。地面に広がっていたどす黒い体液が、生き物のようにうねり、地割れの中へと吸い込まれていく。

「血が……逆流しているのか?」

「いや、違うな」ソラが眉をひそめた。「あれは――『供物』だ。呼ばれてやがる」

問い返す間もなく、大地が爆ぜた。

単なる亀裂ではない。この狭い峡谷を真っ二つに引き裂くような大穴が、私たちの足元に口を開けたのだ。そこから噴き出した熱風には、焦げた鉄の臭いと、猛毒、そして……この世の理を超えた「原初の呪い」の気配が混じっていた。

ギチギチ……ギチギチギチ……。

無数の摩擦音が重なり合い、鼓膜を震わせる。

反射的に一歩、後退した。私の手は震え、本能的な生存本能に突き動かされるまま、かつてないほど無骨で分厚い鉄の盾を構築した。

「……嫌な予感しかしないぞ」

「同感だ。俺の直感も、今すぐ逃げろと叫んでる」

ソラがレーザーブレードを旋回させ、光の軌跡を描いた。

深淵から、巨大な「脚」が這い出してきた。一歩踏み出すごとに大地が悲鳴を上げる。次いで現れたのは、無数の刺と亀裂に覆われた巨大なハサミ。それは自らの巨体を地上へ引きずり上げるため、執拗に崖の縁を掴み取った。

息を呑む。

現れたその姿は、これまでの巨蠍たちが赤子に見えるほどの巨躯――崖の高さに匹敵するほどの絶望だった。甲殻は漆黒。だがそれは単なる色ではない。表面には古の呪印が刻まれ、その溝を禍々しいエネルギーが血管のように脈動していた。

しかし、私の心臓を凍りつかせたのは、その怪物としての姿ではなかった。

蠍の胴体の前面から、それは「生えて」いた。

跨っているのではない。融合しているのだ。

腰から上が人間――石像のように白い肌、長く乱れた髪、そして表情を失った無機質な顔。虚ろな眼窩の奥では、鈍い紅色の光が渦巻いている。

その、人の形をした口が開いた。

瞬間、世界から音が消え失せた。

「……永き時が……流れた……」

「……我が子らを……蹂躙する……不届きな人間が現れるまで……」

重なり合う複数の声。人の言葉と怪物の咆哮が混ざり合い、深淵から直接響いてくるような不気味な声が峡谷に満ちた。

「……子……だと?」

戦慄が背筋を走る。

「ちっ……なるほどな。あいつが『マザー』ってわけか」

ソラが重々しく吐き捨てた。

怪物の背後で、三本の尾が鎌首をもたげる。それぞれの先端には、どす黒い呪毒が滴る毒針。その一滴が岩に触れた瞬間、岩石は音を立てて溶解した。

「おい、この臭い……ただの毒じゃねえぞ」

「ああ、わかってる」

「……呪いだ」ソラが声を低めた。

怪物の視線が私たちを捉えた。それは肉体ではなく、私の指の「指輪」、そして頭部の「刻印」を、魂の階層から見透かしているようだった。

「お前は……」怪物が、ゆっくりと私を指差す。

「……世界樹の刻印を継ぎし者……」

ドクン、と心臓が跳ねる。

「へぇ、カエリン。お前、魔物界じゃ有名人らしいな」

ソラの皮肉も、今はどこか遠く感じられた。

怪物は巨大なハサミを持ち上げた。それだけで大気が凝固し、重力が増したかのような圧力が肩にのしかかる。膝が折れそうになるのを、気力だけで耐えた。

「そして……光の刃を振るう者よ……」

怪物の瞳がソラを射抜く。「……お前からは、破滅の臭いがする……」

「ハッ、ありがたいね。化け物にそこまで分析されるなんて光栄だぜ」

ソラは不敵に笑い、ブレードの出力を最大まで引き上げた。青白い光が闇を切り裂く。

これは、ただの魔物ではない。

この領域を支配し、悠久の時を生き、知性と憎悪を蓄え続けた「エリア・ボス」。

峡谷の守護者。

私は盾を握り直し、一歩も引かぬ覚悟で前を見据えた。

「ソラ……どうやら、逃げ道はなさそうだ」

「当たり前だ」ソラが静かに言った。

「だが、誰が逃げるなんて言った?」

怪物がその巨体を完全に地表へと晒し、巨大な影が私たちを飲み込む。

「来い……」

「教えてやろう……」

「……なぜこの地が、生者の禁忌と呼ばれているかを……」

頭の『刻印』が、これまでにないほど激しく熱を帯びた。

私は震える足で大地を踏みしめ、絶望の象徴たるその瞳を真っ向から見返した。

「……いいだろう」

私は喉の奥で、獣のような笑みを漏らした。

「ここが冥府への門だって言うんなら――」

手に宿るイマジネーションの力を、限界まで練り上げる。

「――力ずくで、こじ開けてやるッ!!」

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