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究極のカオスリング   作者: I.A. Janovit
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自然12

読者の皆様へお知らせです!金曜・土曜以外の平日の小説更新ペースは4~5話となっております。

これからも私の物語が素晴らしいエンターテイメントを提供し続けられることを願っています。作品へのご支援、ご提案、ご批判など、どうぞお寄せください。ありがとうございます。

「本気か?」

ソラは両手を後頭部で組み、心底呆れたような声を上げた。

「貴様ら、まともな移動手段ってものを持っていないのか? 馬車とか、転移門ポータルとか……最低でも、背中に乗れる巨鳥ギガ・バードくらいは用意しておくもんだろう?」

「……足があるでしょ」

ルンが氷のように冷ややかな視線を向けた。

「足ってのは『緊急用』の機能なんだよ」ソラが即座に言い返す。「メイン機能じゃねえ」

私は思わず吹き出しそうになった。隣のルラにいたっては、両手で口を抑えながら隠す気もなくケラケラと笑っている。

ソラがこちらを睨んだ。「笑うなよ。どうせお前らの世界には『空飛ぶ雲』とか、そういうデタラメな道具があるんだろ?」

「……どんな世界にも空飛ぶ雲があると思わないでくれ」

私は溜息をつきながら答えた。

「嘘をつけ」ソラが私を指差す。「お前、重要な事実を隠すタイプだろ」

「もし空飛ぶ雲があるなら」私は言い返した。「こんなに歩く前に出してるよ」

「……じゃあ、本当にないのか?」

ソラがルンに助けを求めるように視線を送ると、彼女は首を横に振った。

「空飛ぶ雲どころか、あなたが言ったものは一つもないわ。ポータルだって、ごく一部の特権階級しか使えない代物よ」

「――特権階級? ポータルを使えるのか?」

ソラが足を止め、顎に手を当ててルンを凝視した。

ルンは肯定するように頷いた。……私も今初めて知ったのだが、ルンはどこかの貴族の令嬢だったらしい。

「わぁ、ルンお姉ちゃんってお姫様なの?」

ルラがしがみつくと、ルンは困ったように、しかし愛おしそうにルラを抱きしめた。

その様子を見て、ソラは天を仰いだ。「……ガッカリだぜ」

私たちは二つの切り立った断崖に挟まれた狭い道を進んでいった。眼下には霧に包まれた深い谷底が広がり、吹き付ける風が湿った土と岩の匂いを運んでくる。

「こういう場所にはな」ソラが不吉な予言を口にする。「たいてい『巨獣』がいるもんだ」

「縁起でもないこと言わないで」

「現実主義と言ってくれ」

足元の岩肌は次第に険しさを増し、地面には無数の亀裂が走っている。静寂の中に、私たちの足音だけが虚しく響く。

そして案の定、ソラの愚痴が再開された。

「背中が痛ぇ。なんでこんなに登り坂なんだ? 滝や崖の裏に城を建てるなんて、一体どこのどいつのアイデアだ。女王様も、会いに来てほしいなら中間地点くらいまで降りてくるべきだろ」

ルラが純粋な瞳で彼を見上げた。「ソラおじちゃん、疲れちゃったの?」

「……俺はまだ『おじちゃん』と呼ばれるほど老けちゃいねえよ」

私は足を止めた。

「どうしたの?」ルンが不審げに尋ねる。

前方の道と、谷の深さを測るように見渡した。

「……実は、この問題を解決する方法がないわけじゃないんだ」

ソラが食い気味に反応した。「分かったぞ。空飛ぶ雲だな」

「違う」私は溜息をつき、地面に膝をついた。「……『モーターサイクル(魔導二輪)』だ」

全員の動きが止まった。

「……モト、サイクル?」ルンが不思議そうに繰り返す。

私は深く息を吸い込み、精神を集中させた。

構造。車輪。機関。動力源――。脳内の設計図を現実へと投射する。

周囲の小石が共鳴するように震え始めた。

「お兄ちゃん……?」ルラが不安そうに後退する。

地面が盛り上がり、骨組み(フレーム)が形作られていく。鈍い光を放つ黒鉄の金属が岩の中から生えるようにして現れ、タイヤが形成され、エンジンがその中心で静かに脈動を始めた。

数秒後、そこには無骨ながらも力強い「鉄の馬」が姿を現していた。

ソラはそれを、長い、あまりにも長い間、凝視していた。

「……お前、これを最初から出せたのか?」

その声は、驚きを超えて微かに震えていた。

「今、思いついたんだ」

正直に答えると、ソラはその場にへたり込んだ。

「……俺が今まで歩いてきた苦労は、一体何だったんだ」

「――乗りなさい」

ルンが溜息混じりに促した。

私たちは狭い崖道を疾走し始めた。風が顔を叩き、背中ではルラがしっかりと私にしがみついている。ルンが絶妙なバランスを保ち、そして最後尾のソラは――。

「最高じゃねえか!!」彼は絶叫した。「なんで最初から出さねえんだよ!!」

鉄の咆哮を上げながら、私たちは谷の深淵へと突き進む。

だがその時、大地が激しく震動した。

最初は微かな震え。それが瞬く間に、地面を突き破るような轟音へと変わる。

私は急ブレーキをかけ、バイクを停止させた。

「……何、今の?」ルラが震える声で尋ねる。

答える間もなかった。進行方向右側の岩壁が、凄まじい勢いで崩落したのだ。

暗い亀裂の中から、何かが這い出してくる。

まず現れたのは、巨大な「ハサミ」。次いで、黒緑色の硬質な甲殻に覆われた巨体。そして、槍のように鋭い毒針を備えた、長くしなやかな尾。

――魔蠍スコーピオン

その無数の眼が、赤黒く不気味に発光した。

ソラは既にバイクから飛び降り、長槍を構えていた。

「……ほらな。言った通りだろ?」

怪物は岩と岩を擦り合わせるような不快な鳴き声を上げ、大地を威嚇するように叩いた。

私は冷や汗を拭う。「……どうやら、こいつを目覚めさせてしまったらしい」

「バイクを作ろうなんて言い出したのはどこのどいつ?」ルンが鋭く突っ込む。

「……俺だ」

「覚えておけよ」ソラが獰猛な笑みを浮かべる。「生き延びたら、今までの倍以上愚痴ってやるからな」

魔蠍が巨大なハサミを地面に叩きつけ、細い足場が崩落を始めた。

私は一歩前へ踏み出す。

「ルラ、僕の後ろにいろ!」

「……うん、お兄ちゃん!」

私は深く、深く息を吸い込む。

王宮への道は、どうやらこれ以上ないほど「騒がしく」なりそうだ。

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