自然7
「不可能なことを想像しろ、カエリン!」
俺は心の中で自分自身にそう叫んだ。
「よし、今なら何をすべきか分かる」
俺は呟いた。
「うるさい! 口数が多いんだよ!」
ソラはすでに俺の目の前に立ち、エネルギーの剣を振り下ろす構えを取っていた。
「今回は違う」
俺は体を大きく反らすほどに身をかわし、ソラが立っていた足場を蹴り飛ばした。バランスを崩したソラが倒れる。
「さあ、これも壊してみろよ」
俺は意識を集中させる。次の瞬間、手にぴったり合う二つの鉄製のグローブが出現し、即座に装着された。甲の部分には、スピーカーのような装置が取り付けられている。
「何をするつもりだ? 踊るのか?」
ソラは嘲笑い、笑った。
「できない奴ほど、そうやって馬鹿にするもんだ」
俺は言い返す。
「ちくしょう!」
ソラは忍者のように木々の間を駆け抜ける。その速さは、目で追うのも困難だった。
「これを喰らえ!」
ソラが突進してくる。
俺は動きを察知し、わずかに跳んでエネルギー剣の突きを避けた。
ソラは舌打ちする。攻撃は地面を抉っただけだった。
「こっちへ来い!」
怒りを露わにし、容赦のない攻撃が始まる。
「なあ、なんでそんなに俺の指輪を欲しがる!?」
俺は必死に避けながら叫んだ。
「家庭を持つ身なら、自分の家族を大事にしろ!
その強大な力を持つ指輪は忘れろ!
さもないと、全て失うぞ!」
ソラは攻撃の手を緩めない。
汗が滲み、呼吸が乱れる。このまま長引けば、いずれエネルギー剣に斬られて死ぬ――そう直感した。
「いつまで逃げてるつもりだ?」
ついに剣が俺の腕を掠めた。焼けるような痛み。
「いいぞ。攻撃を続けてやる!」
ソラはさらに攻め立てる。
痛みが腕から広がる。一本、二本。
息が荒くなり、剣の一振り一振りが、より近く、より致命的に感じられた。
俺は後退し、木の根に足を取られる。
「くそ……」
ソラは間を与えない。嵐のような斬撃。
跳び、転がり、必死に受け流す――だが体は小さな傷だらけだ。
温かい血が流れ、頭がぼんやりする。
「なぜ反撃しない!?」
ソラが怒鳴る。
「それとも、もう諦めたか!?」
胸の痛みに耐えながら、俺は薄く笑った。
「まだだ」
小さく答える。
「ただ……お前を待ってただけだ」
「何?」
俺は走り出した。逃げるためじゃない。
理屈に合わない方向――森の中央にある開けた場所へ。
「止まれ!」
感情に支配されたソラが追ってくる。
――いい。
上空から突き刺そうと跳び上がった、その瞬間――
ドンッ!
俺は両手のグローブで地面を叩いた。
音は聞こえない。だが、体で分かる。
空気が波打ち、地面が微かに震える。
ソラは後方へ吹き飛ばされ、乱暴に地面へ落ちた。
「……今のは……?」
俺は足を引きずりながら立ち上がる。
グローブが低く脈打っていた。
「エネルギー妨害装置だ。
電磁音波――お前の剣はエネルギー依存だろ?」
ソラは立ち上がろうとするが、動きが鈍い。
剣のオーラが不安定に揺れる。
「……ありえない……」
俺は待たない。
地面を踏み鳴らすと、足元にエネルギーのトランポリンが出現した。
空へ跳ぶ。
遅かった。
上空から叩き落とす。
横、背後――次々とトランポリンが現れ、
俺の体は予測不能な軌道で跳ね回る。
現れるたび、拳を叩き込み、
振動波が追撃する。
「ぐっ――!」
「なっ――!」
「くそっ――!」
反撃しようとするソラの剣は、波動に歪められる。
次のトランポリン。
考える隙を与えない。
一撃。
二撃。
三撃。
地面がわずかにひび割れた。
ついにソラは倒れ伏し、荒い息を吐く。
エネルギー剣は弱まり、やがて消えた。
俺は数歩離れた場所に着地する。
膝が震え、手も激しく揺れていた。
それでも――立っている。
ソラは苦しそうに笑った。
「はは……本当に……妙な奴だ」
彼は腕輪の通信装置を起動する。
「デクスター……出ろ……」
返事はない。
「デクスター?」
空気が一変した。
重い足音が、木々の向こうから近づく。
現れたのは、一人の人間。
黒い服に身を包み、顔は影に隠れている。
その手には――
動かないデクスターの体が握られていた。
ソラは凍りつく。
「この猿の名前はデクスターか。ほら、返してやる」
謎の人物は無造作に、その体を地面へ落とした。
「……デクスター?」
ソラの声は震えていた。
俺は唾を飲み込む。胸が締め付けられる。
やがて、その人物は顔を上げ、俺たちを見た。
静かだが、抗えない圧。
「面白い戦いだった」
淡々とした声。
「だが……お前たちは騒がしすぎる」
彼は俺とソラを指差した。
背筋が凍る。
さっきまでのソラが――一歩、後ずさった。
そして初めて見た。
ソラが、恐怖を見せた瞬間だった。
俺は拳を握りしめる。
誰だか分からない。
だが、はっきりしていることが一つある。
――最悪の敵が、今ここに現れた。
そして俺は……
もう、限界に近かった。




