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究極のカオスリング   作者: I.A. Janovit
29/42

自然5

その圧迫感は、全身にのしかかってきた。

まるでこの森の空気そのものが、見えない重りに変わったかのようだった。

一瞬、呼吸が止まる。

それは恐怖ではない――抑え込んできた怒りのせいだった。

俺は、頭上に吊るされたレーザーの檻を見上げる。

ルラは、まだルンの腕の中で眠っている。

妹は身を縮め、泣くのを必死に堪えていた。

胸が締めつけられる。

――選択肢は、もうない。

「……分かった。」

ようやく口を開いた。

感情とは裏腹に、声は不思議なほど落ち着いていた。

「俺が戦う。」

ソラは薄く笑った。

まるで最初から、その答えを待っていたかのように。

檻は動きを止め、太い枝の間に宙吊りのまま留まる。

「だが、聞いてくれ。」

一歩、前に出ながら続ける。

「俺はこの指輪のために戦うんじゃない。

お前の誤解――その誤解が、罪のない人間を殺しかねないからだ。」

指にはめた指輪が、微かに脈打つ。

その温もりが、手首まで伝わってきた。

「俺とルンは夫婦じゃない。」

強く言い切る。

「ルラは俺たちの子どもじゃない。俺の妹だ。

もしお前にまだ良心があるなら、俺たちの顔を見ろ。

お前が言うような関係性なんて、どこにもない。」

ソラは鼻で笑った。

「闇を抱える者は、皆、嘘がうまい。」

「なら――」

俺は言い返す。

「どうしてお前は、まだそこに立っている?

本当に信じていないなら、とっくに俺を殺しているはずだ。」

短い沈黙。

ソラの目が細められる。

ほんの一瞬だけ――

そこにあったのは怒りではなく、迷いだった。

だが、その迷いを飲み込むように、腕のブレスレットが光を放つ。

「もういい。」

冷え切った声。

「力で証明しろ。」

合図もなく、右腕のブレスレットから光が炸裂した。

俺は反射的に横へ跳ぶ。

爆発が地面を叩き、木の根が引き剥がされる。

「っ――速い……!」

俺は木々の間を駆け抜け、大木を盾にする。

光の弾丸が次々と着弾し、

“聖なる森”と呼ばれる場所を無残に破壊していく。

――皮肉だな。

「それがお前の言う“森を守る”やり方か?!」

俺は叫んだ。

「毒の源を壊しているだけだ。」

ソラは迷いなく答える。

俺は急停止し、片手を上げた。

想像力が流れ込む。

それは空想ではなく、強い意志として。

目の前の大地が隆起し、弧を描く壁となる。

俺はそれを踏み台にして跳び、空中で体をひねった。

光弾は逸れ、土の壁を砕く。

どうにか着地する。

「周りを見ろ!」

俺は叫ぶ。

「もし俺が本当に脅威なら、どうしてこの森はまだ立っている?!」

ソラが一気に距離を詰める。

レーザーの剣が空を裂き、その熱が肌を焦がしかける。

俺は後退し、よろめいた。

「お前が抑えているからだ。」

ソラは言う。

「そして、それこそが一番危険なんだ。」

呼吸が荒くなる。

汗が地面に落ちた。

「俺が抑えているのは、誰も傷つけたくないからだ!」

俺は怒鳴る。

「俺はルドじゃない! サムズでもない!

この力の半分すら、理解していない!」

その名前に、ソラの動きが止まる。

剣は光を放ったまま、俺に向けられていた。

「……なぜ、その名を知っている?」

低い声。

俺は唾を飲み込む。

「俺も、この混乱の被害者だからだ。」

頭上の檻が、わずかに揺れた。

ルンが緊張した表情でこちらを見ている。

彼女の不安が、はっきりと伝わってきた。

「カエリン……」

小さな声が聞こえる。

俺は再びソラを見据えた。

「このまま続けるなら、お前は“ハンター”じゃない。

ただ、トラウマを他人にぶつけているだけだ。」

ソラの目が、一瞬大きく見開かれる。

「俺の何を知っている?!」

彼は再び襲いかかってきた。

さっきよりも、明らかに荒々しく。

俺はやむを得ず、指輪の力を完全に解放する。

淡い光が体を包み、空中に足場が生まれる。

一歩ごとに、体が重くなる。

頭が脈打つ。

――これ以上無理をすれば、制御を失う。

「お前を倒したいわけじゃない!」

俺は攻撃を受け止めながら叫ぶ。

「俺は――お前に、気づいてほしいだけだ!」

ソラは俺の目の前で止まった。

距離は、ほんの数歩。

「俺は、とっくに気づいている。」

冷たい声。

「だからこそ――お前を自由にはさせない。」

俺は拳を握り締める。

指輪が強く輝いた。

「……なら。」

小さく呟く。

「お前が真実を見るまで、俺は――耐えてみせる。」

周囲のエネルギーが激しく渦巻く。

木の葉が舞い上がり、大地が震えた。

この戦いは、まだ終わらない。

――いや、

まだ、始まったばかりだ。

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