自然4
「ハンター……? どういう意味だ?」
俺は心の中で呟いた。
体が前後に揺れ始め、動けば動くほど、プロペラのように回転してしまう。
「放せ! おい、ハンターさん!」
めまいを感じながら叫んだ。
「お前たち、例の無責任な連中だろ? しかも驚いたことに、神聖な森にウイルスをばら撒こうとする夫婦を見るのは初めてだ! それにだ、独り身の俺の目の前で堂々とイチャつきやがって!」
その男は自分の髪を整えた。
一瞬の静寂。
聞こえるのは、鳥のさえずりだけだった。
「……は?」
俺は首を傾け、眉をひそめる。
「夫婦?」
「誰のことを言ってるんだ?」
下にいたルンも同じように困惑していた。
「ふざけるな! まだ幼い子どもの脳まで毒しているじゃないか! 闇の力を、子どもに植え付けるなんて許されるはずがない!」
白髪の男はルラを指さした。
その言葉が放たれてから数秒。
俺とルンは互いに顔を見合わせ、そして眠っているルラを見て、ようやく彼が誰を指しているのか理解した。
「俺たちは夫婦じゃない!」
俺とルンは同時に叫んだ。
「おい、白髪男。どうやら勘違いしてるみたいだな。俺たちはただの友達だ。その小さな子は俺の妹だ。こんな口の悪い女と結婚するわけないだろ。」
俺は説明した。
「何ですって?!」
ルンが怒鳴る。
「こっちこそ願い下げよ! たとえこの世界に男が一人しか残ってなくて、それがあんただとしても、一生独身のほうがマシよ!」
「茶番はもういい!」
白髪の男は叫んだ。
「騙す気か? 夫婦じゃないなら、その指輪は何だ?!」
今度は、俺の指にある指輪を指差す。
「指輪をしてるからって、結婚してるとは限らないだろ! 脳みそどこ行ったんだ、羊頭!」
「何だと?!」
男は激昂し、右腕を突き出す。
手首のブレスレットに装着された武器が俺を狙った。
右は遠距離武器、左は……レーザーで形成された剣?
「死ね!」
弾丸が高速で飛んでくる。
俺は必死に体を揺らし、なんとかかわした。
「危なかった……」
安堵の息をつく。
「本当に?」
再び弾丸の音。
次の瞬間、俺を縛っていたロープが切れた。
体が宙に放り出される。
「くそっ!」
俺は叫びながら落下した。
――今の、何だ?
ルンが右手を空に掲げる。
「月のクッション!」
雲のような塊が現れ、トランポリンのように俺を受け止めた。
「……柔らかい。これ、雲か?」
立ち上がりながら尋ねる。
「そう言えなくもないけど、実際は雲じゃない。」
ルンはそう言って、俺から顔を背けた。
「……どうした?」
俺は目を細めた。
「自分で考えなさい! 男って本当に最低。あんたみたいな夫? ありえない。」
怒りを隠さない声だった。
「今はそれどころじゃない。先にあいつを片付けよう。」
俺はルンを落ち着かせようとする。
全員の命が懸かっている。
彼女の機嫌を損ねたままでは、最悪、俺や妹まで殺されかねない。
「これが終わったら、何でも言うことを聞く。約束する。」
「嫌よ。」
ルンは首を振る。
「どうせあんたは“イマジネーションの指輪”の継承者でしょ? 私が手を貸す意味ある?」
――この女……。
正直、一発殴りたくなった。
だが、こういう展開には慣れている。
アルヴィナも怒ると、まったく同じだ。
俺は額を叩いた。
「おい、そこの二人。」
男が高い木の上から降りてきた。
骨を折ることもなく、完璧な着地だ。
「今、彼が“イマジネーションの指輪の継承者”だと言ったな?」
男はゆっくりと近づいてくる。
「なら、その指輪を渡せ。そうすれば家族連れのお前たちは見逃してやる。」
冷たい声だった。
「どうだ?」
白髪の男から、強烈な圧が放たれる。
空気が重くなる。
「……性格、変わったわね。」
ルンが小声で言う。
俺は首を横に振った。
「この指輪は渡さない! それに何度言えば分かる? 俺たちは夫婦じゃない! ルンが抱えてるのは俺の妹だ!」
警戒本能が強く働く。
「頑固だな。」
男は頭をかきながら言った。
「ならこうしよう。決闘だ。勝ったほうが指輪を手に入れ、負けたほうは勝者の命令に何でも従う。」
「そんなの選ばない!」
俺は叫んだ。
「今すぐ決めろ。さもなくば、妻と子どもが死ぬ。」
その瞬間、ルンの足元に光の檻が出現した。
鉄格子ではない。レーザーの檻だ。
中には――俺の妹とルラ。
「ルン! ルラ!」
俺は叫ぶ。
ルンは一瞬驚いたが、ルラを起こさないよう必死に平静を保つ。
檻はそのまま宙へと引き上げられ、鳥かごのように木に吊るされた。
「……どうやら、強制参加みたいだな。」
白髪の男は歪んだ笑みを浮かべた。




