自然3
「えっ、ここに手がかりがある。」
俺は深い森の真ん中に立つ案内板を、戸惑いながら見つめた。
『この森林区域への立ち入り禁止。この区域はウイルスから隔離されなければならない!』
「その“ウイルス”って、ルドの仕業じゃないのか? タムズが連れてきたあの存在の……?」
俺はアルヴィナの母から聞いた話を思い出しながら尋ねた。
「分からない。でも気をつけたほうがいい。厄介なことが起きるかもしれない。」
ルンがそう言った。
「それもそうだけど、まずは食べ物と飲み物を確保しないと。……あれは何だ?!」
俺は一本の木を指差した。幹に絡みつく根の隙間に、木と一体化したような筒が埋まっている。
「これは何の木だ? 変だな……人工の木みたいじゃないか?」
俺は首をかしげた。
「やっぱりね。君は本当にダメだな。もし“ベニー”っていう君の友達がいたら、長い説明になっただろうけど。」
ルンはまた俺をからかった。
彼女は背負っていたルラを見事に眠らせていた。
「ほら、妹が寝たよ。」
「そのままでいい。ルラが泣いたら大変だ。それに、ここにどんな恐ろしい生き物がいるか分からないし。ところで、俺の質問にはまだ答えてない。」
俺はその筒に触れた。
「詳しくは知らない。でも知識によれば、“自然のクラン”はすべて木を源としている。彼らの資源は、木に宿るエネルギーに依存しているんだ。もちろん、君の出身である下位クランにある普通の木とは違うけどね。」
「なんでいちいち人をバカにするんだ?! 皮肉抜きで、簡単に説明できないのか?」
俺は納得がいかなかった。
「さあね。ただそうしたいだけ。」
ルンは小さく笑った。
数分間、俺たちは森の中を進み続けた。とても平和で、脅威となるものはまだ現れていない。
空を飛ぶ象、風船のように膨らんだ羊、四本の角を持つサイ――。
自然のクランにいる生き物は、地球のものとはまるで違っていた。
新しい世界なら、すべてが新しいのも当然だ。
「さっきから、食べ物が一つも見つからない。」
俺は不満を漏らした。
腹の鳴る音が大きく響き、ルンにも聞こえてしまう。
「誰かさん、お腹空いてるみたいだね。」
ルンはまた意地悪そうに言った。
「うるさい!」
「ところで……ずっとルラを抱えていて疲れないのか? どれくらい歩いたか分からないけど、普通は腕が痛くなるだろ。抱っことか。」
俺は眠っているルラを見つめた。
「平気だよ。」
ルンは首を横に振った。
「私にも弟がいるから。こういうことは慣れてる。」
そう言って、安らかに眠るルラを見て微笑んだ。
「……面白いな。」
「何が?」
「いや、君と戦っていたときは全然違う印象だった。でも、たった数時間でも友達になってみたら、口は辛辣で意地悪だけど、実は妹思いの“お姉さん”なんだなって。」
俺はゆっくりと両手を頭の後ろに組んだ。
「そんな短時間で私を判断するの? まだお互い信用できる段階じゃないでしょ。」
ルンは眉をつり上げた。
「君、意外とバカだな。」
俺は笑った。
「何を笑ってるのよ?!」
今度はルンが怒った。
俺は足を止め、ルンに近づいた。
「前にも言っただろ? 裏切るかどうかは後でいい。友達になるなら、まずは信じることからだ。」
俺は彼女の鼻をボタンみたいに軽く押した。
いつの間にか、不安は消えていた。
俺は、いい人だと思った相手には、自然と心を開いてしまう。
「ちょっと、それ失礼でしょ! なんでそんなことするの?!」
ルンはさらに怒る。
「別にいいだろ。君の鼻がボタンに見えたから押しただけ。」
俺は気楽に答えた。
まだ少し不機嫌なまま、ルンは俺の背中を見つめ、やがて小さく微笑んだ。
「……信じる、か。」
彼女はそう呟いた。
――その瞬間。
シュッ!
突然、縄が俺の足に絡みついた。
俺はそのまま木の上へ引き上げられ、逆さまになる。
幸い、木はそれほど高くなかった。
「何だこれ?!」
俺は叫んだ。
「カエリン?!」
ルンが声を上げる。
「見ろよデクスター、なかなか良い獲物を捕まえたぞ。」
誰かが高い木の上へ跳び移った。
波打つ白い髪、ベストのような服、裂けたような筋肉。
両手首のブレスレットには遠距離武器が装着されている。
「ソラの狩人が来た。早くここから離れろ!」
そう言って、青く輝く美しい瞳をこちらに向けた。




