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究極のカオスリング   作者: I.A. Janovit
2/22

レイヤー1

学校のチャイムが鳴り響き、休み時間が始まった。

生徒たちは先ほどまでの頭痛を忘れるかのように、教室から一斉に飛び出していく。特に授業が数学や物理だった日には、その勢いはなおさらだ。

「俺、お前のこと好きだ!」

一人の男子生徒が、ある少女に告白した。

――アルヴィナ。俺の女友達だ。

「ごめん!もう彼氏いるの!」

そう言うとアルヴィナは、後ろの席に座っていた男子の手を突然握った。

その“彼氏”とやらは――俺だった。

「この人が、私の彼氏だから!」

そう言って、わざとらしく俺に甘えてくる。

事情を何も知らない告白した男子は、その場で失恋。

表情はあまりにも哀れで、冷や汗をかきながら今にも倒れそうだった。

「アルヴィナ・ザハラ!

さっきみたいなことに俺を巻き込むの、いい加減やめてくれない?

変な噂、もう山ほど聞いてるんだけど!」

俺は額を押さえた。

「なに言ってんの。ゴシップでしょ?平気平気。」

アルヴィナは手をひらひら振る。

「ただの噂、ね?」

俺はスマホを操作し、学校コミュニティ専用の公式ニュースサイトを見せた。

――

《空想癖のある男子、人気女子と交際中!?

七不思議を超える奇跡》

――

「お前がああいうこと繰り返すせいで、新聞部が完全に俺をロックオンしてるんだぞ!

トイレ行くだけで、ノート持った記者が三人も待ち伏せしてたんだぞ!?

それに……鼻ほじっただけで記事になるって、どういうことだよ!?」

俺は叫んだ。

「ネタ切れなんじゃない?

でもさ、注目されるのも悪くないよ?」

アルヴィナは悪びれもなく笑う。

俺は指を鳴らした。

次の瞬間、空中におもちゃのハンマーが現れ、アルヴィナの頭上に浮かぶ。

――ゴンッ!

そこそこ強めに叩かれ、アルヴィナが抗議の声を上げる。

俺は満足そうに微笑んだ。

「最終警告だ。

次に同じことしたら……ベニーに“あの秘密”を全部バラすからな。」

俺は邪悪に笑った。

「カエリン、ひどい!それだけはダメ!」

アルヴィナは泣きつくように、俺の体を揺さぶる。

「二人とも、うるさい。

読書の邪魔なんだけど。」

割って入ったのは、少年――ベニー・アンダラ。

俺の男友達だ。

簡単に言えば、俺、アルヴィナ、ベニーは、物心つく前――

まだおむつをしていた頃からの幼なじみだ。

親同士が中学時代からの知り合いで、ずっと交流があったからだ。

「聞けよベン、このアルヴィナが――」

そう言いかけた瞬間、アルヴィナが俺の口を塞ぐ。

「死にたいの!?」

低い声で脅してくる。

俺たちのやり取りは、一見すれば“普通の青春”に見えるかもしれない。

だが、それは大きな間違いだ。

もし“最優秀アノマリー賞”なんてものが存在したなら、

俺たち三人は確実にノミネートされる。

まず――ベニー。

天才の中の天才。

男子としてはアウトなほど長い髪のせいで、何度も生活指導を受けているが、

生徒指導部も今では完全に諦めている。

理由は単純だ。

彼は、学校史上最多の科学オリンピック優勝者だから。

小学生の頃には、すでに高校、いや大学レベルの問題を理解していた。

それを知った俺は、本気で言葉を失った。

それだけじゃない。

小学生の時点で、彼は高度な技術を用いたミニロケットまで作っていた。

名門校や有名大学からのスカウトも数え切れないほどあったが、

なぜかすべて断っているらしい。理由は誰も知らない。

次に――アルヴィナ。

小柄な体型にショートカット、いつも明るい笑顔。

だがその裏で、彼女は“全スポーツ制覇者”だ。

家にはトロフィーが所狭しと並び、

アイススケート、バレー、バスケ、乗馬、アーチェリー、

さらにはあらゆる武術まで網羅している。

もし彼女に恋して付き合いたいと思うなら、

最低限、高レベルの脚力と反射神経は必須だ。

少しでもミスれば――

ヤンデレのように豹変し、即死コースである。

そして最後に――俺。

俺が一番、異常だ。

文章や漫画が得意、という話ではない。

問題はそこじゃない。

俺には――

想像したことを現実にする力がある。

頭に思い浮かべたことは、99%の確率で実現する。

例えば数学の授業中、眠気に耐えられず、

教師の頭がニワトリになるところを想像した。

――次の瞬間、本当にそうなった。

この力の存在を知っているのは、

俺と二人の親友、そして両親たちだけだ。

初めて力が暴走したとき、

たまたま診察していた医師がベニーの父親で、

さらにアルヴィナの両親も同じ病院にいた。

検査を終えた後、ベニーの父はこう言った。

「この力は極めて不安定だ。

彼はいつ死んでもおかしくない。

脳が“非現実”に耐えきれない。

いつ爆発しても不思議じゃない。」

俺は――

“想像を現実にする存在”だった。

だが、救いはあった。

両親が“治癒装置”と呼ぶ、一つの指輪。

菱形のデザインに、正体不明の模様が刻まれている。

それのおかげで、俺は今も生きている。

「で?何を言おうとしてたんだ、カエリン?」

「いや、別に――」

「いつもの“特殊能力”の話でしょ。

今朝なんて、トカゲが空飛んでて、

その背中にカエルが乗ってたとか。」

アルヴィナが即答する。

ベニーは呆れたように目を回した。

「どうでもいい。

それよりアルヴィナ、“特殊能力”って大声で言うな。

そのうち『精神病院の患者が通う学校』とか記事にされて、

本当に連れて来られるぞ。」

その一言で、アルヴィナは笑いを堪えきれず、手を離した。

「笑ってんじゃねぇ!」

俺はキレた。

これが、俺たちの日常だ。

毎日が、笑いに満ちている。

――だが。

誰も予想していなかった。

人通りのない路地に、突如として転移の裂け目が開いた。

そこから現れたのは、黒いローブを纏った三つの影。

そのうち一人が指を鳴らすと、

空中にホログラム画面が展開される。

《Location:Unknown》

「さて、二人とも。仕事の時間だ。」

そう言ったリーダー格の男から、禍々しい気配が溢れ出す。

彼の瞳は、濃く混ざり合った紫と黒に光っていた。

「――二人の王の覚醒が、俺たちを待っている。」

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