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究極のカオスリング   作者: I.A. Janovit
17/22

レイヤー16

金色の光の粒子が、さらに激しく回転し始めた。

やがてそれらは一つの姿を形作り、闇の影の前に堂々と立ち尽くす。

簡素な王冠を戴いたその存在は、ただそこに立っているだけで、空間そのものが跪いているかのような威圧感を放っていた。

「偉大なる王――」

ベニーの父は、まるでこの物語そのものを乱すのを恐れるかのように、静かにそう呟いた。

七つの指輪が宙に浮かび、エルガーの身体を一定のリズムで周回する。

白、赤、青、緑、橙、灰、黒。

それぞれ異なる色を放つそれらは、単なる装飾品ではない。

並行世界を成り立たせる“根源の法則”そのものの具現だった。

アルドが一歩前へ踏み出すと、闇が生き物のように彼の身体から流れ出した。

指にはめられた紫の指輪が脈打ち、まるで呼吸するかのように周囲の光を喰らっていく。

「兄よ」

歪み、重なり合った声が響く。

「なぜ、お前だけがすべてのクランの運命を決める資格を持つ?」

偉大なる王は、言葉で答えなかった。

最初に輝いたのは白の指輪。

真理を暴き、幻を拒絶する力が発動し、アルドを覆っていた闇が裂ける。

そこには、彼が隠し続けてきた心の傷が露わになっていた。

次に、青の指輪が高速で回転する――元素の指輪。

瞬きする間もなく、エルガーはアルドの目前に立ち、あらゆる元素を融合させた一撃を叩き込む。

しかし、アルドは嗤った。

紫の指輪が激しく脈動する。

その攻撃は呑み込まれた。

まるで、現実そのものが王の命令を拒んだかのように。

「だからこそ――」

ベニーの父は、低く重い声で語り継ぐ。

「偉大なる王は、すべてを解放せざるを得なかった」

赤の指輪――《意志》。

王の決意を燃え上がらせ、血そのものを震わせる力。(最強の装甲と武装)

緑の指輪――《生命》。

彼らの衝突によって傷ついた世界を修復する力。(自然)

橙の指輪――《エネルギー》。

その余波だけで小さなクランを滅ぼし得る、純粋な破壊力。(巨人)

灰の指輪――《均衡》。

並行世界が完全に崩壊するのを抑え込む存在。(霊魂と精霊)

そして最後に、黒の指輪――《影》。

それは闇に堕ちるためのものではなく、闇を理解し、縛るための力だった。

並行世界の空が裂けた。

その兄弟戦争は、人類の時間には記録されていない。

どんな暦も、それを書き留めることはできなかった。

「アルドは最終的に世界から消え去った。だが、闇の指輪は残り続けた。

そして、全盛を極めた偉大なる王は老いと共に、自らの七つの指輪を七人の子へと託した。

――私が語っている指輪とは、まさにそれだ」

金色の光の粒子が、再び形を変える。

「……うぐっ」

その声が、静寂を破った。

ベニーが目を瞬かせ、勢いよく上体を起こす。

「頭が……なんだこれ、隕石にでも殴られた気分だぞ……」

「ベン?」

俺は慌てて振り返った。

アルヴィナも身体を起こし、頭を押さえる。

「……私たち、気絶してた?」

ベニーの父は、かすかに微笑んだ。

だが、その眼差しは変わっていた――鋭く、そして深い。

「よかった。ようやく目を覚ましたな」

ベニーは周囲を見回し、ゆっくりと机の上に降りてくる古書に視線を向ける。

「待てよ……さっきの話……ただの昔話じゃないよな?」

父は頷いた。

「ベニー、私はずっとこの時を待っていた」

ベニーは乾いた笑いを漏らす。

「父さん……まさか――」

「お前は、スーパーノヴァ・クランの血を引いている」

空気が凍りついた。

「狂気の思考者、クランを超えた発明家、宇宙の技術法則を設計した者たちを生み出したクランだ」

父は続ける。

「お前の天才性は偶然じゃない。それは“遺産”だ」

ベニーは言葉を失った。

冗談一つ口にしない彼を見るのは、初めてだった。

「……なるほどな」

やがて、彼は小さく呟いた。

「俺の設計が、やけに簡単に思えた理由……それか」

アルヴィナは、尊敬と恐怖が入り混じった表情でベニーを見つめている。

そして俺は、胸の奥が締めつけられるのを感じていた。

もしベニーがスーパーノヴァの末裔なら――

もし、俺の“想像の指輪”がこの物語と繋がっているのなら――

ルンとの出会いも、アルドも、指輪も。

すべてが、偶然なはずがない。

かつて並行世界を滅ぼしかけた戦争は――

まだ、終わっていないのかもしれない。

「さて――」

ベニーの父が、静かに言葉を継ぐ。

「まだ語られていない物語が残っている。続きを話そう」

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