レイヤー1 5
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「これは、数千年もの昔から語り継がれてきた古代の物語だ。」
ベニーの父は古びた書物のページをなぞった。
王の姿を形作っていた金色の光の粒子は、ゆっくりと姿を変え、美しく巨大な一本の樹へと変貌する。
それはまるでホログラムのようでありながら、まったく異質な存在だった。
金色に輝く粒子で形作られたその樹は、ベニーの基地の天井に届くほどの大きさを誇っていた。
「物語と呼ばれてはいるが、これは歴史の記録だ。
遥か昔、“エンシェント・ツリー”と呼ばれる巨大な樹が存在していた。この樹は計り知れない力を持ち、頂上――標高五二三五メートルに到達した者は、世界を救うことも、無数の並行世界を滅ぼすこともできる“恩寵”を授かると伝えられている。」
「並行世界……?」
俺は困惑し、眉をひそめて尋ねた。
「その通りだ。詳しく話す前に言っておこう。この世界に、我々だけが存在しているわけではない、カエリン。」
彼は静かに続ける。
「簡単に言えば、異なる次元、異なる時間、あるいは同じ場所に存在しながらも互いを認識できない存在たちがいる。それらは、あらかじめ定められた“アルゴリズム”によって隔てられている。そうした異なる世界を、我々は“クラン”と呼んでいる。」
ベニーの父は一度息をついた。
「クランの詳細については、この指輪の物語が終わってから説明しよう。」
彼は右手を軽く振った。まるで手品のような仕草だが、もちろん違う。
金色の粒子に触れた瞬間、それは弾けるように四散した。
「偉大なる王――。」
再び集まった金色の粒子は、今度は三つの姿を形作る。
「エルガー王の第一子。そして、実の弟であるアルド。
すべては、ここから始まった。」
粒子は再び姿を変え、二人の兄弟が巨大な樹を登る光景を映し出す。
互いに助け合いながら、必死にエンシェント・ツリーをよじ登っていた。
「二人は頂へと辿り着き、ついにその力を手に入れた。
想像以上に過酷だっただろう。あの時代には高度な技術が存在していたにもかかわらずだ。
現実とはそういうものだ。数千、いや数百万もの者たちが挑んだが、誰一人として成功しなかったのだから。」
ベニーの父は立ち上がり、書物のページを軽く叩いた。
すると、古書はゆっくりと宙へ浮かび、俺たちの中央へと移動する。
あまりの光景に、俺は言葉を失った。
一方、音を奪われているルンは、淡々とした表情でそれを見ている。どうやら、こうした光景には慣れているらしい。
やがて本から新たな光の粒子が溢れ出した。
白、赤、灰、黒、橙、緑、そして青――
七色の粒子は一つの指輪を形作る。
さらに、もう一つ。
紫色の指輪が現れた。
それはただの光の再現であるにもかかわらず、見る者の心を凍りつかせるほどの禍々しい気配を放っていた。
「ようやくスタート地点に立ったところだ。
善と、闇に覆われた存在が姿を現す。
そう――偉大なる王と、その弟アルドだ。
彼らこそが、多くの並行世界の秩序を変えてしまった存在だ。」
俺は二人の兄弟の姿を見つめる。
五メートルほどの距離を隔てて対峙する二人。
一方は、温かく美しい光を纏い、
もう一方は、見る者すべてに恐怖を抱かせる闇の気配を放っていた。
「より多くの力を欲したアルドの嫉妬と欲望。
やがて闇は彼を完全に呑み込み、
その瞬間――兄弟の間で避けられぬ戦争が始まったのだ。」




