レイヤー1 4
俺は困惑したまま、ルンとベニーの父を交互に見つめた。
「やはりそうだったか。思ったよりも早かったな。お前たちルグレスの信奉者は、あいつを復活させたくて仕方がないのだろう。特に、闇の指輪に呑み込まれたリン王子の存在がある以上な。」
ベニーの父は口ひげを指で弄りながらそう言った。
「だが、なぜ月のクラン王国の一員までが、この動きに加担している?」
その視線が鋭く変わる。彼に真正面から見据えられれば、誰であろうと威圧されずにはいられない。
ルンは黙り込んだ。一切、言葉を発しようとしない。
ベニーの父は小さくため息をついた。
「カエリン、すべて説明してくれ。お前たちが何を経験してきたのか。どうして私の息子ベニーが、あそこまで半ば焦げた状態になっている?」
そう言って、椅子に腰を下ろす。
「分かりました、叔父さん。すべて説明します。」
俺はうなずきながら答えた。
夜のベニーの基地で、俺はおよそ三十分以上かけて、これまで起きた出来事を語った。
「結局のところ、確証はありません。でも、俺は彼らがこの指輪を狙っているんじゃないかと思います。」
俺は人差し指にはめた指輪を見せた。
指輪は再び輝き出し、表面の奇妙な紋様が淡く灯る。白銀に淡い青を混ぜたような光が、やさしく揺らめいていた。
「当然だ、カエリン。彼らが狙っているのは、その指輪だ。なぜなら――その指輪は、医療用の装置ではないからだ。」
ベニーの父は顔を覆うようにして言った。
ルンと戦った時、俺はすでにその事実に気づいていた。
一度は現実を否定しようとしたが、逃げ道はなかった。だからこそ、俺はすべてを受け入れたのだ。
「説明に入る前に、彼女の耳にこれを付けてくれ。」
ベニーの父はルンを指差し、絆創膏のような物を差し出した。
「これを貼れば、私たちの話は聞こえなくなる。」
俺は黙ってうなずいた。
「何をするつもり?」
ルンは震えながら叫ぶ。
「近寄らないで!」
それでも、俺はその“絆創膏”をルンの耳に貼り付けた。
そして、指で彼女の鼻先を軽く押す。
「ばーか。今は誰も君に何かしようなんて思ってない。俺だって、ちゃんとした男だ。女の子に変なことするわけないだろ。」
そう言って背を向ける。
「この下等な人間が……何をしたの!?」
ルンは叫ぶ。
「どうして何も聞こえないの!?答えなさい!」
俺はそれを無視した。
歩き去る俺の背中を見つめながら、ルンの顔は再びほんのり赤くなる。
「……今、見えたのは何? あの視界に映った存在は……?」
俺が鼻に触れた瞬間、彼女の意識には奇妙な“視え方”が現れていた。まるで、未来を覗き見るかのように。
「終わりました、叔父さん。」
俺はそう言って席に着いた。
「よし。少し待っていてくれ。今、少し忙しい。」
そう答えた彼は、ベニーがまだ身につけていた壊れかけのアーマーを外し始めた。
「俺は銀河S4の救世主だ……」
ベニーはまた寝言をつぶやく。
「まったく、手のかかる息子だ。生きていただけでも運がいい。お前の作ったアーマーは非常に不安定だ……だが、どうやら私の評価が間違っていたようだ。」
その言葉の奥には、心配と安堵が入り混じった感情が滲んでいた。
かなり待たされることになり、やることがなかった俺は、音の聞こえないルンをからかい始めた。
適当なことを口にするだけで、彼女が怒るのが面白くて仕方なかった。
「待たせてすまない。」
ベニーの父は、古びた一冊の本を抱えて戻ってきた。
「私の研究と、その指輪の起源について話さなければならない。」
本のページが開かれた瞬間、柔らかな金色の光が溢れ出す。
その光はやがて美しい粒子へと変わり、薄暗かった部屋は一転して心地よい空間へと変わった。
粒子はゆっくりと集まり、一つの姿を形作る。
屈強な一人の人物――。
「これが、お前の指輪を巡る追跡の物語だ。」
ベニーの父は、静かにそう告げた。
建設的なコメントでサポートしていただき、評価していただければ、より熱心に仕事に取り組めると思います。ありがとうございます (•‿•)




