レイヤー1 1
頭が激しく脈打つ。
世界が回転しているように感じ、ルンの円盤がぶつかり合う金属音は、歪んだ反響となって耳に響いていた。
脚は今にも崩れ落ちそうで、膝は震え、手に握った小型の双剣には細かな亀裂が走り始めている。
ダメだ……。
ここで倒れるわけにはいかない。
その瞬間、指にはめた指輪が突然熱を帯びた。
焼けつくような熱ではない。
それは温もり――まるで長い眠りから目覚めた、第二の鼓動のようだった。
ドクン。
ドクン。
ドクン。
俺は動きを止めた。
この音は……外からじゃない。
「これは……」
俺は指にはめた菱形の指輪を見つめる。
表面に刻まれた奇妙な模様が、淡く輝き始めていた。
白銀に、薄い青を混ぜた光――水面に落ちた月光のような輝き。
空中に浮かぶルンも、それに気づいた。
怒りに満ちていた表情が、一瞬で強張る。
「そんなはずは……」
彼女は小さく呟いた。
「その指輪が……目覚めた、というの?」
俺を取り囲んでいた円盤が震え始める。
空間を封じていた光の線が、内側から叩かれたガラスのように、ゆっくりとひび割れていった。
俺は深く息を吸う。
眩暈はまだ残っている。
だが、それはもはや俺を止める圧迫ではなかった。
無理に引き出す必要のない流れ――
想像の奔流が、自然に身体を巡っている感覚。
「……なんだ、これ」
囁きのような声が、頭の奥で響いた。
誰かの声ではない。
無数の“可能性”そのものが、語りかけてくるようだった。
――想像とは、世界を無理にねじ曲げることじゃない。
――想像とは、世界が“そう在る”形を信じることだ。
俺は目を開く。
「だったら……」
一歩、前へ踏み出す。
揺れない。迷わない。
「俺はもう、“不可能”でお前と戦わない」
ルンが眉をひそめる。
「……どういう意味?」
「もっと単純なもので戦うだけだ」
俺は、指を鳴らした。
爆発はない。
巨大な武器も、異形の存在も現れない。
変わったのは――床だった。
俺とルンの足元、巨大な図書館の床が、夜空のような光の平面へと変化する。
無数の小さな星が瞬き、まるで宇宙の反射の上に立っているかのようだった。
「想像の……フィールド?」
ルンは薄く笑う。
「面白いわね」
彼女は両手に円盤を構える。
ムーンオーラが再び燃え上がる――だが、呼吸は先ほどより明らかに乱れていた。
「なら、ここで終わらせましょう」
ルンが、これまで以上の速度で突進してくる。
円盤が乱舞し、交差し、急降下し、足元の宇宙の光を切り裂いていく。
俺は動いた。
無作為な跳躍ではない。
まるで、次の一歩を踏み出す前から、その道筋を知っているかのように。
双剣は、指輪の光と溶け合っていた。
一振り一振りが、ただ防ぐのではなく、“可能性の向き”そのものを変えていく。
――キンッ!
――キンッ!
――キンッ!
ルンの円盤が次々と弾かれ、リズムを失っていく。
「な……何をしているの?!」
ルンが叫ぶ。
「一つだけ、想像した」
俺は静かに答えた。
「俺が……負けないってことを」
その瞬間、初めて――
ルンの表情に、動揺が浮かんだ。
彼女は無理やりムーンオーラを高めようとする。
だが、その身体は震え、紫の光はひび割れ、明滅し始めていた。
「もういい!」
ルンは残された力をすべて注ぎ込み、二つの円盤を一つに融合させる。
「MOON――!」
俺は前へ出て、剣を光のフィールドへ突き立てた。
「IMAGINATION AWAKEN」
指輪から白銀の光が解き放たれる。
それは破壊ではなく、鎮静の光だった。
波動がルンを包み込み、オーラの流れを断ち切る。
ムーンオーラが消えた。
円盤が、彼女の手から零れ落ちる。
「――あ……!」
浮遊の力を失ったルンの身体が、落下する。
その下では、制御を失った円盤の一つが暴走し、鋭く回転しながら落ちてきていた。
考えるより先に――
「ルン!」
俺は走り、跳び、彼女を受け止めた。
軽い――
激戦の直後とは思えないほど、あまりにも軽い身体。
腕に抱きしめたまま、俺は床へと叩きつけられる。
だが、円盤は――
落下の直前、俺が蹴り飛ばし、二人から逸らした。
静寂。
ルンは俺の腕の中で動かない。
荒い息、青白い顔、乱れた銀髪が頬を覆っている。
ゆっくりと、彼女の瞳が開いた。
「……あなた……」
弱々しい声。
「どうして……助けたの?」
俺は唾を飲み込む。
心臓の鼓動は、まだ激しかった。
「さあな」
正直に答えた。
「でも……お前が死ぬのを見過ごすのは、違う気がした」
ルンはしばらく俺を見つめていた。
そこに、もう憎しみはない。
あるのは困惑――そして、彼女自身も理解できていない“何か”。
「地球のクランの人間……」
彼女は小さく囁く。
「本当に……不思議な存在ね」
唇の端が、わずかに持ち上がる。
それは、ほとんど“微笑み”だった。
そして――
彼女は俺の胸に頭を預け、そのまま意識を失った。
俺はそのまま彼女を抱き続ける。
指輪の光は、役目を終えたかのように、ゆっくりと消えていった。
だが――
その頃、もう一方では。
親友のベニーが、窮地に立たされていた。
でも一方で、友達のベニーが。もはやドローンではなく、意思を持ったキューブになって、彼を困らせていた。ベニーは危うく気絶しそうになった。でも私が彼に近づくと、 ベニーはクレイジーなことをして勝つことができました。




