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究極のカオスリング   作者: I.A. Janovit
10/22

レイヤー9

巨大な図書館は、もはや静寂とは無縁だった。

小さな爆発が次々と高い書架の間で反響し、まるで鉄の洞窟の奥で鳴り響く轟音のように広がっていく。

黒い金属光沢を放つ立方体型のドローンが高速で飛び回り、不規則な陣形を組みながら、まるで意思を持っているかのように動いていた。

ベニーは大きく息を吸う。

「重要なメモだな……」

顔すれすれをかすめたレーザーをかわしながら、彼は呟いた。

「俺、数で押してくる敵が一番嫌いなんだよ。」

手の甲にある円形装置がさらに高速で回転し、表面の小さな紋様が鮮やかな青に光る。

ベニーは両手を強く打ち合わせた。

BRRRR—

電磁フィールドが拡散し、第二の皮膚のように全身を包み込む。

ドローンたちは即座に反応した。

合図もなく、十数本の赤いレーザーが一斉に放たれる。

ベニーは跳躍し、空中で回転しながら書架の壁を蹴った。

その反動で斜めに突進し、二機のドローンを同時に叩き落とす。

ドン!

バキン!

一機は粉砕され、もう一機は不安定に回転した後、床で爆散した。

「へっ……」

息が荒くなりながらも、ベニーは不敵に笑う。

「技術はすげぇかもしれねぇけどな、俺は中学の頃から人生をボルトとケーブルで組み立ててきたんだ。」

怪物はその場から一歩も動かず、爬虫類のような目を細めてベニーの動きを観察していた。

「地球クラン特有の過ちだ。」

冷たい声が響く。

「文明の階層差を侮る。」

腕を形作る触手がゆっくりと蠢き――

バシン!

一本が高速で振るわれ、ベニーの脇腹を打ち据えた。

「ぐっ……!」

ベニーは吹き飛ばされ、別の書架に激突する。

木材と金属が軋み、何百冊もの本が床へと崩れ落ちた。

ベニーは呻きながら、ふらついて立ち上がる。

「……オーケー、これは効いたな。」

「メモ追加。調子に乗るのは早すぎる。」

怪物は手首を持ち上げた。

そこにある高性能な腕時計が、緑色の光を放つ。

透明な防壁が再び展開される。

幾重にも重なった、エネルギーのガラスのような層。

「貴様の技術は力と粗いエネルギーに依存している。」

「だが、私のものは――存在そのものの場を操作する。」

ベニーは舌打ちした。

「言い回しがクソ難しいんだよ、ほんと。」

彼は床を踏みしめる。

脚の後部の装置が色を変え、今度は紫の雷光を放った。

「だったらよ……」

少し身を低くしながら言う。

「最初から力技でいく。」

ベニーは加速した。

その速度は一気に跳ね上がり、ほとんど視認できない。

電撃を纏った拳が、透明な防壁を叩きつける。

ドォン!!

図書館全体が揺れた。

しかし――

ベニーは再び弾き飛ばされる。

防壁には、わずかな亀裂が入っただけだった。

「は?」

ベニーは目を見開く。

「マジで……それだけ?」

怪物は、ついに低く笑った。

かすれた笑い声が、不気味に響く。

「人間よ。貴様は、すでに装置の限界に近づいている。」

残ったドローンたちが再び動き出し、より攻撃的な動きを見せる。

ベニーは腕を上げ、構えた。

「カエリン……」

小さく呟く。

「早くしろよ、相棒。」

―――

図書館の別の一角。

俺は高い書架の間を、ふらつきながら走っていた。

頭が重く、視界が少し揺れている。

「201番……201番……」

呪文のように繰り返す。

ベニーの戦闘の振動が、骨にまで伝わってくる。

埃が舞い、図書館のあちこちで小さな警報音が鳴り始めた。

そして――見つけた。

201番書架。

そこだけ、違っていた。

より古く、より分厚い。

周囲の空気が……重い。

書名は完全には読めない。

記号、異国の言語、奇妙な図表が混在している。

手が震えながら、一冊の本に触れた。

「……これだ。」

「答えはここにある。」

俺は唾を飲み込む。

「全部……動かせ……」

目を閉じる。

本が宙に浮かぶイメージ。

棚が空になるイメージ。

明らかに――不可能な光景。

激痛が頭を貫いた。

書架が激しく揺れる。

本が一冊、また一冊と宙に浮かび始める。

不規則に回転し、勝手に開き、ページが翼のように翻る。

「ぐ……っ!」

俺は膝をつく。

「今は……やめろ……!」

冷たい汗がこめかみを伝った。

その時――

金属が触れ合う、澄んだ音。

俺は凍りついた。

空中の本が、ぴたりと動きを止める。

背後の書架の通路から、静かな足音。

……分かっている。

この音は。

ゆっくりと目を開く。

そこにいたのは――ルン。

白い髪が真っ直ぐ落ち、無表情の顔。

その瞳には、突き刺すような冷たい光。

二つの月刃の円盤が、命令を待つかのように静かに回っている。

「カエリン。」

穏やかな声。

全身が強張る。

「やはりね。」

ルンはゆっくりと歩み寄りながら続ける。

「あなたは、答えを探しに来ると思っていた。」

本が次々と床へ落ちる。

立ち上がろうとするが、脚が震える。

「どうして……」

声がかすれる。

「どうして、みんな……この指輪を……」

ルンは数歩手前で立ち止まった。

「その指輪は――」

冷たく言い放つ。

「この世界のものではない。」

円盤の回転が速まる。

「今すぐ渡しなさい。」

「でなければ――」

「今度は、逃がさない。」

遠くで、再びベニーのいる方向から爆音が響いた。

俺は、挟み撃ちだ。

答えの本たちと――

命を狙う、月の姫の間で。

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