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第10話 今回はあんたの方が運が無かったわね

 その後も柚月さんの家に向かって二人で歩く俺だったが会話に関してはそこそこ弾んだ。相変わらずツンツンしている柚月さんだが俺のことはある程度受け入れてくれているらしいので気まずい空気には特にならなかった。

 もしこれが入学した直後とかだったら間違いなくこうはいかなかったはずだ。やはりこういうチャンスが巡ってくることを考えると関係構築をしておいて正解だった。送り狼なんかと勘違いされて拒絶されては意味がないからな。


「あそこが私のうちよ」


「おっ、もうすぐだな。ここまで何事もなくて良かった」


 柚木さんがとあるマンションを指差した姿を見て俺はそう声をあげた。すると柚月さんは俺に対して感謝の言葉を述べる。


「鶴海のおかげで助かったわ、ありがとう」


「今日はやけに素直だな、いつもならそう簡単には感謝なんてしてくれないのに」


「私にだって素直な時くらいあるわよ、特に今日は急な雨のせいでめちゃくちゃ困ってたし」


「それなら普段からもっと素直になってくれたら俺的には嬉しいんだけど?」


「そうして欲しかったらもっと私に尽くしなさい」


 二人でそんな話をしていたタイミングで俺達の横をトラックが通り過ぎたわけだが、そこでアクシデントが発生してしまう。

 何と大きな水たまりの上を通過した衝撃で水しぶきが俺達の方へと飛んできたのだ。その結果、俺は盛大に水しぶきをかけられてびしょ濡れになってしまった。


「……おいおい、マジかよ」


「今回はあんたの方が運が無かったわね」


 不幸中の幸いだったのは俺が気を利かせて車道側を歩いていたおかげで柚月さんには水が全くかからなかったことだろう。俺のおかげで柚月さんを助けられたため満足ではあるが、このままでは風邪をひきそうなのが怖い。


「そのまま帰ったら風邪を引いちゃいそうだし、私の家で乾かしてから帰りなさいよ」


「えっ、いいのか……?」


「ええ、鶴海が風邪をひいて学校を休んだら私も困るから」


「もしかして俺に会えないのが寂しいのか?」


「ち、違うわ。あんたが休むと私を助ける人がいなくなるから困るから仕方なくよ、勘違いしないでよね」


 柚月さんはほんの少し顔を赤くしつつ若干早口になりながらそう答えていた。なるほど、確かにそれは理にかなっている。

 クラスで柚月さん係とまで呼ばれている俺が休むと柚月さんには悪影響が大きい。ひとまず柚月さんの提案を受け入れることにした俺は一緒にマンションに入り、そのまま部屋に向かう。


「着いたわ、入って」


「お邪魔します」


 俺は柚月さんに招き入れられて部屋の中に入る。中は真っ暗だったため今は俺達以外誰もいないようだ。女子の家で二人きりというのは初めてなのでちょっと緊張する。


「とりあえずシャワーを浴びてきなさい、パパの服を置いておくから制服が乾くまではそれを着ていればいいわ」


「色々ありがとう、柚月さんの家族にも迷惑をかけられないし乾いたらさっさと帰るよ」


「ああ、それは心配いらないわよ。私は一人暮らしだから誰も帰ってこないし」


「……えっ!?」


 柚月さんの言葉から完全に予想外の言葉が飛び出したので俺は思わず間抜けな声をあげてしまった。高校生で一人暮らしをしてるってアニメや漫画の中の世界だけだと思っていたんだけど。するとそんな俺の姿を見た柚月さんは説明をしてくれる。


「高校に入学する直前になってパパが県外のだいぶ遠い場所に転勤になったのよ。私は残ったけどママはパパの転勤について行ったから結果的に一人暮らしになったってわけ」


「なるほど、そういう事情があったのか」


「数年経ったらまたこっちに戻ってくるらしいからそれまでの辛抱よ」


 そう口にした柚月さんはちょっと面倒くさそうな表情をしていたため、この一人暮らしは不本意に違いない。それにしても高校入学直前に両親が転勤でいなくなるって本当に運が悪いな。

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