第三章:小さな一歩
週明け、健太は決意を新たにしていた。彼は、却下された企画案を、佐藤のアドバイスを元に見直し始めた。ターゲットを若年層に絞り、まずは自社のオンラインストア限定で、SNSと連動した小規模なキャンペーンを実施する。費用は抑え、効果測定を徹底的に行う。
「これなら、大きなリスクはないはずだ…」
健太は、再度佐々木課長に企画を提案した。最初は渋っていた課長も、健太の熱意と、リスクを最小限に抑えた具体的な計画に、渋々ながら「…まあ、お前の小遣いの範囲でやるなら、好きにしろ」と、黙認に近い形で許可を与えた。
小さな一歩だったが、健太にとっては大きな前進だった。彼は、同期のデザイナーや、後輩のSNS担当者を巻き込み、秘密裏にプロジェクトを進め始めた。限られた予算と時間の中で、彼らは知恵を絞り、協力し合った。
キャンペーンが始まると、健太は毎日、食い入るようにアクセス数やエンゲージメント率、そして売上データをチェックした。最初は微々たる変化だったが、徐々に反応が出始めた。ターゲット層からのコメントが増え、オンラインストアの売上も少しずつ伸びていった。特に、協力してくれた料理研究家の投稿が「バズった」日は、売上が急増した。