9.次なる都市
アレンは旅を続け、ついにフフルスル海域に到着した。この広大な海域は美しい青色の水と、エキゾチックな生物たちで満ち溢れていた。彼は新たな冒険に心を躍らせながら、探索を開始した。
しかし、彼が海辺を歩いていると、突然目の前に見覚えのある姿が現れた。リリアンだった。彼女はアレンを見つけるなり、驚きと喜びが入り混じった表情で駆け寄ってきた。
「アレン!」リリアンは涙を浮かべながら叫び、両手を握りしめてアレンの前に立った。彼女の目には安堵と感激の涙が滲んでいた。
「リリアン、ここで何を…?」アレンは困惑しながらも、再会の喜びを抑えきれずにいた。
「あなたを探していたの、アレン。ずっと…ずっと探していたわ。」リリアンは震える声で言った。「王国でのこと、あれからずっと心配で…あなたが無事でよかった。」
アレンはリリアンの手を握り返し、彼女の目を見つめた。「リリアン、俺も君を探していた。あの時、君を守れなくて本当に申し訳なかった。でも、こうしてまた会えて本当に嬉しい。」
リリアンは涙を拭いながら微笑んだ。「大丈夫よ、アレン。あなたが無事でここにいる、それだけで十分。」
その後、アレンはリリアンにこれまでの旅路について話した。洞窟での試練や剣との出会い、そしてエルフの里での出来事を。リリアンもまた、自分がどうしてフフルスル海域にたどり着いたのかを語った。彼女はアレンを探すために、あらゆる手がかりを追いかけ、ついにこの場所に辿り着いたのだった。
二人は再会を祝し、新たな旅路を共に歩む決意を新たにした。アレンの心には、再びリリアンと共に冒険する喜びが満ち溢れていた。そして、剣もまた静かに彼らの再会を見守りながら、これからの新たな試練に備えていた。
しかし、再会の喜びも束の間、リリアンから聞かされたのは驚くべき事実だった。
「アレン、実は…」リリアンは声を震わせながら言った。「あなたが指名手配されているの。」
アレンは驚愕の表情を浮かべた。「指名手配?なぜだ?」
「王サリヌンティウスが、あの事件の後にあなたを反逆者として追われる身にしたのよ。」リリアンは悲しげに続けた。「私はあなたを捕えるつもりはないけど、他の者はそうはいかないわ。」
アレンは思案にふけりながら、状況を整理しようとした。「幸い、まだフフルスル海域にまでその伝達は行き届いていないようだが、ここに留まるのは危険だ。」
リリアンは頷いた。「でも、今は疲れているでしょう。少し休む必要があるわ。」
アレンは彼女の言葉に同意し、二人はとりあえず宿を探すことにした。フフルスル海域の小さな港町には、いくつかの宿屋が並んでいた。彼らは一番静かな宿を選び、そこで一晩を過ごすことにした。
宿に到着すると、アレンとリリアンは部屋を取り、休息を取る準備を始めた。部屋は簡素だったが、清潔で静かだった。アレンはベッドに横たわり、これまでの旅路とこれからの計画を考えた。
リリアンは窓辺に座り、海を見つめながら話しかけた。「アレン、これからどうするつもり?」
アレンは深く息をついて答えた。「まずはここで少し休んで、それからフフルスル海域を離れて次の安全な場所を探そう。王国の手が及ばない場所を見つける必要がある。」
リリアンは頷いた。「そうね。でも、私も一緒に行くわ。あなた一人にさせない。」
アレンは彼女の決意に感謝しつつ、微笑んだ。「ありがとう、リリアン。君がいてくれると心強い。」
その夜、アレンは久しぶりに深い眠りについた。夢の中では、これまでの冒険や戦いが思い出され、そしてこれからの旅路が描かれた。彼の心にはリリアンと共に進む未来への希望が灯り、疲れた身体を癒してくれた。
翌朝、彼らは新たな決意を胸に宿を後にした。フフルスル海域を離れるための準備を整え、
宿から離れ、フフルスル海域を離れる準備を進めていたアレン。その時、剣が突然おもむろに話しかけてきた。
「そういや、昨日の風呂は良かったなあ。」
アレンは驚きつつも苦笑した。「お前は剣だろ?何で風呂に入ったんだよ。」
「フフルスル海域の風呂は何処も素晴らしいらしいじゃないか。だから、どうしても入りたかったんだ。」
アレンは呆れながらも「はいはい、そうだね」と軽く相槌を打ち、剣を鞘に完全に押し込んだ。
しかし、その瞬間、リリアンの顔が青ざめ、狼狽えた様子を見せた。
「リリアン、どうした?何かあったのか?」アレンは心配そうに問いかけた。
リリアンは震える声で答えた。「アレン、その剣…喋る剣の伝説を知らないの?」
アレンは眉をひそめた。「喋る剣の伝説?」
リリアンは深呼吸をして話し始めた。「遥か昔、喋る剣は非常に強力な魔法を宿しているとされていた。そして、その剣を持つ者は必ず大きな運命に巻き込まれると言われているの。」
アレンは一瞬、言葉を失った。「それってどういう意味だ?」
リリアンは続けた。「喋る剣はただの武器ではないの。意思を持ち、時には持ち主を導き、時には試練を与える存在。その剣があなたと共にいるということは、あなたの旅がさらに大きな試練と運命に絡んでいることを示しているのかもしれない。」
アレンは剣を見つめ、思案にふけった。「だからあの剣がこんなに喋るのか…」
「それだけじゃないわ。」リリアンは言った。「伝説によると、その剣はかつて世界を揺るがす戦いに参加し、数多くの英雄たちと共に戦ったと言われているの。その剣を手にした者は、彼らの遺志を継ぎ、新たな試練に立ち向かわなければならない。」
アレンは深く息を吸い込んだ。「つまり、俺はこの剣と共にさらなる試練を受けることになるってことか。」
リリアンは頷いた。「そういうことになるわ。でも、あなたならきっと乗り越えられる。私も一緒にいるから。」
アレンは彼女の言葉に勇気をもらい、剣をしっかりと握りしめた。「分かった。どんな試練が待ち受けていようとも、俺はこの剣と共に乗り越えてみせる。」
そしてアレン達は道具屋へと足を運んだ。