13.フフルスル海域のダンジョン
フフルスル海域の海沿いを歩いている途中、テッチが突然質問をした。「そういやアレン、お前魔法の力はすげー強いのに剣技はイマイチじゃねーか、魔法で良いんじゃねーの?」
アレンは一瞬言葉に詰まった後、ため息をつきながら答えた。「さっきの死体は俺が魔法で倒したはずの奴だった。あまり使いたくないんだ。」
テッチはカチャカチャと音を立てて動き、まるで笑っているかのように振る舞った。「ソイツは傑作だな。じゃーなんでアレンは試練を受けてるんだ?」なんて、冗談では済まされないことを言う。
その言葉を聞いたアレンは立ち止まり、深く考え込んだ。何故自分は試練を受けているのか。それは元々、魔法試練の最終試験を合格するためではなかったのか。だが、今までの経験で、魔法を使うことに戸惑いを感じ始めていた。
「テッチ、お前の言う通りだ。俺は魔法の力を恐れているのかもしれない。」アレンはつぶやくように言った。
リリアンも足を止め、アレンの顔を見つめた。「アレン、あなたが何を恐れているのか分かるわ。でも、それでも前に進むためにはどうするか考えなければならない。」
アレンは頷きながら、過去の記憶が頭をよぎった。王国での戦い、多くの命を奪った力。それが自分の手にあるのだと改めて実感する。
「俺が試練を受けている理由は、自分自身の力を制御するためだ。」アレンは決意を固めて言った。「魔法を恐れるのではなく、正しく使うために。」
テッチは興味深そうに音を立てた。「なるほどな、アレン。じゃあ、次の試練も全力で挑むってことだな?」
アレンは頷き、リリアンに目を向けた。「リリアン、君も一緒にいてくれるか?」
リリアンは微笑んで答えた。「もちろん、アレン。あなたと一緒に、どんな試練でも乗り越えるわ。」
三人は再び歩き始めた。海風が心地よく吹き、波の音が静かに響く中で、アレンは自分の決意を新たにした。どんな試練が待ち受けていようとも、自分の力を恐れずに正しく使うために進んでいくのだ。
「よし、行こう。」アレンは前を見据えながら言った。
リリアンも力強く頷き、テッチはカチャカチャと音を立てて応え、海沿いの道を進む。
ーーーフフルスル海域の奥にある試練のダンジョン。その中は水の滴る水分を含んだ泥や岩で構成された、まさに自然の洞窟のようなダンジョンだった。アレンは足を踏み入れると、湿った空気が肌にまとわりつくのを感じた。
「なぁテッチ、ここの試練は何なんだ?」アレンがおもむろに尋ねると、鞘の中のテッチが揺れ動いて答えた。「ここの試練は水竜の試練だ。鱗が硬すぎて剣の効果が薄いから、魔法使えよな。」
アレンはテッチの言葉に苦笑しながら、過去の戦いを思い出した。魔法の力が自分の手にあることの意味、その力をどのように使うべきか。それを試される試練がここにも待っている。
アレン、リリアン、そしてテッチは慎重に洞窟の奥へと進んだ。周囲の壁や床はぬかるんでおり、一歩踏み出すごとに足元が沈む。やがて、目の前に水で満たされたエリアが広がっているのが見えた。
「ここでマーシャンポーションを使うのか。」アレンは呟き、リリアンと目を合わせた。
「ええ、ここからが本番ね。」リリアンはポーションを取り出し、キャップを開けた。
アレンも同様にマーシャンポーションを手に取り、一口飲み干した。ポーションが喉を通り過ぎると、不思議な感覚が体中に広がり、水中でも呼吸できる力が与えられたことを感じた。
「行くぞ。」アレンは決意を込めて言い、水の中に飛び込んだ。リリアンも続き、彼女の髪が水中で美しく広がった。
水中の世界は静寂と神秘に満ちていた。水面から差し込む光が揺らめき、岩や水草が幻想的な影を作り出していた。アレンは泳ぎながら、周囲を警戒した。
「気をつけろ、ここは水竜の巣だ。何が出てくるか分からねぇからな。」テッチの声が頭の中に響いた。
アレンは頷き、進む方向を定めた。洞窟の奥へ進むにつれて、周囲の雰囲気が徐々に変わっていった。水の流れが強くなり、冷たい水が肌に感じられる。
突然、前方に大きな影が見えた。それは巨大な水竜だった。鱗は青く輝き、鋭い目がアレンたちを捉えた。水竜は口を開け、鋭い歯が覗いた。
「来るぞ!」アレンは警戒を強め、魔法の力を呼び覚ます準備をした。
水竜は素早く動き、アレンたちに向かって突進してきた。アレンは即座に魔法を発動し、水の流れを操る呪文を唱えた。水竜の動きを一瞬遅らせることができたが、鱗の硬さが魔法を打ち消してしまう。
「くそ、鱗が本当に硬い!」アレンは歯を食いしばりながら、さらに強力な魔法を準備した。
リリアンも横で戦闘態勢に入り、魔法の光が彼女の手から放たれた。アレンは水竜の動きを読みながら、最適な攻撃のタイミングを探る。
「アレン、今!」リリアンが叫び、アレンは全力で魔法を放った。巨大な水の渦が水竜を包み込み、その動きを封じ込めた。
「よし、今がチャンスだ!」アレンは叫び、水竜の弱点を狙ってさらに強力な魔法を放つ。
どうやらやりすぎてしまったらしく、ダンジョンの壁諸共破壊し尽くしてしまった。
水竜は一瞬で胴体を引き裂かれ、そのまま力尽き、静かに亡骸が沈んでいった。
「やったしまったか…」アレンは息を整えながら、倒れた水竜を見つめた。
「うん、よくやったわ、アレン。」リリアンも安堵の表情を浮かべた。
「こりゃつえーや。」テッチはカチャカチャと音を立てていた。




