12.戦士の影
暫く待ったが、もう人の気配は無いようだった。テッチは「もう人の気配はねーし、ポーション掻っ攫って試練に行こうぜ」と言ったが、アレンは強烈な気配を感じ取った。アレンは冷静に辺りを見回しながら問い掛けた。「誰だ?」
その時、殺した下部の血や肉が集まり、一つの肉塊と化した。その肉塊は徐々に人の形を創りながら、不気味な声で口ずさみ始めた。「あーぁ、可哀想、可哀想。人殺しの正義気取り、可哀想、可哀想。」
アレンは身構え、テッチをしっかり握り直した。「何者だ、お前は!」
肉塊は徐々に完全な人間の形に変わり、その目が怪しく輝いた。「捕らえ。奪え、侮蔑の王に試練の宝を。」
リリアンも剣を構え、不気味な存在に警戒を強めた。「あの戦士たちはただの捨て駒だったのね…」
アレンは冷静にその肉塊と対峙しながら考えを巡らせた。テッチも声を潜めて言った。「アレン、こいつは普通の敵じゃねぇぞ。気を付けろ。」
「わかってる。」アレンは決意を固め、前進した。「お前を倒して、ここを抜ける!」
肉塊は狂気の笑みを浮かべた。「侮蔑、尊死、可哀想、可哀想。」
その瞬間、肉塊はアレンに向かって猛然と突進してきた。アレンは素早くテッチを振りかざし、攻撃を受け止めたが、衝撃が全身に走った。「なんて力だ…!」
リリアンも援護に回り、肉塊に斬りかかったが、その肉はまるで再生するかのように再び形を保った。「こいつ、再生能力があるのか…!」
アレンは集中を切らさず、肉塊の動きを見極めようとした。「リリアン、気を付けろ。こいつは並の敵じゃない。」
リリアンも覚悟を決め、アレンと共に戦闘を続けた。肉塊の攻撃は激しさを増し、二人に次々と襲いかかってきた。だが、アレンとリリアンは息の合った連携でその攻撃をかわし、反撃を続けた。
「アレン、何か手は無いの?」リリアンが叫びながら問いかけた。
「考えている!」アレンは焦りを抑えつつ、状況を冷静に見極めようとした。そしてふと思いついた。「テッチ、あの再生を止める方法は無いか?」
「考えろ、アレン!お前なら何とかなるはずだ!」
アレンはその言葉に励まされ、再び肉塊に立ち向かった。「リリアン、全力で攻撃を集中しよう。こいつを一気に叩き潰すんだ!」
二人は全力で肉塊に攻撃を仕掛けた。テッチの鋭い刃が肉塊を切り裂き、リリアンの剣がその肉を貫いた。肉塊は再生しようとするが、二人の連携攻撃がその速度を上回った。
「あーぁ、可哀想、可哀想…」肉塊の声が次第に弱まり、その形が崩れていく。
アレンは最後の一撃を放ち、テッチの力を解放した。「これで終わりだ!」
テッチの力が肉塊を貫き、その再生能力を完全に打ち砕いた。肉塊は絶叫を上げながら崩れ去り、ただの肉片に戻った。
「やった…!」リリアンが息を切らしながら呟いた。
アレンも深呼吸をし、テッチを鞘に収めようとした時、テッチは突然大声で叫んだ。「思い出したぜ!あれは試練の宝、生贄の盃。死んだ奴を無理矢理動かすヤバい奴だ!」
テッチの言葉を聞いたアレンは一瞬で過去の記憶が蘇った。あの王国で壁を吹き飛ばした時、どれだけの兵士を犠牲にしたのかを思い出し、胸が痛んだ。やるせない気持ちが心に広がる。
「試練の宝…テッチみたいなものか。」アレンは呟いた。
テッチは続けて言った。「そうだ、アレン。あの生贄の盃は、死者の魂を捉えて無理矢理動かすことができる。お前が感じたその気配、奴が操っていたに違いねぇ。」
アレンは強い決意を胸に抱いたが、その反面、過去の行いに対する後悔が心を締め付けた。「俺があの時…」
「アレン、今はそんなこと考えてる暇はねぇぞ。」テッチの声がアレンの思考を断ち切った。「試練の特性上、其奴とはいずれ合間見える筈だぜ。気を引き締めろ。」
アレンはテッチの言葉を胸に刻み、その気持ちを振り払わなければならないと覚悟を決めた。「そうだな。今は前を向いて進むしかない。」
リリアンもアレンの表情を見て、励ますように言った。「アレン、私たちは一緒に戦う。過去を背負いながらも、未来に向かって進むんだ。」
アレンはリリアンの言葉を胸に、転がったマーシャンポーションを拾って、フフルスル海域の試練へと向かった。




