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マチルダの結婚  作者: 棚から現ナマ
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1. マチルダ



マチルダは、残念な容姿で生まれてきた。

父も母も兄姉たち全てが、細身で容姿端麗だというのに、マチルダだけが違っていた。

生まれた時から、女の子だというのに、ごつくていかめしいのだ。

妻の不貞を疑う程に、家族とはかけ離れた容姿のマチルダだったが、父であるウインスター伯爵は、少しも妻を疑うことはなかった。

あまりにも自分の祖父に似ていたから。

国防の英雄であり “熊殺しのウインスター” と呼ばれた、元ウインスター辺境伯にマチルダは生き写しだったのだ。

隔世遺伝怖い。


マチルダを一目見た人たち全てに何故か “(いわお)” という言葉が頭に浮かんでくる。そんな外見にマチルダは育っていったのだが、外見とは裏腹にマチルダ自身は、大人しくて優しい女の子だった。

可愛らしいものや綺麗なものが好きな、ごくごく普通の少女だったのだ。

両親や兄姉たちは、容姿で差別するようなことはなく、皆が素直なマチルダを可愛がり、愛情深い家庭でマチルダは育っていった。




マチルダたちの住むハイオール国は、ニイハイア大陸の南西部にある内陸国であり、農耕が中心で、なかなかに豊かな落ち着いた国といえた。隣国のガッツィ国は、海に面しており、商業が盛んで発展した国といえる。

ハイオール国とガッツィ国は、国の1/3ほどを接面しており、とても親密な間柄といえる。長い歴史の中では、いがみ合ったこともあったが、今は良好な関係を築いている。


貴族学校では、ガッツィ国の言語習得は必修であり、初等部にあがってから、本格的にガッツィ語を習うようになる。

その一環として、初等部にあがった年にガッツィ国の親交のある学校の同じ学年の生徒と文通をする授業がある。

相手は学校側が決めるのだが、やはり家格の合う相手になるようだった。

2週に1度手紙を書いて、相手に送るのだ。もちろん相手の国の言葉で手紙を書かなければならない。習い始めたばかりのガッツィ語を使っての手紙は、読めるようなものではなかったが、それは相手も同じで、貰う手紙は習いたてのハイオール語で書かれている。


マチルダも幼年部から初等部に進級し、手紙の授業を受けることになった。

マチルダは嬉しくてたまらない。

すでにマチルダは自分の容姿が劣っていることを、周りの反応から気づいていたから。

心無いあざけりの言葉や嘲笑が聞こえてきていた。友達だと思って接していた少女たちは、全てがマチルダを自分の引き立て役に使うために近づいていたことが分かっていたから。

マチルダには一人の友達もいなかった。

だからこそ、この顔の見えない交流にマチルダは心躍らせた。

手紙の相手はマチルダの容姿を知りようはないのだから、マチルダと普通に接してくれるはずだ。

マチルダはガッツィ語をがんばったのだった。


『はじめますて。マチルダ=ウインスターいいます。おてがみをかけることが、とてももうれすいです。ガッツィごはまだまだヘタレですが、がんばりますので、よろしゅうにおねがいします』


『おてがみをありがとうございます。シモン=レイヤーズいいます。ぼくもハイオールごはならいはじめたばきゃりです。いっしょうけんめめいがばりますので、よろしくおねがいございます』


初等科1年生の二人の交流が始まったのだった。



クラスメート達は、勉強ということで義務的に手紙を書く者がほとんどだったが、マチルダは楽しんで手紙を書いていた。もちろんシモンから来る手紙も、ものすごく楽しみにしていた。

2週に1度の手紙も、3ヶ月が過ぎ、学期が変わると、授業としては終了してしまった。

マチルダは手紙をやめたくなかった。

それに本当は毎日のように手紙を書いて送りたかった。だが、外国への手紙は時間もだが料金もかかる。いくらマチルダが伯爵家の娘だといっても、そうそう文通を続けるわけにはいかないのだ。

それでもマチルダは父親に頼み込んだ。

今まで、おねだりなどしたことのなかった愛娘の頼みに、ウインスター伯爵は、二つ返事とはいえなかったが、手紙のやり取りは授業の時と同じく2週間に1度という制約をつけて許可したのだった。




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