闇のゲーム【ラジオ】
真剣士。
ただのゲームでは満足できなくなり、ひりつくような命のやりとりに取り憑かれたものたちだ。
そんな者だけが流れ着く場所があった。
【闇芸荘】
狂った芸術家が建てたような、おどろおどろしい洋館。
その扉に佇む男が1人。
扉の張り紙を読んでいる。
なになに…
「〝闇芸荘に入ったもの、決して、【ラジオ】という言葉を口にしてはならない。もし口にしたら…〟だと?闇芸荘がきいて呆れるぜ。ラジオなんて今時、聞いてる奴もいないだろ!」
男は、馬鹿にしたような口をきき、その扉をギッギーッーつつつと開けた。
玄関で靴を脱ぎ、暗く細い廊下をギシギシと歩く。
古びた扉をガチャりと開けると…
眩い光が男の目を照らした!
目が慣れてくると…そこには可愛いくてグラマーだけど、ピンクのファンキーな髪色をした長髪ウェーブでバニーガール姿の少女がたっていた。
「ようこそ、闇芸荘へ!ルールはたった一つ。あるワードを言ってはなりません。あなたが扉に書いてあったNGワードをいったら、わたくしは、あなたの命を貰います!逆にあなたが私にそのワードを言わせたら、あなたの望みをなんでも1つだけ叶えましょう!」
「へー、なんでもいいのか?」
男はニヤニヤと笑う。
なんでも一つだけ叶える!この条件には、抜け道があった筈だ!
〝永遠に俺のいいなりになれ!〟とでも願えばいいのだ!
目の前の少女は…髪色はファンキーだが…顔も身体も男の好みにドンピシャだった。
滑らかなシルクのような滑らかで白い肌。
顔は童顔だが…胸やお尻は形も良く豊満。網タイツを履いた足はすらっと長く、腰つきは細い。
それに…喋り方もおっとりしていて、男の脳を甘く蕩かす。
あどけないよつな…妖艶なような不思議な魅力をはなつ少女。
「ええ。女に二言はございません!〝永遠に俺のいいなりになれ!〟でございますね。いいでしょう!どんな無理無体な奉仕でも望みでも、永遠に好きなだけ叶えてあげましょう!わたくしに勝てれば…ね」
少女は、妖艶に笑む。
言ってもいない望みを言い当てられたのに、男はそれに気づかなかった。
それだけ興奮していたのだ!
「ふ。女に二言はない!ときたか。気にいったぜ!どんなゲームをする?扉に書かれていた言葉を言わせるんだろ?ルールはあんたが決めてくれていいぜ?」
「ほう…この闇芸荘で相手にルールを委ねますか…クレイジー!そそることを言ってくれますね。でも、万が一、負けてしまったらー…わたくしは永遠にあなたのものー!どんなことをさせられてしまうのでしょー?はぁはぁ…もう…もうっー…興奮しすぎて…達してしまいそうですー☆」
少女は、恍惚とした表情で息を荒くし、目を充血させて狂わんばかりに身をよじる!
その姿は、妖艶を通り越して狂気!ホラーですらある。
男は相手にルールを任せたことを、はやくも後悔し始めていた。
刹那、
「決めたっ…ゲームの形式は…クイズですわ!見たところあなたは名のある真剣士!クイズなどおてのものでしょう!一問ごとのターン制でクイズを出しあう。もちろん、あの言葉を言わせるためですわ!1分以内に答えないと負けと言うのはどうでしょう。問題は、あの言葉を言わせるものでなくても構いません。フェイクと言う奴ですわ!ただし、往復10ターン以内にあの言葉を言わせなければ、どちらも負け。お互いに命を落とす…どうです?」
「フェイクを混ぜていいのか!面白い!俺もたぎってきたぜぇー」
男の目も血走る。
「では、わたくしの先攻!ちゃらん♪」
「ちゃらん♪って…」
「問題!ロシアの極東部に位置する都市で、プリモールスキイ地方の州都である人工61万人の都市は?」
「うーん…」
地理の問題。これは、フェイクか?
「ちちちちちちち」
少女は急かすようにカウントをはじめる。
男は、焦る!思考も鈍る!
「ウラジオストク?」
刹那、少女の目が猫科の猛獣の如く光った!
「さすが…と申し上げたいところですが…」
「え?」
「普通のクイズならばそれで正解なのですけれど…このクイズでは、ウラジヴォストークとロシア語の発音に寄せて答えるべきでは?」
「あ!」
ウラジオストック!
「この程度の問題に引っかかるとは…真剣士の風上にもおけません。罰ゲームですわ!どーん★」
少女は、可愛いらしい仕草でウインクして、指で鉄砲を撃つしぐさをする。
「うあーっつつつ!!!」
その日から、男を見かけたものは誰1人としていない。