表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

2人目の対象者 美雪 p.2

「俺、パンダっぽい?」


 こてりと首を傾げて問うと、何故だか、目を逸らされた。


「うん。あざとっぽさがパンダっぽい。あと、服ね」


 言われて、自分の服装へと視線を落とす。白Tシャツに、黒のパンツという、至ってシンプルな格好だが、なるほど、確かに色合いはパンダだった。


 正午の照り付ける太陽の元、2人して笑い合っていると、ポケットの中のスマホが振動を繰り返す。


 画面には、いつもはあまり表示されることのない、父の名前が出ていた。思わず身構える。


「電話、出ないの?」


 美雪に促され、俺は、恐る恐る通話ボタンを押し、スマホを耳に当てた。


“美空が、何者かに刺された”


 電話口で、確かに父はそう言った。


 体が震え出す。なんだこの既視感は。俺は、この、とてつもない恐怖を知っている。


 震える自身の体を抱きしめつつ、ギュッ目を瞑った。途端に、頭の中に美穂の甲高い声が響く。


“あたしを受け入れない、あなたが悪いのよ!”


 美穂の狂気に満ちた顔が、脳裏いっぱいに広がる。


 そうだ。あの電話を聞いたとき、確かに美穂がいた。狂気に満ちた笑い声を響かせる美穂が、俺の側にいんだ。


 何故だ。何故、同じことが繰り返されているんだ。……いや、待て。同じことが繰り返す……?


 俺は、ばっと辺りを見廻した。


「ちょっと、どうしたの? 顔が真っ青だよ」


 美雪の声には答えず、俺は、怒鳴り散らす。


「出てこい、美穂! 何処かにいるんだろ! 出てこい!」


 俺の怒声を楽しむかの様に、建物の影から、うっとりと蕩けそうな顔をした美穂が姿を現した。


「やだ〜。怖い顔」

「美穂! お前、何をしたッ!」

「何って、あなたをタイムリーパーにしただけよ」


 ねっとりと絡みつく様な美穂の視線を、弾き返す様に睨みつけていた俺は、聞き慣れない言葉に困惑する。


「タイムリーパー?」

「そう。あたしを受け入れないあなたなんて、何度でも、身を引き裂かれる様な苦しみを味わえばいいのよ」

「どういう事だよ?」

「あら? 説明したはずよ。忘れちゃったの?」


 美穂の得意満面な笑みが、俺に瞬時に全てを思い出させた。


 タイムリープだ!


 俺は、あの出来事を繰り返している。だったら、もう一度戻って、あいつを救う! 救ってみせる!


 決意を込めて、美雪を睨みつけてから、俺は、美穂の肩をガシッと掴んだ。


「美穂! ごめん。キス、させてくれ!」


 目を見開いたまま固まっている美穂の唇を、俺は、有無を言わさず、強引に奪う。


 途端に、俺の体に、ビリリと電流が走った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ