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3人目の対象者 美桜 p.2

「あの、先輩? 大変不躾な質問で申し訳ないのですが……」

「ん? 何?」


 美桜のあまりにも恐縮しきった態度に、俺も些か緊張しながら、美桜の方へ視線を向ける。


 美桜は、俺の視線を避けながら、モジモジとしつつも、疑問を口にした。


「あの、何故私は、今日、誘われたのでしょうか?」

「えっ?」


 予想していなかった質問に、思わず間抜けな声が出てしまう。


「もしも、先輩がそういうおつもりで、お誘い頂いたのでしたら、きちんとお断りをしなくてはと思いまして」

「えっ? あの……じゃあ、どうして今日のこと、OKしてくれたの?」


 突然、美桜に振られた形になった俺は、訳が分からず、内心慌てふためく。


 そんな俺の胸の内を、知ってか知らずか、美桜は淡々と答えた。


「それは、皆さんの前でのお誘いでしたので、その場でお断りしては、何かと気まずいかと思いまして。実は、私、好きな人がいますので……その……」

「あ〜。そう。……気を使わせてごめん」


 美桜は、対象者にならなかったという事実に気がついた俺は、ガックリと肩を落とした。


 その時、あいつの姿が、俺の視界に飛び込んできた。予定通り、友人たちと楽しそうに、こちらへとやって来る。


 やばい! もう来てしまった。


 俺は、美桜の手を引っ張り、一旦物陰に身を潜めると、あいつをやり過ごす。そして、あいつを視界に捉えられる距離を保ちつつ、後を追う事にした。


 道すがら、沢山の風船を手にしたパンダの着ぐるみが、コミカルな動きをしつつ、あいつに近づく。


 俺は身を固くしたが、特に何事もなく、あいつはパンダに手を振り、先へと進んで行った。


 緊張からか、いつの間にか止めていた息を吐き出すと、それで何かを察したかのように美桜が、小声で声をかけてきた。


「もしかして、あのグループを尾行するための、カムフラージュですか?」

「えっ?」


 怒涛の出来事のせいで、対象者になり得ない美桜の存在を、瞬時に忘れ去っていた俺は、美桜の小さな声にビクリと反応する。


「あら? 違うのですか? 何やら、真剣な視線を送られているので。てっきり、私は、カムフラージュの相手役として、抜擢されたのかと思いましたが?」


 誘った理由は少々違うが、美桜の突飛とも思える妄想は、当たらずとも遠からずなため、俺は、これ幸いとばかりに、その妄想に飛び付いた。


「うん。実は、そうなんだ。最初に理由を言わなくてごめんね」


 極力申し訳なさそうに見えるよう、俺は、眉尻を下げつつ、頭を下げた。

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