3人目の対象者 美桜 p.1
あいつを救うために、また俺は、タイムリープをした。
もうこれ以上は無理だ。これ以上は、対象者が思いつかない。今回がラストチャンスだ。俺は、必ずあいつを守る。
焦る気持ちをなんとか押さえて、俺は、待ち合わせ場所である、遊園地へと急いだ。
遊園地入口の大門の端で、3人目の対象者が、所在なげに俺の事を待っていた。
「お待たせ」
俺は、軽く手を上げ、美桜に挨拶をする。
「いえ。あの、こんにちは。今日はよろしくお願いします」
ペコリと頭を下げた美桜は、淡いピンク色のワンピースに、白の靴下、白のパンプスとハンドバッグを合わせ、肩ほどの髪は、三つ編みおさげに纏めていた。
いつも清楚で可憐な感じの子だが、今日は、一段とお洒落をして来たようだ。
サークルの後輩である美桜が、俺に好意を抱いているようだと、先日、悪友が揶揄い混じりに、俺に報告をしてきた。俺は気がつかなかったが、奴の話によると、美桜はいつも俺の事を見ているらしい。その情報を元に、俺は、美桜をデートに誘った。
今日の正午までに、あいつの運命を変えられなかった時は、俺は、美桜の唇を奪い、最後のタイムリープに挑むつもりだ。
だが、俺は、美桜に対しては、全く恋心を抱いていない。美桜の心を弄ぶようで、本当は心苦しい。だから、できれば、美桜を傷つける事なく、俺の目的が達成される事を願うばかりだ。
時刻は10時半を少し過ぎたあたり。
事が起こるにはまだ時間もある。美桜は知らないとはいえ、俺の身勝手に巻き込んでしまうのだ。少しは、美桜にいい思い出を作ってもらおう。
「じゃあ、行こうか」
俺は2人分の入園券を購入すると、美桜を園内へと誘った。
「すみません。入園料お支払いします!」
小走りに駆け、俺の横へと並んだ美桜は、ハンドバッグを開けると、財布を取り出す。しかし、俺は、それをなるべく爽やかに見える笑顔で制した。
「これくらいいいよ。今日は、俺が誘ったんだから。気にしないで」
「でも……」
困惑顔の美桜は、どうすれば良いのかと、財布を仕舞わずに、オロオロとする。きっと、こういう事に慣れていないのだろう。そんな態度が初々しく、美桜に対して、恋心など無くとも、ついつい口元が緩んでしまう。
「本当にいいよ。気にしないで。たくさん楽しんでくれれば、それでいいから」
「……分かりました」
美桜は、渋々という感じで頷き、財布をハンドバッグへと仕舞う。
それから、美桜は少し言いづらそうに口を開いた。