007 本当には無かった話ー04
栞から渡された本を、ぺらぺらと、見るともなく、とりあえず捲ってみる。
当然の事だが、僕は速読などという特殊な技能を持ってはいないから、全然内容が頭に入って来ない。
それでも、挿絵の有無くらいは確認できた。
タイトルだけで一ページを使っていたりはするが、挿絵の類は一枚も無いようだった。
総ページ数は、っと…………666ページか。
なんだよ、結局怖がらせたいのか?
この本の目的がよく分からなかった。
中でも、僕の注意を引いたタイトルが一つあった。【都市伝説の起源】という話だ。都市伝説には、起源がある、のか?いや、そりゃあるんだろうけど、これだけでは、どの都市伝説の起源か、という事は分からない。そこが少し気になった。
少し始めを読んでみる、
この話は、作り話です。
だから、絶対に信じないで下さい。
と、そんな書き出しだった。本のタイトルが、【本当には無かった怖い話】なのに、この話は、冒頭でさらに念を押している。執拗に執拗に作り話だと念を押す所が、何だか少し気味が悪かった。
「そもそも、フィクションとノンフィクションの間に線を引く事が、おかしいと思うんだよ、私は。」
と、栞が再び話しかけてきた。
椅子に腰掛けたその手には、新たに一冊の本があった。
タイトルは、【見える人VS見えない人〜体質の違いはこんな所にあった〜】か。
……………。
栞は今、心霊にはまっているのだろうか。
そもそも、本のタイトルにも、色々疑問点があるんだけど……ま、気にしない事にしよう。
「それは随分な言い分じゃないか?栞。作り物の物語を、作り物と断っておくのは、大事な事だと思うんだけど。」
「ああ、確かにちょっと言い方が悪かったね。私が言ってるのは、怖い話での事だよ。」
「あ、まだその話続いてたんだね。」
怖い話系統の話。
栞の事だから、さっきの話はあれで終わって、また新しい話題に移ったのかと思った。
この話の中に出てくる、【都市伝説の起源】という話は、【夏のホラー2009】で書こうかな、と思っています。
もちろん、フィクションですが…………。よければ、そちらも読んでやって下さい。