003 本当には無かった話-02
またそんな実も蓋も無い事を。
「……そうかもしれないけど、本当にあった話の方が、やっぱり怖いんじゃないかな。」
僕がそういうと、ため息を一つついて栞は言う。
「じゃあね、茉莉君。【本当には無かった怖い話】は果たして、【本当には無かった】のかな?」
「そりゃ、わざわざそういうタイトルをつけるくらいなんだから、そうなんじゃないの?」
「ふん。どうだろうね。まぁ否定は出来ないが、私は、この中の幾つかは―――」
栞はぺらぺらと本を捲りながら続ける。
「―――【本当にあった話】なんじゃないかと思っている。」
「………。………本当にあったのなら、それこそ、そんな変なタイトルの本にのせないで、【本当にあった怖い話】の方に応募なりなんなりすればいいじゃないか。」
「茉莉君、ちゃんと頭が働いてないんじゃないかい?いつも通り。」
ほんの少し目を細めて栞が言う。
………いつも通りって。人を思考停止人間か何かみたいに言わないで欲しい。
「そんな事はないよ。」
「ふぅん。なら、何故君が言うように、怖い話は、【無かった事】になったのかな?」
その試すような口調が癪に障ったので、僕は少し真剣に考える。今まで適当に受け答えしていた訳じゃないけれど、それでも真剣の度合を僕は一つ上げた。
「………無かった事になったんじゃなくて、無かった事にしたかったんじゃないかな。」
「ふ。どういう意味だい?」
試すような栞の視線。