残念
よろしくお願いします。
「なんだ?お前は!?お前はなしやがれっ!」
サイは掴まれた手を振りほどこうとするが掴んだ手は全く離れない。サイは確か力持ちのスキルを持っていたはずだ。どんな握力をしているんだ?
「私はこのケンシャの騎士のモルヘラだ。町で暴れている奴がいると聞いて止めにきた。とりあえず一回落ち着け。」
鉢巻きを巻いた人物は顔を上げ、掴んでない方の腕でサイの肩をポンポンと叩いた。するとサイのは顔を真っ赤にして額にしわを寄せ始めた。
「うるせぇ!!クソガキ!どきやがれ!!」
サイは腕を掴まれたまま右足で全力の前蹴りを繰り出す。だが蹴りはいとも簡単にかわされてしまい、バランスを崩した。バランスを崩した所に足をかけられてうつ伏せで地面に屈する。
「くそっ!?」
サイはすぐに体を起こそうとするも、背中に乗られてあっという間に縄で縛られてしまった。
「ハゲル、全くどうなっているのだ。Bランクのお前がしっかりこういう輩を教育しておかないとダメじゃないか。」
モルヘラが縛られてもがくサイのを見ながらハゲルに話しかける。
「ヘッヘッヘ!また会ったな!お勤めご苦労さん!」
快活に笑うハゲル。
「あ、ああ、ありがとう。いや、それよりもだな、何があった?話を聞かせてもらうぞ。」
「ヘッヘッヘ!!あの坊主は何も悪くねぇ!!俺がイライラしたから殴ってやっただけよ!!」
ハゲルは右腕を曲げて力こぶを見せつけた。
「そんな嘘付かなくていいぞお前はいい奴だってことは分かっているからな。」
モルヘラは優しい顔をして微笑んだ。
「ヘッヘッヘ!!一本取られたぜ!!」
ハゲルは笑いながらペチンと自分の頭を叩く。
どこが?なんの一本だよ。
「まぁ、あの飯屋で話を聞こう。」
「いや!いい!今回は俺の顔に免じて許してくれや!」
「お前の顔にそんな価値などない。とりあえず飯屋で話しを聞こう。」
「いや!俺金を「金なら私がだす。とりあえず飯屋に行こう。」
ハゲルの言葉をモルヘラが遮り、そのままハゲルの体を担ぎ上げた。
「ヘッヘッヘ!!マジでやめて。」
ハゲルの快活な笑い声と顔が消えて急に真顔になる。
「あっ、いや、ごめんなさい。」
モルヘラはガッカリした顔をしてハゲルの体をゆっくりと下ろした。
「ヘッヘッヘ!わかりゃいいんだよ!!急に怒って悪かったな!!」
ハゲルがモルヘラの頭をワシャワシャと撫でた。
「うわっ!止めろ!!えへへ。この!!」
モルヘラは顔を真っ赤にしめちゃくちゃニヤつきながらハゲルの肩を小突いた。
バキィ!!
鈍い音が町にこだまする。するとハゲルの肩があらぬ方向へと曲がった様な気がしたが、刹那ハゲルの肩は元どおりになった。見間違いかな?
「くっ、」
いや、違った。めちゃくちゃハゲル冷や汗かいてる。多分肩を破壊された直後にヒーリングをかけたのだろう。すげぇ根性だ。
「まあ。話しを聞くのはいいとして、一応ボディチェックをしておこう。」
「ヘッヘッヘ!いいぜ!」
「では。失礼するぞ。」
モルヘラはハゲルの体を弄り始める。しかし手つきがめちゃくちゃいやらしい。
「フーーフーー。フーーーー。」
荒い呼吸で胸板をさすり始める。
「ヘッヘッヘ!もう十分じゃねぇか?」
ハゲルがモルヘラの手を叩き落とす。
「フーーー。フーーーー。」
しかしモルヘラは一切話を聞かずにハゲルの体をに頭を押し付け始めた。目は開かれ充血し、鼻血がボダボダとでてハゲルの服を汚すが、一切その手を緩めようとしない。
「ヘッヘッヘ!!本当にやめて。」
「あっ!すまない!!」
モルヘラは我に返りハゲルの体から名残惜しそうに離れた。
「ヘッヘッヘ!わかりゃいいんだよ!お前も仕事を頑張っているだけだからな!」
「ま、まぁな。」
モルヘラは謎のドヤ顔をしながら頭をハゲルに向かって突き出した。
「ヘッヘッヘ!なにしてんのお前。」
「あっ、いや、私の頭を撫でる流れだと思ったから。」
「ヘッヘッヘ!!さっきやめろって言ったじゃねぇか!!」
「そうだな。じゃあ身体検査と質問も終わったし帰るとする。もう悪いことはするなよ。」
モルヘラはガッカリした顔でハゲルに背を向け、歩いていった。
「ヘッヘッヘ!!分かったぜ!!」
「ああー、今から飯を食べに行くけど、一人ぐらい奢ってやってもいいんだがなー。」
モルヘラはハゲルの方向をチラチラと見ながらそんな独り言を言い始める。
するとハゲルがモルヘラの方は歩き出した。するとモルヘラがめちゃくちゃ嬉しそうな顔をした。
「む!奢ってやらない事もないけどな!ハゲル!いやいや、偶然だな!飯でも行くか!」
声が弾んでるぞ。
「ヘッヘッヘ!!おらよ。こいつ連れてけ!!」
ハゲルは道端で物乞いをしていたみすぼらしい女の子を抱き抱えモルヘラに差し出した。
「いや!大丈夫です。お金無いんで!」
女の子は、慌ててその提案を断ろうとした。
グゥゥゥ
しかし女の子の腹が鳴った。女の子は顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしている。
「残念だな。断らせてもらうぞ。」
モルヘラは女の子をハゲルから受け取り飯屋の方向へ歩いて行った。
「あれ?俺は?」
スマキになったサイの小さい声が聞こえた。
ベンと!モルヘラの!スキル紹介!!
べ「いやー始まりましたねスキル紹介。本日のゲストはモルヘラさんです。」
モ「あっ、ああ本日はよろしく頼む。今日紹介するのは[果敢]のスキルだ。自分よりも強い相手と戦う時に自分の身体能力を上げるぞ。
べ「なんか主人公っぽいスキルですね。俺も欲しいな。」
モ「私は持ってるぞ。」
べ「え!?どうやって手にしたんですか?」
モ「ドラゴンを一人で挑みに行った時だったかな?うん。あの時はかなりイキッていた。」
べ「モルヘラさんにもそういう時期があったんですね。」