~4話 演技
ハイセ村 ~村長の家
「ごめんくださ~い」
「はいはい、どちら様ですか?」
俺はこの村がミヤコ村に吸収されそうだという話について、村長にも話を聞きに来た。
扉を開けてくれた村長は、近くで見るとしわだらけのお爺さんだった。
「最近この村に越してきたものです。」
「はて?最近誰か引っ越してきたという話は聞いていませんが…」
しまった。村長なら外から引っ越してきた人くらい把握しているはずだということを忘れていた。
「えっと、知り合いの家に泊まらせてもらっていて、正式に引っ越してきたわけじゃないんですよ。」
とりあえず誤魔化して話を進めよう。
「はぁ、分かりました。」
「して、私に何か御用で?」
「ええ、少しお聞きしたいことが。」
「まあお掛け下さい。」
村長はミヤコ村のお客さんにそうしたように、俺を席に案内した。
「では、単刀直入に聞きますが、この村はミヤコ村に資源を狙われているのですね?」
「な、なぜそれを!?」
村長は梅干しのようにしわしわの顔をさらにくちゃくちゃにして驚いた。
「ええ、実は…」
言いかけて気付いたが、盗み聞きしていたことをそのまま話すとただの不審者である。
「いえ、今はそんなことを話している暇はありません!」
「私のスキルがお役に立てるはずです。どうか次の話し合いに私を同席させてください。」
白々しい演技だ。俺は勢いで色々ごまかして本題に入った。
「お、落ち着いてください。」
「して、そのスキルというのは?」
「はい、私のスキルは<威圧感>といいます。」
「<威圧感>…聞いたことがありませんね。」
村長は疑念のような、興味のあるような顔を浮かべた。
キャシィも知らなかったし、あまり有名ではないスキルなのだろうか?
取り敢えずスキルのことももごまかしておこう。
「有名なスキルではありませんから。とにかく、役に立ってみせます。」
「そうですか…そこまでおっしゃるのなら……」
煮え切らない言葉を紡ぎながら、村長は後ろの棚から紙を引っ張り出した。
「これはこの村からミヤコ村への地図です。」
「ミヤコ村へ行って何か交渉の材料になりそうなものを探してきてください。」
要するにミヤコ村の弱みを握って来いというのだ。この村長、実は腹黒いのかもしれない。