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異世界とか〈威圧感〉があればヨユ~だからww  作者: ブンガク焼きおにぎり
3/5

~3話 3週間後 

早朝、人間一人分の大きさの鏡に向かって怖い顔をしている男がいた。


「ふんっ!」

ギロ


「違うな…」

「むん!」

ギン!


「こんな感じか?」


村を発見してからしばらく経った。

俺はキャシィの家で、手に入れたスキル<威圧感>の修行をしていた。


修行はとにかくスキルを使いまくるというものだ。

そんなわけで俺はここしばらく朝から晩まで鏡に向かってキメ顔をしていた。


「ふぁああ~」

下の階から気の抜けた声が聞こえてきた。キャシィが起きたらしい。

ということはそろそろ日が昇ってきたようだ。


俺は修行の休憩がてら外に出てランニングでもしようと一階に降りた。


「あ、荻野くんおはようございます!」

「ああ、おはよう。」

出会った当初は緊張から慎ましかったキャシィも、今ではずいぶん慣れてきたようで話し方まで活発になっている。


「今日も早いですね~」

「うん、今からちょっと村の中を走ってこようと思ってね。」

「え?そ、そうですか。」


キャシィは急に眼をそらした。

何かまずいことを言ってしまっただろうか?


「どうかしたの?」

「い、いえ、お気を付けて…」

釈然としないまま、俺は家を出た。



まだ朝早いが、こちらの世界の人は日が昇るころに起きる人が多いようだ。

すでに外に出て仕事をしている人も多い。


「おはようございます!」

「おはよう、兄ちゃん見たことない顔だな。それに変な髪の毛だ。」


考えてみれば、この世界に来てからあまり外に出ていない。

まだ村の人にも顔を覚えられていないようだ。


「ええ、最近親戚伝いで引っ越してきたもので。」

俺が異世界から来たことなどは、信じてもらえないかもしれないのでできるだけ隠すことにした。


「そうかい、ここ【ハイセ村】はいいとこだぜ。これからよろしくな!」

幸い、この村には青や緑など髪色の濃い人が多かったので、黒い髪の毛もごまかせているようだ。



走っていて村を見渡すと、一つ違和感を感じた。

来た時には気づかなかったが、この村には畑がない。


「俺が知らないだけでこの世界の野菜は畑で作らないのか?」

後でキャシィに質問してみようか。と思っていると、目の前の建物へ周りに比べて豪華な服を着た人が入っていくのが見えた。

少し気になった俺は、その家の裏に回って壁に耳を当てた。


「ようっこそいらっしゃいました。」

今朝キャシィの声が下の階から聞こえたように、このハイセ村の家は壁の防音性が低く中の声がかなり聞こえる。


「ふん」

「さあ、どうぞお掛けになって下さい。」


「この村は相変わらず田舎よの、村長よ。」

「そうですね、そちらの村から見ればかなり寂れたところで申し訳ございません。」

どうにもほかの村からのお客さんをこの村の村長がもてなしているらしい。


「それで、今回こそあの件の承認はいただけるのだろうな?」

「で、ですから、何度も申し上げている通りそれはお断りします。」


「なぜ断る?今にもつぶれそうなこの村を我々が統合し、発展させてやろうというのではないか。」

「引き換えにこの村の資源や森をすべて持っていくと言うのでしょう?」

「そのくらいが妥当な交換条件であろう。」

「お断りします。」


どうやら、話し合いはうまくいっていないらしい。

ハイセ村は別の村に吸収される危機に瀕しているようだ。


「ふん、何と言おうとこのままではこの村はやって行けまい。次に来た時に承認しなければ、野菜の交易を止めるぞ。」

「それだけはどうかご勘弁を……」

「三週間後にもう一度来る。」

別の村からのお客さんはそれ以上何も言わず立ち去った。


なるほど、この村の野菜は交易でほかの村と交換しているわけだ。

しかし、このままではこの村はまともな食事すらできなくなってしまう。


俺はとりあえず家に帰ってキャシィに相談することにした。



「ただいま」

「あ、おかえりなさい!」

「あのさ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど。」

「あ……はい、なんでしょう?」

明らかに聞いてほしくなかったようだ。今朝変な態度だったのも俺にこの村の状況を知られたくなかったからだろう。



「えっと、さっき村長の家で聞いたんだけど…」

俺はさっき聞いたことを大まかに話した。


「このハイセ村はほかの村に吸収されそうなのか?」

「ええ、村の皆は先祖からもらった森や特産品の粘土を手放したがらないのですけど…」

この村は粘土が特産なのか。道理でレンガや瓦が多いわけだ。


「多分次そのお客さん…【ミヤコ村】の人が来た時には村長も「はい」と言わざるを得ないかと。」

「ミヤコ村か…」


「つまり、三週間後の話し合いでどうにか交易を残したまま村の吸収を避ければいいんだな?」

「ええ、そんなことができたらいいんですけど…」



キャシィには世話になった。どうにかこの村を守りたい。

それに、<威圧感>の本来の使い道はこういう交渉なのではないか?


どうするにしても、とりあえず村長と話そう。俺はもう一度村長の家へ向かった。

少し固有名詞が出てきてややこしいかも知れませんので一応解説を。

【ハイセ村】…主人公のいる村。

【ミヤコ村】…大きい村。ハイセ村の資源を狙っている。


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