~2話 第2の人生
~異世界 バーンライセ
「ん、ここは?」
僕はさっきまで薄汚い路地裏でおばあさんと話していたはずだが…
目に入ってくるのは、木々の間からのやさしい木漏れ日だ。
ゆっくり体を起こす。少し背中が痛い。
「いたた、これは…異世界転生機のせい?」
周囲を見渡してみると、どうにも山の中にいるようだ。
足元の落ち葉を見てみると、何とも見慣れたような気がするが、説明しがたい違和感を感じた。
グー
お腹が鳴る
「そういえばこの世界には人はいるんだろうか?」
言ってみたが、もし人がいない世界ならすぐに死んでしまうだろう。
とりあえず、どこかに人がいると信じて山を下りながら辺りを見回した。
~30分後
そろそろお腹が減りすぎて胸やけがしてきたころ、数十の家の集まった村を見つけた。
レンガのような壁に、瓦っぽい屋根。日本の田舎のようにみえる。
とにかく食べ物がほしくて、一番近くにあった家の戸をたたいた。
コンコン
ガチャ
「あの…どちら様ですか?」
中から出てきたのは僕と同い年位の女の子だった。
青髪に緑目という日本ではありえない容姿は、僕にここが異世界であるということをますます信じさせた。
「すいません、何か食べ物をくださいませんか」
「分かりました、詳しいことは中でお聞きしましょう。」
少女は僕を家に入れて、中の机へ案内してくれた。
しばらく待つと、白い皿に乗った肉料理が出てきた。
「どうぞ、一緒に食べましょうか」
「いただきます。」
肉料理は酸味があり、豚肉のようなコクと鴨肉のような歯ごたえがあった。
この世界の食材についても気になったが、後回しにして少女と話すことにした。
「ええと、まず自己紹介をしますと…」
「同い年くらいじゃないですか?そんなにかしこまらないで下さいよ。」
「わかった、僕は」
言いかけて思った。せっかくこの世界に来たのに話し方や振る舞いをそのままにしていれば、またナメられて、元の世界と変わらないのではないか?
そう思った僕は
「俺は荻野 秀幸!」
安易に一人称を俺に変えてみた。
「私はキャサリン・ヴェンガルテン 、キャシィって読んでください。」
「スキルは<移動>系を少々。」
スキル…さっきのおばあさんが言っていたことは本当だったのか。
「スキルって?」
「え?いや、スキルですよ。」
この世界ではスキルという言葉は常識のようだった。別の世界から来たことを伝えるべきだろうか
「ええと、実を言うと、俺は別の世界から来たんだ。」
唐突すぎただろうか?
「えぇ!?いや、でもそうなんですね。」
「そんな簡単に信じてくれるのか?」
「ええ、この世界では人間の髪と目が黒いなんてありえませんから。」
なるほど、こちらの世界では逆に黒い髪の毛のほうがありえないらしい。
「それで、スキルっていうのは?」
「はい、この世界では12歳になるときにスキルという能力を天から授かります。」
「どういう能力になるかはその時に一番望んでいた事が反映されているらしいですよ。」
ということは、俺がスキルを貰えるとすれば、絶対あのスキルが手に入るはず!
「俺ももらえるのかな?」
「ええ、恐らく。」
ガタン!
そう話していた時、俺の頭が急に傷んで、俺は机に突っ伏してしまった。
「大丈夫ですか!?」
キャシィが心配して声をかけてくれていた。
しばらくして、
頭の痛みが引くとともに、いきなり俺の目の前に黄色い半透明のウィンドウが現れた。
そのウィンドウには、獲得した俺のスキルが映し出されていた。
<威圧感>と。
「これって…」
「はい、スキル獲得メッセージです!」
「<威圧感>……聞いたことのないスキルですね…」
「いや、いいんだ!!これが俺の望んでいたスキルだから。」
ヨッシャ~~~~!!
さっき会ったばかりのキャシィの前では恥ずかしくて上手く喜べなかったが、
夜、貸してもらったベッドで布団にうずくまって大喜びした。
そして、自分は本当に夢の異世界に来れたのだと再認識した。
ありがとう!クラスのみんな!小汚いおばあさん!!
俺は異世界で第二の人生始めます!!!