~プロローグ
設定矛盾など指摘していただければありがたいです!
突然だが、もしこの世界にゲームのスキルのようなものがあったとしたら何が欲しいだろうか。
筋力が強くなったり、でたらめな魔法が使えたり、どんな病気にもかからなかったり。
僕、こと荻野 秀幸は自分に足りないものが欲しい。
それは"威圧感"だ。
~とある学校~
昼休み
「ハギノ!パン買ってこいよ!」
「嫌ですよ…あと僕はオギノです。」
「キャラメルパンがいいな!もちろん金はお前持ちで。」
「だから…」
「文句あるのか?」
教室の隅で。こんな今どきありえない絡まれ方をしているのが僕、荻野 秀幸だ。
「やってくれるよな?」
「ええと…」
困った。というか困っている。
一応言っておくと、僕はこのクラスメイトが怖くてこんなやりとりをしているわけではない。
僕には生まれながらに空手の才能があったし、柔道、ボクシング、テコンドーなど、挑戦した格闘技で負けたことはない。
でも僕は人を傷つけるのが嫌いだ。
そうして、クラスメイトを傷つけずに絡まれない方法を探してもう3年。
僕に足りないものは <威圧感> だということに気づいた。
思い返せば僕は人から頼み事を受けることが非常に多かったし、格闘技で優勝した時もメダルを見せるまで誰も信じてくれなかった。
それもこれも僕に人を寄せ付けない強そうなオーラがあれば楽に済んだのに。
放課後
「はぁ~、結局今日もパンを買ってしまった…」
今日は試しにクラスメイトを睨んでみたが、「泣いてるの?」と言われてしまった。
僕の人生、死ぬまでこんな調子なのかなぁ~
バンッ!
「おい!いま俺に肩ぶつけただろ!」
サングラスをかけた怖いお兄さんにぶつかってしまった。
「いえ…あ、すいません。」
「おい、待てよ。」
サングラス男の顔がゆがむ。
こういうことはたまにある。僕はよく怖い人に絡まれてしまうのだ。
「慰謝料よこせ、三万。」
僕は男が金額を告げる前に逃げるようにその場を立ち去った。
「おいちょっと待て!!」
路地裏
「ハァ…ハァ、ここまで走れば見つからないだろう。」
男から逃げ切った僕がほっと一息つくと、
「ふぇっふぇっふぇ…」
小汚いローブをまとった、見るからに怪しいおばあさんに声をかけられてしまった。
「ちょいとそこのお前さん。不思議な道具はいらんかぇ?」
「えと…あの、そういうのは…」
「いいじゃないか、見たとこお前さん、最近いいことないんじゃろ?」
「えぇ、まぁ」
「そんなお前さんにはコレ!異世界転生機!」
おばあさんは懐から宇宙から見た地球のように青色に光る奇妙な物体を取り出すと、
その物体の説明を始めた。
なんでも、こことは違う世界に行けるとか、ゲームのようなスキルが使えるとか。
僕は耳を貸す気がなかったので、無視して通り過ぎようとした。
「待つんじゃ!」
「僕はそんな物要りません…」
「そう言わずに、別の世界で人生をやり直したいと思わんか?」
「えと…」
困った、このおばあさんも僕がチョロそうだと思って押し売りをする気らしい。
でも、もしほかの世界でやり直せたとしたら…
ゲームのようなスキルが使えたとしたら……
僕、こと荻野 秀幸は自分に足りないものが欲しい。
そう、"威圧感"だ。
「一つください!」
「お?おお!買ってくれるのかい!!」
手に取った機械が光りだす。
この日、僕はこの世界にバイバイを言った。