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『………………』
…言葉が出ない。何と言えば良いのか。
「あ、あの……だ、大丈夫、ですよ、ね?このままガバッと殺しに来るとかまさかそんな展開」
『……あ、ああいやその大丈夫、だ。です、はい』
とりあえず言葉は返そう。だいぶぎこちなくなってしまったが、一応意思疎通は取るべきだ。
………あぁ、だがしかし…
「あぁ、良かった!多分大丈夫だろうとは思っていたんですが、ちゃんと大丈夫そうでホッとしました」
そう言って顔を綻ばせる少女。その背後で少女の尻尾もぱたぱたとしている。
『………』
久しぶりに、ちゃんと!
人と、話せた!!!!
『……ありがとう、ありがとう、ありがとう…』
「って、なんで貴方の方がそんな涙声みたいな思念を飛ばしてくるんですか!?」
アンデッドになってからまだ一周もしていないのに、俺がどれだけ他の人と話したかったのか今実感したよ!
めっちゃ嬉しい!
『いや、ほんとティティヌス神よ、導きに感謝します…』
「そして唐突な神への感謝!?」
ふぅ、なんとか落ち着いた。
しかしこのおそらくいいところの子、中々いいツッコミをしている。
目を白黒させる彼女(?)に、とりあえず
『いやまぁ、取り乱して悪かった。人とちゃんとした形で話したのは初めてで、ちょっと興奮してしまったんだ』
「あっ、はぁ……確かにスケルトンだから、そうなのかも…しれませんね」
一応身振り手振りや筆談で意思疎通はとっていたが、自分の意思を完全に人間相手に伝えるのは初めてだ。
まだ困惑気味の子に、取り敢えず自己紹介と行こうか。
『っと、俺はスケルトン。安全で紳士的かつ真摯な姿勢で人間からの信頼を勝ち取りたい系の新しいアンデッドだ。よろしく』
「はい!よろしくお願いします!」
そう言ってぺこりと座ったまま頭を下げる少女()。
いや、今のは突っ込まないのか。
『んで、怪我とかしてないか?見た感じには特に何かあるようには見えないが…』
「ちょっと手を擦りむいたぐらいで特には何も無いです」
『ん?どれ見せてみろ』
「あ、はい。分かりました」
素直にこちらに合わせていない方の手のひらを見せる少女(?)。警戒心が足りないのでは?やっぱり良いところの奴のような気がしてならない。というか、性別ぐらい聞くべきか?でもなぁ、クッソ失礼だよなぁ…。
そう思いながら、手を見る。
ふむ、ちょっと赤くなってるぐらいか。石とかで傷をつけてたら、恩を売るぐらいで治療の一つでもしようかと思ったが。
『ふむ、確かに問題無いな』
「はい、大丈夫です!………って、それはともかくお礼をしなきゃいけませんね」
そう言うと、居住まいを正してこちらを見る少女(?)。
黒に近い茶色の瞳が俺の骨身を映し出している。
……そういえばまだ血塗れじゃないか。よく耐えられるな。俺なら泣くぞ。
「この度は魔物から助けていただき、誠に感謝しております。貴方が居なければ何をされていたかも分かりません。…本当にありがとうございました」
そう言って深々と頭を下げる少女(?)。
『いや、そこまで改まる必要は無いぞ。たまたま通りかかっただけだからな。感謝するのなら自分の運に感謝しとけ』
「いえ、確かに運が良かったかもしれませんが、助けてくれたのは貴方ですので」
そう言いながら頭を上げる少女(?)。
そして少しバツの悪そうな顔をしながら、俺にこう言った。
「その、こんな事頼むのもアレなんですが……私がこの森から脱出するまでで良いので、護衛して欲しいんですが…ダメでしょうか?」
『良いぞ。最初からそのつもりだったからな』
「そ、そうなんですか!?ありがとうございます!」
頼みを快諾してやると真面目な顔を打っちゃって、喜びを顔全面に出す少女(?)。
ふむ、ころころと表情が変わって面白い。
それはともかくとして。
『それは良いんだが、その前に名前と性別を聞いても良いか?なんせアンデッドなもんで、あんまり人間の雌雄が分からなくてな…』
よし完璧だ。アンデッド感を出しながら聞きづらい部分を的確に聞いていく姿勢、良いぞ。
ーー自画自賛すんなーー
《でっちーだっさ……》
ほう、久しぶりに口を開いたら罵倒とはな。よっぽど空を飛んでいく感覚がお気に召したようだな。今なら連れ合いを連れて二人で遊覧飛行してくるか?
ーー結構ですーー
《遠慮…》
なら黙らっしゃい。
「せ、性別もですか。じゃあーーーー」
何故か少女はそう言い終わると目を閉じ、大きく深呼吸した。
そして目をカッと開き、こう宣言した。
「あーしの名前は、フェットっす!性別、女!よ、よろしくお願いします!」




