19 前世の記憶1 読む必要は無いです
《記憶に損傷あり。また、干渉により一部分の再生は不可能》
「????????????」
「信じろって!絶対に帰ってくるからさ」
そう言って、俺を止めようとする???を振り切って、魔導機に乗り込む。
こいつは星界大神戦争時代の遺物で、龍の鱗ですら貫く『矛』を持っている。こいつでなら、あのクソッタレの黒龍にも…!
思い切り操縦桿を握りしめる。魔導機が自動で俺の体に接続され、魔力を吸い出していくのを感じる。目の前の計器の数値が上がっていくのと同時に、キィィィィィィィィンという不快な高音と共に、魔導機に火が灯るのを感じる。
発進準備完了。
無機質な声が聞こえた瞬間、俺は魔導機を飛び上がらせる。
凄まじい速度で飛び上がるのと同時に、体が押し潰されるような衝撃に息が止まる。
「……っ、がはぁっ!」
なんとか一呼吸置くと少し楽になる。ここで気を失う訳にはいかない。
歯を食いしばりながら、前方の森を見据える。あの奥地で、あの人たちが戦ってるんだ。
俺たちの街を守るために。
行くぞ!
心の中でそう叫びながら、魔導機を全速力でかっ飛ばした。
ーーーーーーーーーーーーーーー
いた!
その戦いを見つけるのに30秒もかからなかった。
遥か後方に街を置いて、ンゲンダの森の奥地。
そこで、森の巨木さえも超えるような巨軀でもって暴威を振るう黒龍がいた。
ギギャァォォォォォォォォォンッッッッッ!!!!
耳をつんざくような凄まじい雄叫びを上げると同時に、口から白い焔が迸る。
対閃光防御展開
無機質な声と共に、魔導機から薄暗い幕が張られ俺の目を保護する。
凄まじいな。これが伝説か。
離れた場所で滞空しながら、経過を観察する。
龍はンガンダの森の中にいるあの人たちに夢中で、こちらには気づいていない。いや、気づく余裕が無い。
今も、吐き出される白炎を横に、木々から飛び出した黒く小さな影が巨大な龍に近づき一撃食らわせる。
聞くに耐えないような絶叫を上げながら、僅かに後退する龍。しかし、龍はその翼を(明らかに大穴が空いている。おそらくは撃ち落とされたのであろう)大きく広げ、その翼に刻まれた刻印を怪しく光らせる。
その瞬間、戦闘地域の木々が一瞬にして枯れ果て、まるで根から腐り落ちたかのように地響きを立てながら倒れ込む。
その力を防ぐためか、龍に飛び込んだ影が光を放ちながら、飛び退いていこうとする。
しかし龍はその隙を見逃さず、長く伸ばしたその右腕で影を叩き落とした。
轟音と共に森に叩き落とされる影。普通であれば即死だろうが、まぁ、死にはしていないだろう。
影を叩き落としたのを勝機と見たのか、龍は広げた翼の刻印を再度光らせる。同時にその黒い両手を組み、力を溜めている。今度は先程より圧倒的な魔力でなにかを発動させようとしている。
よし、頃合いだ。
「『矛』の展開」
了承。対邪神用魔刃を展開。
その声と共に、とんでもない魔力が魔導機の前方に集中していく。そして1秒もかからずに視界が暗く感じられるほどの凄まじく、そして、悍ましい光を放つ刃が生成される。
生成されるのと同時に、全速力で黒龍に突撃する。
視界の隅が溶けて流れるほどの速さでもって黒龍に肉薄する。
刃の魔力を感じ取ったのか、黒龍が目を剥いてこちらを見据える。それと同時に振り上げた両手を叩きつけようとーーーーーー
「『風狼のぉぉぉ大咆哮ぉぉぉぉぉぉ!!!!』」
その横っ腹に爆発が起きる。それと同時に魔導機も揺れ、狙った場所から逸れて、龍の首筋と翼をすり抜ける。
しかし、当たった黒龍はそれよりもっと酷い。横っ腹が抉れ飛んでいる。その穴からは黒い血が流れ落ちるのを一瞬見た。
「ぬぐぐぐぐぐくくくくっっっ!!!」
全速力で飛んでいく魔導機の操縦桿を曲げ、大回りして黒龍に再度突撃する。今度は魔術も途切れ、大きな傷を負った龍に妨害される事無く、
一閃。
その片翼を切り落とした。
ギギャァァァァァァァァァァァァァッッッッッ…!?
鼓膜が破れる。
そう思うほどの絶叫。いや、魔導機の遮音機能を使ってなかったら、確実に鼓膜が破れていた。それどころか、死んでいたかもしれない。
とりあえず、最低限の任務は達成だな。
そう思って魔導機から振り向く。
ぎろり
あ、やばい。ちびりそうになった。
黒龍が憎悪の瞳でこちらを睨め付けている。もはや下にいるあの人たちなんてどうでもいいと言わんばかりだ。
寒気と怖気が同時に俺の体を縛っていく。
震える手で抜いた短剣で、軽く腕を突く。
痛い。しかし、それと同時に体が動くようになった。
今度は俺からも睨み返してやる。ついでにべーっと舌を出して嘲笑ってやった。
ばーかばーか。
ぶちっと黒龍がキレた気がした。
ギギャァォーーーーーー
雄叫びを上げながら、こちらに黒腕を伸ばす龍。
だが、おいおい、そこにいる人たちの事忘れるなよな。
ほら、お前の後ろ、太陽を背に飛び上がった黒い影を見てやれよ。それがお前の最期だぜ。
抜かれた剣に魔が宿る。龍を下す、人の剣。
あぁ、あれこそがーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーォォォォ……
雄叫びの途中から首を切り落とされ、力無く沈む黒龍を見ながら、言葉を口にする。
あれこそが、我らの誇る、破龍者なり。




