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カツカツカツカツ。
軽い、硬質な足音。多分この足音は……
寝転がりながら、ぼんやりと考えているとその足音はこの部屋の扉の前でぴたりと足を止め、扉を開いた。
「こんにちは、スケルトン。気分はどう?」
体を起こして声の主を見る。端正な顔立ち、短く切り揃えられた赤い髪。リーンだ。
『ア゛ア゛』
声を出しながら頷くと、リーンは微笑みを浮かべてこちらに近づいてきた。そしてこちらの手を取る。
「文字の勉強をしましょうか」
そう言って、手を引くリーンに大人しくついて行く。扉を抜けると昼になったばかりであるのが分かる。
こんな昼日中からアンデッドは他の生徒の精神上あまりよろしく無いのでは、と思う。
ちょいちょいと手を引くと、こちらにリーンが振り向いた。
「どうしましたか?」
そう尋ねる彼女に首を傾げて見せる。意味は通じるだろうか?
俺の行動を見て少し思案すると、あぁと気づいたような顔をした。
「もしかして、あなたの姿を他の人に見せることを心配してますか?」
頷くとリーンは再度思案するが、途中でめんどくさくなったような顔をし始めた。そして、
「まぁ、大丈夫じゃ無いですかね?」
と、めんどくさそうにそう言ってまたこちらの手を引きながらスタスタ歩き始めた。
うーん、大騒ぎになりそうだなぁ。
――――――――――――
おい見ろよ、あれ…
あれが噂の?
あの魔術女が連れてきたっていう…
あの何考えてるか分からない人?
そうそう…
……なんか、ちょっと嫌な感じだ。もっとこう学校とかいうのはキラキラとしているものでは無いのか。
まぁ、所詮は読本と言ったところなのかもしれない。
リーンは完全に無視だな。どうでも良いんだろうか。
まぁ、あの手の類は大体放置しても問題ないけどな。
たまに放置すると面倒なのもいるけど。
そんなこんなを通り過ぎて、図書館まで着いた。
躊躇いなく図書館の扉を開き、中に入る。
ふむ、昨日は夕方になってから入ったから昼だと少し印象が異なるな。
入って左に見えるのは細長い卓。机の天板から下に向けて板が張ってあり、足元は見えないようになっている。そして卓の上に突っ伏して寝こけている男性。
正面は大きな窓があり、外の光を取り込んでいる。窓から右に行くと本棚が並んでいる。暗いかと思ったが、天井に光の玉がふよふよ浮いており、光で照らしている。
右手には本棚が壁に沿うようにズラリと並び、扉を入って手前側には4人掛けの机が並び、奥側では本棚が並んでいる。
どの本棚にも本がぎっしり並び、否応にも期待が高まる。新しい知識は積極的に取り入れていきたい。そのためにも、リーンの文字授業はしっかり受けて、早く文字を習得したい。簡単な単語で会話は出来るようにはなったが、文で書けばーーーーー
と、ごちゃごちゃ考えて突っ立っているとリーンが手を引いて俺の注意を引いた。
「早くやりますよ」
そう言って俺を机に座らせると、リーンは本棚に向かった。
立ち上がってそれについて行く。自分が学ぶ本だ、リーンだけに持たせるのはおかしいだろう。
リーンの元にたどり着くと、何冊か本を持ちながら次の本を探している。その手からひょいと本を取り上げると、こちらを見上げるリーン。驚いた顔でこちらを見たが、無言で持ったままの俺を見ると「ありがとう」と言って本を選ぶ作業に戻った。
そうしてさらに何冊か選ぶと、それを俺に渡して
「さ、始めましょうか」
そう言ってにやりと笑った。




