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その後、ちょっとした雑談を挟みつつ今日の質問時間は終わった。
「じゃあ、今日はこれで。また何日かしたらまた話を聞き来てもいいかな?」
勿論だと返すと、嬉しそうに笑いシャーペは立ち去った。
ふぅ、終わったか。
俺は扉が閉まったのを確認すると、机にべたりと上半身を投げ出した。
カシャカシャうるさい。
それは良いんだが、この空いた時間をどう使うべきか…。そこが問題だ。
やっぱり図書館だろうか。
何の影響か知らないが、文字を覚えることに関してはなぜか生前よりも得意になっているようだし、この場所…この世界について俺は何も知らないと言っても良い。
知は力なり。弱いなら他のもので補うのは当たり前だ。
だが、勝手に出歩いても良いのだろうか…。
これが生身の、人間の体であれば何の気兼ねもなく行けたのだが、今の俺はスケルトン。それも今は普通に学生がいる時間帯だ。いきなりスケルトンが入って行ったら騒動になる気がしてならない。
というかなるだろ、普通に。
だったらこの部屋の資料を読めば良いという話なんだが、どうにも此処はシャーペの資料室との事らしく専門資料が多い。
要するに、言葉を中途半端に学んだ状態の今だと凄く読みづらいって事だ。
表紙から何とか読めそうなものを引っ張りだして読んではいたが、それだと読める量が少なすぎる。
地図を見るのが限界って言い切れば、全然読めてないのがよく分かるな。
さりとて此処で待つのも、退屈を煮詰めて小瓶に詰めるようなもんで苦痛だ。
ーー……まぁ、ぐだぐだ考えるのがお前の特徴なのはよく分かった。とりあえず一つ言うのならーー
何だ?
ーーその手やら指の感覚に慣れておけばいいんじゃないか?ーー
……それしか無いかぁ。
という訳で、今日はその訓練に時間を費やすことにした。
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飽きた!
飽きたよ!!
が、まぁ当然の事だが飽きる。感覚にしておよそ3時間と言った具合か。そのぐらいで俺の忍耐力に限界が来た。
ーー早いな。もう少し頑張れよーー
せめて何か欲しいな…!読めない本をめくってめくってめくるだけ!
せめて、さっきのあの円筒に三角錐なあの筆記具と、紙さえ有ればまだマシなんだが。
訓練は夜を待たないと危険だからな。
昨日の輝指の実験で、机がガリガリ削れたのを私は忘れない。
そこでまたぐだぐだと考え始めた俺に痺れを切らしたのか、『黄昏』が話しかけてきた。
ーー…なら、いっそ外に出てみるか?ーー
おいおい、それはと言いかけた俺の思考を遮るように、続けて『黄昏』は言った。
ーーよく思い出せスケルトン…。たしかに出てはまずいかもしれない。だが、出るなとは一言も言われちゃあいないんだぜ?ーー
……なるほど。じゃあ少しだけ探検してみようか。
ーー賛成だ。オレだってこんな日陰でいつまでも燻っていたくないんだからな…!物は使われてこそなのに、最近使われたかと言われたら素振りだけ!お披露目の時にちょいと力を発揮しただけ!いい加減何かをーー
あーー……ごめん。
ーーいや、いい。仕方ないだろこの状況。お前の性格上、あの時あの子供を斬り捨てて逃げるってのは無理なのは察してたからな。だが、それとこれとは話が違う。いい加減何か斬らないと、剣として生を受けた意味が…!ーー
まあまあ、落ち着きたまえよ相棒。ていうかそもそも棒のお前じゃ、斬るも何も殴るだけだろ。
それはともかく。
愚痴を頭の中に垂れ流す『黄昏』を引っ掴み、俺は遂に日の当たる昼間に出て行く事になった。




