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「君達のことを簡単に認める理由としては、研究のため、と言った方が良いだろう」


研究のため、か。

「研究、ですか。それは一体?」

「そうだね、アンデッドという存在について君はどのくらい知っている?」

「そうですね……」


リーンはこちらをチラリと見る。俺を見ても、あまり参考にはならないと思うが…。

「……屍人帰り、でしょうか」

「うん、屍人帰り。たしかにそういう話もある。でも、それだけでは説明がつかないことが多くあるんだ」

そういうと、シャープは笑みを消し言った。


「例えば、何故彼らは生者…つまり、私達を攻撃してくるのか。魔物だからと言えばそれだけの話だろうけれど、もし屍人帰りと言うのなら、こちらを攻撃してこない個体がもう少し発見されてもおかしくはない。一応、特殊個体ではこちらを攻撃してこない事もあるけれど、それでも、こちらに対する強い敵視は変わらない」


俺を見るシャープ。


「このスケルトンと契約できたという事は、こちらに対する敵意が無いことの証明でもある。それは記録上初めての事なんだよ」


そう言いながら、こちらに笑いかけるシャープ。


こっち見んな。


しっしっ、と手を振ると余計に笑みを深くするシャープ。

「まぁ、他にも色々とあるんだけれど、これぐらいに。…認めるにあたって、そのスケルトンさんは色々と実験に協力して貰う必要はあるけれどね」

「……そうですか。なら、それを早く言って欲しいですね。余計な心配をしました」


いや、俺はなんか実験台にでもされそうで、余計に心配が増えたわけだが。

まぁ、ある意味好都合でもあるけどな。

自分自身のこの体、研究するにしても他の奴の意見や方法で確かめられるのは、良い事だ。

俺には専門知識なんてないからな。向こうから教えてくれるってんなら、こっちにとっても悪い話ではない。


「まぁ、そういう訳で簡単に認められたという話なんです。で、どうかな?疑念は晴れたかな?」


そう聞いてくるシャープ。

まぁ、俺としちゃ別に問題は無い。

リーンも特に問題はなさそうだ。


「じゃあ、この書類に署名を。後は魔力を通して登録してくれれば良いよ」

そう言われ、差し出される書類。


…なんて書いてあるのかさっぱりわからないな…。

名前を書く場所と思しき場所に下線が引かれているから、まぁそこだけは分かる。

逆に言うと、それ以外の全てがわからない。

一番重要な場所なんだが…。

従魔を持っていた奴らなら、少しは想像がつくんだろうがな。

俺も従魔欲しいな…、でも今の俺が従魔だしなぁ…。

従魔と言えば、相棒という印象が強い。稀に聞こえてくる外の街の話じゃ、どんな戦いにおいても共に信頼し合い、強大な敵を打ち倒すなんて話もあった訳だしな。

…残念ながら、俺に出来るような芸当ではなかったが。契約しようにも、外に出るのは命がけだったからな…。

……ううむ、外国なのかどうかもよく分からないが、そうそう死なない体になったのは、旅をしたいという俺の意思にとっては、好都合なのかもしれない。

姿さえ隠していれば。隠してないと殺されそうで嫌だ。


それはともかく。


ぐだぐだ考えている間にも、リーンはさらさらと署名した。

羽筆なんて何処にあったんだ?

見れば、細い金属の筒がリーンの手に握られていた。紙に付けている部分が円錐形になっていて、そこから墨を出しているようだった。

…進んでるな。俺のところじゃ、そんなの見た事ないぞ。

中に墨が内蔵されているのだろうか。

ううむ、気になる。

書き終わったリーンがローブの内側に、羽筆をしまう。ローブの内側に物入れが縫い付けられているらしく、ローブの内から引き抜いた手には、すでに羽筆は無かった。


「はい、じゃあこれで登録は完了です。お疲れ様でした。実験の協力要請は一週間前に通知するね」

シャーペは紙を受け取ると、また顔に笑いを浮かべてそう言った。

「はい。…私も同伴しなくてはいけないでしょうか?」

「うーん、出来れば参加して欲しいけれど、無理なら無理で問題は無いよ。どうしても必要な時は前もって相談させてもらうね」

「分かりました」


そうやって、案外あっさりと登録は済んだのであった。





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「やっと終わりました。さて、スケルトン。あなたをどうしたら良いでしょうか…」


確かにな。

話し合いが終わった俺達は、廊下を歩いている。俺には行く先は分からないが、まぁ、知っている奴が動いてるんだから問題は無いはずだ。


多分な。


それはともかくとしても、だ。

窓から外を眺める。

色とりどりの屋根、活気がここまで伝わってくるような中央通りと思しき、広い道。

そこから葉脈のように、街全体に広がる細い道。

どうにも見慣れない街、環境だからか、キラキラとしていて、心臓も無いのにドキドキしてくる。

何も無ければ、そのまま町に繰り出して色々と散策したいところだ。

この状態では、出て1時間保てば良い方だろうけれど。

悲しいなぁ。


「……というわけだけれど、それでいいかしら?」


あ、話聞いてなかった。

顔をリーンの方へと向け、首を傾げる。


「……要するに、私の寮室に入れるわけにもいかないから、先生に頼んでここに置かせてもらうという事よ。話はちゃんと聞きなさい」


はい、最もでございます。

謝罪に手を合わせて頭を下げる。

はぁ、というため息と共に歩き出す音が聞こえたので、それに合わせてついて行った。


しかし、生徒に会わないな。

学園や学校というのはもっとこう、若者達に溢れており、やたらと騒がしいと聞いたんだが…。

ふむ、誇大表現だったのかもしれないな。


外の庭のような場所には、もう生徒と思われた連中は居ない。

ただ草と土と、まばらに生えた木々。

たまに花ぐらいだろう。


「……そういえば、聞きたいことがあったのですが」

リーンが唐突にそう俺に話しかける。

首を傾げる事で返答し、続く言葉を待つ。


「あなた、言葉が分からないんですよね。その知性ある武器が無いと」

その通りだ。『黄昏』が居なきゃ、俺は誰とも接触することもできない。

「なら、文字や言葉を学んだりしますか?」


……ほう。願っても無い話だが。

「……魔術訓練がしたいですが、だからと言って、自分の従魔との意思疎通に大きな難点があるのに、それを正さないわけにもいかないでしょう」


…魔術訓練、か。

リーンを見る。顔立ちは整っているが、まだ齢は15に満たないだろう。胸も出てないし、身長は俺よりも低いし……いや、別にそれだけでは年齢を推し量れないが。


とと、失礼すぎる考えだな。


「で、どうしますか。しますか、しませんか?」



是非ともよろしくお願いします。




という訳で、教えてもらうことになりました。




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