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……目の前に急に街が出現したのも驚きだが、アネンムア…か。


……聞いた事がない。


だが、世界全ての国の都市の名前なんて覚えていないのも確かだ、そう驚く事じゃないのかもしれないな。


しかし、いきなりの出現…一体どんな仕掛けがあるものやら……。想像するだけでワクワクするな!

まぁ、スケルトンに教えようなんて物好き……いや、馬鹿がいるとは思えないが…。


「さぁ、行きましょうか?早くしないと日が暮れてしまいます」

リーンの言葉に空を見上げてみる。

………いつの間にか、空は橙色に変わり始めていた。

すっかり話し込んでいたから気付かなかったっぽいな。


俺はリーンに頷きかける。

リーンは笑いを引っ込め、キリッとした表情になりこう言った。

「一応、門兵に止められて長い時間拘束されるのは覚悟しておいた方が良いですね。あなたも、ちゃんとした対応をお願いします」





「止まれ!!」

門兵の声が響く。

その声にピタリと止まる俺とリーン。

門兵は俺がスケルトンである事に気づいている様子だったが、とりあえずまず自分の管轄の仕事から始めようとする。

「まず、街に入るための許可証を見せてもらおうか」

その言葉にスッと、あの紙切れを渡すリーン。

門兵はそれを受け取ると、魔力を紙切れに流し込んだ。

緑の光と共に、浮かび上がる紋章。

それは一瞬の事だったが、やはり俺の知っているものではなかった。

「…本物だな。では本人確認を」

「はい」

門兵からリーンは紙を受け取ると、こっちもまた魔力を込め始めた。

正直、また同じ紋章だろうなと思っていたが、甘かったようだ。

リーンが紙に魔力を込めると、今度は赤い光と共に違う紋章が浮かび上がったのだ。

門兵はそれを確認すると、

「……本人のようだな。では君は入っていい。……だが」

そこで門兵は俺に槍を向けると言った。

「そこのアンデッド、貴様はダメだ」


…だろうな。

そう思う俺と、槍の前にリーンが割って入った。

「これは私の従魔です。森へ学園のグループワークで行った際、コイツを従魔にしました」


……しばしの沈黙。


「……従魔…だと?アンデッドが?何かの冗談じゃないだろうな?」


沈黙の後、門兵がそう口を開いた。

だが、残念ながら本当にそうなってるのだ。

それに対してリーンは、門兵に対してこう言った。

「はい。なんならそこで踊りでもさせましょうか?」


おい。

いや、やれと言われたらやるけどさ。

ここで入れないとか嫌だし。


門兵は頭をガリガリかき、悩んだ後にこう言った。

「いや、良い。とりあえず、それを判定するのは私の権限では出来ない話だ。……少し待て、ほかの兵士を呼んで学園まで監視させてもらう」


おぉ、一応入れてはくれるんだな。

門兵はそう言うと、腰につけた袋からゴソゴソとまた違う紙を取り出し、魔力を込めた。


その瞬間、紙が鳥のように変化し外壁を超えて中に飛んでいったのを見た。

それを門兵は見送ると、

「よし、じゃあそこでしばらく待っていてくれ」

と、そう言った。


待つまでの間は暇なので、俺とリーンは各自で暇を潰し始めた。

リーンは、また魔導書を開き熱心に読んでいる。

……そんなに面白いんだろうか。


…俺は門兵に思いっきり警戒されているから、あまり派手なことはできない。


というか、しない方が多分良いと思う。


…ふむ、ではここで体を張った物真似といこう。


まず、胸の骨…三番目か四番目かを両方へし折ります。


「…………!?」

驚く門兵。

だが、ここからだぜ!

その二本に魔力を込め、強化を施すと思いきり地面に突き刺した。

「……何をやっている?」

そう疑問を発した門兵さんに、まぁ待てと手を突き出す。

そして、この刺さった二本の骨の上にっと、と、と。


危うくひっくり返る所だったが、なんとか姿勢を立て直しそして両腕を天に突き出した。


見よ、これが我が故郷の度胸試しの真似、『魔山羊の角立ち』だ!


…………………………。


辺りに沈黙が満ちる。

門兵は呆れているような雰囲気で、リーンにこう話しかけた。


「……あのスケルトンは何をやっているんだ?」

「さぁ、アレわたしにも何考えてるのかよく分からないんで」


リーンがすごく冷たい。

炎は熱いのに、心はひんやりか。




まぁ、門兵さんの警戒は微妙にだが緩んだようだ。

うん、これを成果にしておこう。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


それから時間も経たずに五人ほどの兵士がやってきた。

鉄帽子にライトメイル、鉄の槍ってところか。あんな変な仕掛けがあるんだ、もっとすごい装備があってもおかしくはないだろうが…まぁ、完全装備で来る必要は無いと判断されたのかもしれないな。


兵士たちはたまにこちらを見たりしながら、何かをごちゃごちゃ話していたようだが、話が終わったのか、さっきの門兵含めて五人が俺に槍を向けた。


…ん、後1人は?

あ、街中に走っていってるな。


さっきの門兵さんが口を開いた。

「そこのスケルトンを街に入れる事になったのは先ほど話したが、追加で条件が一つ。スケルトン、お前には手枷をはめてもらう」


手枷ね。まるっきり罪人のようだ。

5人の兵士に囲まれて、手枷をはめられて連行される…。

うん、罪人ですね。


まぁ、別に手枷でも足枷でも何でもいいや。どんとこい。

リーンも特に何も言うことは無いのだろう、特に何も言わない。


そして兵士が走って手枷を持ってきた。

それをきっかけに、兵士が俺をぐるりと取り囲む。


「よし、手枷をはめる。手を出せ、スケルトン」

さっと両腕を引っ付けたまま、兵士に突き出す。

『黄昏』を持ったまま。


「……おい、スケルトン。これを下ろせ」

と、言われてもなぁ。

これが無いと話が聞けないんだが…。

リーンの方を向く。

それだけでどうやら察してくれたらしく、兵士に説明してくれる。


「コイツ、その棒が無いと何も言葉が理解出来ないらしいです。なので、あまり取り上げないで欲しいのですが…」

「…む、これは魔術武器だったのか。…だが、話が通じないのは面倒だが、我々が仕草だけで誘導したらいい話だ。それで問題無いな?」

「……そうですね、確かに。という訳で、スケルトン、それを彼らに渡して」


…しょうがないな。

そう思って、『黄昏』を手渡そうとしたとき。


ーー…おい、スケルトンーー


おぉ、『黄昏』。久し振りに話したな。


ーーんな事は良いんだよ。ここまで至っちゃ仕方ねぇけど、手枷を嵌めたら、覚悟はしておけよーー


…は?そりゃどういう意味


ーー後でな!ーー


その言葉と同時に、俺の手から『黄昏』が取り上げられる。


そして、俺に手枷がかけられる。


……な、んだ?力が抜け….……


意識が暗転した。




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