2.『黄昏』の謎、そして…
俺はリーンに『黄昏』を手渡す。
どうやら彼女には少し重かったようで、少しよろめいた。
とっさに支えようとする俺を、態勢を立て直したリーンがすこし笑いながら、何かを言った。
大丈夫、とかだろうか。
まぁ、何とも無いなら良いんだ。
しばらくリーンは『黄昏』をぺたぺたと触ったり、撫でたり、右手に握ってみたりしていたが、何か様子がおかしい。
まるで、彼女には何も聞こえないかのようだ。
何度も首を傾げ、ぺたぺた、ガンガン、すりすり…。
更に時間が経つと、頭に疑問を大量に突き刺されたような表情をしながら、リーンは『黄昏』を突き出した。
俺が『黄昏』を握ったと思うや否や、質問が飛んでくる。
「何も聞こえないのだけれど、本当に知性ある武器なの?」
……やっぱりか。
表情の通りの答えを聞き、『黄昏』の言ったことを理解する。
ーーま、そういう事だ。オレ、お前以外と話せないんでなーー
『黄昏』の声を聞きつつ、俺は疑問に思ったことを言う。
お前、俺に話しかけたときに『簡易契約で心を読んでる』とか言ってなかったか?
その問いに、『黄昏』は沈黙する。
…少し、答えが返ってくるのに時間がかかった。
ーー……んまぁ、これぐらいは話すべきか。お前は使い手なんだ、知るべきだろうさーー
そして『黄昏』はこう話した。
ーーオレをまず使うのには条件が要るんだよーー
条件?
俺の疑問に、あぁと言いながら『黄昏』は続ける。
ーーまず一つ目の条件。それは人族種では無いこと。ーー
人族種では無いこと……。
リーンを見やる。彼女は首を傾げながら俺たちを見ている。
…多分、人間族だろうな。
耳も尖っておらず、背が低いというわけでも無い。もしかすると俺の知らない種族だったりするのかもしれないが……。
ーーオレの見立てじゃ、少なくともまだ人族種だ。安心して良いぞーー
そうか、見た目通りで何よりだ。
…まだ?
そんな俺の疑問に答えることなく、『黄昏』は説明を続ける。
ーーで、二つ目の条件は神、または精霊ではない事、だ。ーー
まぁ、たしかに精霊では無いか。リーンもそうではないのは分かる。
また『黄昏』の声が止まる。
どうした?何かあったか?
そう尋ねる俺に、何でもないと言って、再び話し始める。
ーー……んで、最後の条件だが……、魔物では無いこと、だ。ーー
………………………は?
『黄昏』の言葉に固まる俺。
…んじゃあ、俺は一体、何なんだ?
……スケルトンじゃあないって事か?
俺の硬直は、ある程度わかっていたのか、ゆっくり穏やかな声で『黄昏』は話す。
ーー…一応、お前はスケルトンで合っているよ。ちゃんとしっかり魔物だ。そこだけは問題はないーー
………そうか。一応、なんだな?
ーーあぁ。と、ここまで話すとお前も思うだろうが、ではなぜスケルトンであるお前にこの剣が振るえるか、と言う話になってくるな。それは今から話す事がーー
と『黄昏』が話そうとした瞬間、リーンが、
「そろそろ出発しましょう」
と、話をぶった斬ってしまった。
…間が悪いな。まぁ、確かにもうかなりここに長居してしまった訳だし、そろそろ出発しないといけないだろう。
何処に行くのか、分からないが。
俺は『黄昏』から目を離し、辺りを見渡す。
辺りには何も見えない。
都市どころか、道すらない草原だ。
日が花や草に降り注ぎ、穏やかな世界を見せている。
「じゃあ、行きましょうか」
そう言うリーンに、俺はついていく…ついでに、『黄昏』に話しかける。
歩きながら、聞いても良いか?
ーーあぁ、勿論だ。この際ちゃんと話した方が良いだろうしなーー
そうして俺は、リーンを先導に、『黄昏』を携え見知らぬ場所へと向かって、歩いていくのだった。




