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とある狼の休息
『………………』
『傷は、癒えた』
ふん、と鼻の鳴る音。
『…………腹立たしい』
狼は、目を閉じたまま思い返す。
あの格下であるにも関わらず、少女よりも損害を与えた存在。
ーーーーーーー。
『欠損、不全、腹立たしい』
それはいい。
しかし、あの剣を抜いたか。
『…………』
我を通さぬ為に囲われた、忌々しいあの奥。
ああ、そうだ。
愛しき愛しき我が主。
アイツが残したものだ。
相反する思考にふんと鼻を鳴らす。
…此度来た者たちは皆、良きものだ。
それだけは認めざるを得ない。
だが、力が足りない。
意志無き力に意味は無く
力無き意志に届くものなどない。
…長く考えすぎたか。
狼はその目を開く。
不快は、痛みと共に消えた。
それだけはあのーーーーーーーに感謝せねば。
狼は体を起こす。
務めを果たさなければ。




