リーン、森へ到着する
はぁ、気が重いわ…。
私はグループワークでエレンカイの森へ行く事になった訳だけど、どうにも周りの人たちとは馴染めないのよね…。
そう思いながら、周りの学友(なんで友達じゃないのに、友って付くのかはよく分からない)を見てみる。
「でさ、俺がそいつをひっ捕まえて、ボカンと一発殴ってやったらさ……」
まず目につくのは、大声で喧しい奴。名前は…何だっけ?
ま、なんか知らないけど偉そうな割に何もしないで周りをいじめるだけの奴。
茶色のツンツン頭で、顔も貴族というより子悪党と言った方が的確な顔。
腹立たしいから、毎回やめるように言っても聞かないのよね…。何が楽しくていじめるのか、さっぱりわからない。庶民が口出しするなとかなんとか、いじめる時も馬鹿にする時もそれだ。お前には家柄しか誇れないのかよと言ってやりたい。
いや、いつか言ってやろう。
…その時は国外にでも逃げないといけないだろうか。
次に目に入るのは、
「…リーンさん、聞いてますか?」
まぁ、この人だろう。
私に話しかけている、この人。
名前はアネンっていう女の子。
黒い髪色に、怜悧な顔立ち、透き通るような声で男どもに人気になりそうなものなんだけど、寧ろ声かけづらいのかそういう浮いた話は漏れ聞こえもしない。
「…あ、ごめん。聞いてなかった。もう一回言ってくれる?」
私は謝りながら、アネンの話を聞く。
「もう、最初から聞いてくださいね?今回の森、エレンカイの森ですけど、深く入ると危険な魔物が出るそうです。今回のグループワークは森の入り口に生えている薬草のスケッチが目的ですから、遭遇はしないとは思いますが……、念の為、必ず複数人で行動しましょう。報告によると、複数人の場合は襲ってこず追い払う程度に収めてくれるそうですので」
リーンは私や、他の人たちを見ながら話す。
この人は、他の人に馴染めない私にもちゃんと話しかけてくれる良い人だ。
…だけど、それでも交流するよりも、特訓したい気持ちが勝っちゃうのよね…。
「はーい!」
元気よく返事をしたのは、私の髪色と近い深い赤色の髪をした女の子。
私とは接点があまりないから、名前を覚えてないのよね。
とにかく明るくて、元気が有り余ってるって子。私も聞いてるだけで、なんだかその力を分けてもらってるような気がするわ。
これでも貴族のはずなんだけど、その気配は微塵も感じないわね…。
あ、そういえばあのツンツン頭の取り巻きがいたわね。
取り巻き二名。
男。
青と緑の髪。
…以上。
正直言って、すごくどうでもいい。
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そんなこんなで森に到着した私達。
他の人達はどうやら話で盛り上がっていたらしいけど、私としては周りを警戒しなさいよと強く主張したい。
たしかに、周りにはスライム一匹居ないけれど、それでも地中に潜ったりする奴もいるんだからしっかりと警戒しておきたい。
まぁ、何事も無かったから良かったわ。
「それでは、スケッチを始める為に森に入ります。各自、警戒を怠らないように!」
そういうアネンの言葉を聞いて、私たちはスケッチを描くために森へと踏み入る。
…あの馬鹿達は三人連れ立って、描きに行ったようね。
少し離れた場所で、三人笑いながらスケッチしてる様子が見える。
「それじゃ、私たちも行こっ!」
深赤色の髪の子が笑顔で私とアネンに言う。
「えぇ、リーンさん一緒に描きましょう」
アネンは優しく笑い、そう言う。
「分かったわ。行きましょうか」
そして、私たちは男グループと女グループに分かれてスケッチをする事になった。