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「jgumgpm!aodlsv……?」


頭を吹っ飛ばされた俺は即座に後退し、態勢を立て直す。

…ま、こうなるのは予想してたけどな。


ーーまぁ、当たり前だよなー。あとオレじゃなかったら、今ので下手したら折れてたぞ?物は大事に扱って欲しいな!ーー


ついでに『黄昏』と一緒に降ってきた頭蓋骨を手で掴み取る。帰ってくるなり早々呆れた声とお小言を言ってくる『黄昏』が刺さったたままの頭蓋骨を、大体の位置にスッと戻す。


よし、完璧だ。


オレは完璧じゃないんだがー、という声が聞こえるが、無視だ無視。

こんな状況で武器なんか抜けるか。

赤髪の少女は、こちらを睨みながらジリジリと後退りしている。当然だが。


俺だっておっはよー、と起こしてきた奴がスケルトンだったら同じ行動をとる。

軽く悪夢だもんな。


「…………lndcvzi?」

と、警戒していた少女がボソリと何かを呟く。

その声は警戒の色が強いものの、疑問を含んだ声だった。そしてどうやらそれは、俺に対して向けられた疑問のようだ。

こちらに問いかけはしないものの、どうやら身動き一つしない俺に対して疑問を抱いたようだ。

まぁ普通、アンデッドなら何も考えずに襲ってくることが殆どだからな。高位の奴らはどうやら違うらしい。会ったこともないが。

いや、会ってたら死んでるし。


まぁ、俺が頭ん中でごちゃごちゃ余計な事を考えていると、少女はこちらに対し、ポイっと石ころを放ってきた。

つい、その動きを目で追ってしまう。

俺の目の前に落ちる石ころ。


………いや、どうしろと?


追って頭を下げた俺だが、どういう意図があるのかさっぱりわからない。

だが、少女は警戒を多分に含んだ視線ながらも、どこか期待しているような…そんな気がする。

後ろに下がる動きも、いつの間にか止まっている。

…だが、手から魔力を感じるんだが。

これは……アレだな?


ちょっとでも選択を間違ってみろ、お前のその体を死の世界に叩き返してやる、という意思ですな?


よく分かりました。

とりあえず、石を拾うために屈もうとする。


ボウッ!


少女の手から炎が漏れ出す。

あれ、選択を間違ったかな?

だが、炎が漏れ出すままこちらを凝視している。


…まだ、大丈夫か。


冷や冷やするぜ。

大丈夫さ、もしもやらかしたら彼女が俺を言葉通り、骨の髄まであっためてくれるだろうしな!

…嫌な話だぜ。


とりあえず、石ころを拾う。

さて、どうしたものか。

手のひらで、石がこぼれないように弄びながら考える。手のひらといってもスカスカだから落ちそうで怖いな。お手玉は難しそうだ。


少女を見る。手からは未だに炎が漏れ出しており、警戒は解けていないようだ。

ふむ………。

手の感覚が鈍いアンデッドでは、ちょっと難しいが、やはりお手玉で華麗に魅了すると行こう。


俺は周りにある石ころをさらに二つばかり拾うと、ホイホイホイと連続して頭上へと放る。


「……ッ!」

少女の手の炎が、今にも放たれそうなほどに高まるが、それを気にしない。


一方の手で投げ、反対の手で落ちてくるのを掴み取り、投げたものが落ちてくる前にもう一度放る。

最初はかなり危うかったが、運良く掴み取れた。

しているうちに、わずかに慣れてき始め、なんだか楽しくなってきた。


『ウ゛ウ゛〜♪』

おっと、少し声が漏れちまった。

だが、いつもより小さめな声が出てくれたようだ。喧しいと言うほどではない。


「………ajgpmpagjdjptmgptmgmwujt…。gpamtntmdp?」

だが、俺の声を聞いて煩くは思わないもののどうやら何か訝しんでいるようだ。

…まずいか。声が出るスケルトンは本来高位の存在。危ない存在と見られかねない。


…だが、まだ観察はしてくれるようだ。

少し、安心する。

だが、余計な事に気を取られたせいか石を掴み損ねてしまった。


「………………………………………………………」


沈黙が痛い。

せめて何か言って。


「……はぁ、aqjmdptmwp?」

少女はため息をつくと、手の炎を消してくれた。それと同時に何かをこちらに質問…?してきた。


だが、言葉が分からないので答えられません。


代りに首を傾げる事によって、それに答える。


「……ahmptmw?」

ため息をつきながら何かを呟いた。

多分、分からないの? とか、そこら辺なんじゃないか?

どうしたものか、悩んでいる様子の少女。

どうすることもできない俺。

ひゅー、と風が吹く。日は差しているから寒くはないだろうが、今がどの時期か分からないので、確証が持てない。

まぁ、冬ではないだろう。雪が降っていない、草原は青々として、森は緑に溢れているし。

スケルトンの感覚は、温度を殆ど伝えない。

僅かに暖かいかな、ぐらいのものだ。

ともなれば今は夏なのかもしれない。

それにしては虫の声もーーー


と、暇つぶしにだらだら考えていると。


ーー………おい、骨。ーー


『黄昏』が声をかけてきた。


なんだ?


と、聞き返す。そういえばさっきまで静かだったな。


ーーオレ、この言葉をお前に伝えることが非常に辛くて、申し訳ないんだが…ーー


非常に申し訳ない、という意思がありありと伝わってきて、俺はすごく嫌な予感がしてきた。


ーー……オレ、こいつの言葉訳せるぞーー


それを早く言わんかいッ!





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