出会い
遅れてすみません・・・
目を開ける。・・・あれ?目を開けたのに、視界がぼやけて何も見えない。
ああ、そうか。屋上から飛び降りたら無傷ではいられないよな。
「だったら・・・っ、なんで、生きてんだよ・・・」
皆の所に、行きたかったのに。
だから、飛び降りたのに。
こんなの・・・、こんなのって・・・
「やっぱり、俺のしたことに、意味なんてないんだろうな・・・」
そう、自嘲気味につぶやく。
自分で分かる。家族のもとに逝くことすら許されなかったことを理解した瞬間、俺の心は耐えられなくなり、壊れてしまったのだ。悲しいはずなのに、涙すら出てこない。ただ、世の理不尽さに対する怒りが渦巻くだけ。
ここまで考えたところで、俺の意識はまたとぎれていった。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「・・・大丈夫?」
そう、問いかける声を聴いた。その声は優しく、夢の中に入り込んできて・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
目が覚めるとそこは、全く知らない場所だった。
自分の横たわっているベットに寄り添うようにして眠っている少女も、全く知らない子だ。
「あのー・・・」
遠慮がちにそういったら、その子はうっすらと目を開けた。そして問う声。
「・・・大丈夫?」
常人なら見惚れるであろう少女の美貌を目にしても、俺は何も感じない。
「ここは」
「クリシュ皇国。この大陸最大の国。別名〝神界の隣国〟。首都はラミクタール」
「君は」
「名前はない。一族の裏切りで奪われた」
名前を奪うということは、何かの罰だろう。国の名前からしてここは元の世界ではない。この子が人間でない可能性も視野に入れるべきかもしれない。そんなことを考えていると、
「私は、すべてを知っている・・・はずだった」
という少女の声が聞こえた。何かを悔いるような、救いを求めるような思いがうかがえる、それでいてやけに無機質な声を耳にした瞬間、俺は理解した。
この子は、俺と同じだ。
心が、壊れてしまっている。
おそらく、自分では耐えられないほどの感情の波にもまれたとき、縋りつける人がいなかったのだろう。もしくは、差し伸べられた手すらも目に入らぬほどに追い詰められてしまったのだろう。
俺は、安心したのかもしれない。意識が闇に覆われていくのを、止めようとも思わなかった。そしてまた、俺の意識は消えていった・・・
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