自殺
二作目です。一作目とだいぶ変えたのでちょっと自信がないですが、頑張っていくつもりです!
―――死のう。もう、死んでしまおう。
そんなことを思い始めたのは、いつからだったか。
ああ、そうか。皆が、死んだ日だったか―――
僕は、いじめられていた。
いつもは、無視されたり、笑われたりするだけだったけど、その日はちょっとひどくて、靴紐を抜かれ、泥水に浸された靴を投げつけられた。
とても履ける状態ではなかったから、担任に事情を話し、親に車で迎えに来てもらうことにした。
母さんも父さんも凄く怒って、高校生の姉さんも一緒に家族総出でいじめっ子に抗議しに来ることになった。
その、帰り道だった。
事故を起こされたのだ。
僕等は何も悪くなくて、相手の飲酒運転と信号無視による事故だった。
向こうは、頭をちょっと打っただけだった。
こっちは。こっちは、母さんが死んだ。父さんも死んだ。姉さんも死んだ。
僕は―――なんで、生きてるんだろう?
この世界は、理不尽だ。
理不尽に抗うためには、どうしたらいい?
―――強くなろう。世界を、変えられるくらいに。
父のように、賢くなって。
母のように、優しくなって。
姉のように、明るくなろう。
そう決めた日から、俺は必死に生きた。
もう、自分を引き取ってくれたのが誰かさえ覚えていない。
参考書を買いに街に出たら、モデルにスカウトされた。
学費が足りなくなりそうだったから、バイトするのもいいかと思った。
そうして俺は賢く、優しく、明るい生徒を演じていた。
そんな生活をして、俺は壊れてしまったのだろう。
自分が、誰であるかもわからない。
自分が、何をしたいのかわからない。
―――自分が、なぜ生きているのかさえも、分からない。
とても、とても、大事なことだったということは、わかるのに。
気が付いたら、学校の屋上にいた。
見回りの先生が、「こんな時間にそんなところで何してる!」と叫ぶ。
こんな時間?言われて気づいた。もう、辺りは闇に覆われている。
ああ、よく見れば、あれは自分の担任じゃないか。
いじめっ子よりも先に、「なぜもっと早く言わなかったんだ」と俺を怒鳴った先生。
理不尽だ、とつぶやく。
だが―――だが、確かに俺は、笑っていたのだろう。
柵を乗り越え、足元から吹き上げる風を感じる。
そして、俺の体は宙に浮いた。
体が落ちていく感覚。
死の恐怖を、初めて知った。
みんなは、こんなに怖かったのか。
俺は、遥か上に浮かぶ星を眺め、こんな時でも、空は変わらないんだな、と思う。
体が、地面にぶつかる寸前。
もういちど、理不尽だ、と呟き―――俺の意識は、そこで消えた。