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KILLED/START  作者: 山本チヒロ
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~プロローグ~

~プロローグ~


苦しんだ。

悩んだ。

殺された。

死んだ。忘れた。

死ぬのは俺にとって容易だった。

でも愛する人がいたから、愛されていたから、守りたい人がいたから、約束したから…

俺は、助けていやるって、誓ったんだ。


 聖元二年


建物が燃えている。

燃えている。烈火している。都市のほとんどが烈火していた。完全に火の海と化していた。全ての終末だった。人生の終わり、都市の歴史の終わり、本当に何もかもの終末だった。

何人の人が泣いていたのだろう。泣いていたでなくて、号泣と言った方が正しいかもしれない。号泣するのは無理もない。自分達が住んでいた街が…知っている人達も死んでしまうのだから。子供抱えって号泣する人、逆に、親が死んでいくのを見守る子供、自害し、涙だけでなく、血を流す人もいた。その原因になったのが…永遠の騎士、イターヌルナイト。

イターヌル(イターヌルナイト)とは、この世界においての、主人だけを守り抜く騎士だ。普通の騎士ではない、そもそも人間ではない。召喚によって出される、相棒みたいなものだ。主人との契約で守ってくれる騎士だ。イターヌルは死ぬことはない。戦いに負けると、契約が解除されるだけだ。解除されると十数年は召喚されることはない。

そんなイターヌルによって都市が破滅しようとしている。誰かからの契約なのか、単独行動かは分からない。

イターヌルは通常の人間より強い。強烈だ。剣一本でこの年を壊す威力、鮮やかな、剣裁き。綺麗、美しいといっても、過言ではない。

首を切る、首を切る。

空ぶることなくことなく人に当たる。

この戦いが収まっても、イターヌルを憎む人が必ずいるだろう。この都市には百万人以上の住民がいる。

その大多数の人が死んでいる。生きていても多くの人に、心の傷が残っているだろう。

今暴れているイターヌルは、女の子だった。小さい子だった。銀髪の少女だった。


その少女をずっと見ていたのは俺だった。このナイトだった。色々な才能に恵まれて生きてきた。俺はこの才能を持っていることを憎んでいた。才能があったから愛情というものを学べなかった。人の愛情を無視し続けた。それの結果がこれだ…

才能さえなければ…こんなことなど起きなかった。


市民同士とのケンカでさえ、命を奪ってしまうほど、大きいものになっていた。人は窮地に追い詰められたら、すぐ死んでしまうんだな。こんなに簡単に死んでしまうんだな。

都市のほとんどが烈火し、逃げ場をなくす。いっその事、全員死んでしまえ…そんな感情も思い浮かぶほどだった。


その汚い戦いの中で、唯一美しいのは、星だった。汚いものの中に綺麗なものが一つあるとより、綺麗に感じさせてくれる。炎のように、見ただけで苦しみを与えるのでなく、安らぎを与えてくれる。

都市…プラキス

イターヌルの召喚によって荒れ果ててしまった。魔術が盛んだった社会が裏目に出てしまったのだ。便利なものができれば、必ず悪用するものがいる。非常に残念だ。この戦いによって、魔術は恐ろしいものとして衰える。


都市のスラム街。

かつても華やかなものでわなく、今はさらに人の気少ない。ここでは今戦いが起ころうとしていた。

俺と、イターヌルとの…

スラム街にはプラキスを燃やす炎の音と、聖剣の絡み合う音が聞こえていた。

「ハハハハハ~綺麗、綺麗、綺麗に燃えている~プラキスなんか燃えろ~おにいさんの力も燃えてる?面白い、面白い~」

彼女は狂っていた。行動も、言葉も、発想も狂っていた。火に興奮しているのだろうか。人が死ぬことにも興奮していた。なぜ彼女は殺そうとするのだろう。

剣を腹に向け、振る。

「おにいさん強いわ~がんばって~~~」

本気で思っているのか、冗談で言っているのか狂っているので全く読み取ることができなかった。

彼女が、過度な愛を黒く光る剣の力としてぶつける。しかし、その力は強いのでわけではなく、勢いが凄いだけだった。こんな剣裁き美しくもない…

この子を俺は知っている。でも、こんな狂った彼女は知らない。だって彼女は俺を殺そうなんてしなかったから。もうこの世に、俺の知っている彼女はいない。あんな些細なことで人って変わってしまうものなんだな。

でも、あの子が好きだったから…した。

怪我させたくなかった。

死んでほしくなかった。

見捨ててほしくなかった。

「死んで、死んで、おにいさん…嘘つき…」

ん、なんか急に大切なことを言っている気がする。どういうことなんだ?

相変わらず彼女の勢いは緩むことなく、俺の剣に当たっている。それをかわす。一秒に何回っと言ってもいいぐらいの勢いで、剣に当たっている。剣に当たるだけで一回も体に当たっていない。なぜか悔しい。

「ごめん、ごめん、本当にごめん」

何に対して謝っているのか分からなかったが、取り合えず謝ってしまった。何度も謝る。気持ちがこもっていなかったが…

「兄さんって嘘つきじゃん…一緒にいて、離れないでって言ったじゃん。それなのに離れたじゃん…それって信頼していないからでしょ…そのごめんも嘘なんでしょ…嘘なんでしょ…何か言ってよ…」

やっと彼女の言っている意味が分かった。そういうことだったんだ。彼女につらい思いさせたな…

「嘘じゃない、嘘じゃない、だってお前のことずっと…」

彼女は人の心を読む加護を持っている。今の俺の心も読めているはずだ…理解しているはずだ。

「そういって、今までも言ってった…言ってたじゃん…………だから~信じてない、信じてなんかやるもんか~~~~~~」

彼女は声を大にして叫ぶ。彼女にしたことはそれほど大きかったのだろう。それほど泣きたかったのだろう。泣いている。


もう、彼女がこんなに苦しんでいるならあきらめよう。

あきらめてあげよう。

毎日毎日頑張ってきた。

今あきらめたら、全て無駄になるかもしれない。

彼女に勝っても意味がない。勝ったって何も残らないから。

残るとしたら後悔だけだから。

悲しむだけだから。


剣を投げ捨てる。こんなものいらない。人を殺すための道具なんか…

「切れ~~~~~~」

大声で叫ぶ。彼女は、心が読めるはずだがその行動に驚いていた。力に負けたのでなく彼女の心に負けた。彼女の心の傷にしては安いもんだ。

「あきらめるんだね、あきらめるんだね、あきらめるんだね、もう会えないかもしれないのに…」

「あきらめるんだ~~~~」

今までより、一番大きい声だった。泣いている。号泣している。あれだけ殺そうとしていたのに悲しんでくれたんだ…

俺の考えは少し違った。やっぱり俺の知っているあの子だった。

その次の瞬間、気持ちがスーっとした。痛いような、痛くないようなとても不思議な、感触だった。

彼女の剣が刺さっている。腹に刺さっている。

あっ死んでしまった。

死んでしまった。勇気を出して切れと言ったものの、やはり死ぬのが怖かった。

「おにいさん…バイバイ…ありがとう」

その言葉が聞こえたとき光を感じなくなってしまっていた。


次こそは失敗しない、失敗しないって誓う。

命がこぼれる。

次こそは必ず助けてやる。

二度と同じ過ちを繰り返さぬように…

異世界(過去)から現実世界(現在)に転生する。












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